SKY90ビノ

先日納品したSKY90ビノを紹介させていただきます。

鏡筒はタカハシ製SKY90(D=90mm, f=500mm)です。すでに販売中止になっていますが、オーナー様が2本お持ちで、支給してくださいました。

クレードルはタカハシFC100シリーズ用に使えるクレードルCTRL-95(鏡筒径95mm用)です。

オリジナル状態ではEZMでピントが出ないので、2インチスリーブのみ特注で製作してバックフォーカスを20mm稼ぎました。これにより、アイピース突き当て面に焦点があるアイピースで、ピント余裕が約10mmあります。

鏡筒が短く、コンパクトな外観に仕上がったので、引き取りに来られたオーナー様も大変満足されたご様子でした。

EZPとEZM、原理は同じ

すでにご存知の方もいらっしゃると思いますが、EZPEZMはどちらも、像が正立して直角視できる原理はまったく同じです。今回はその説明をさせていただきます。

まずEZPですが、こちらはアミチプリズムの2回反射で像を正立させています。そのイメージは、笠井トレーディングHPのEZP紹介ページの動画にあるとおりです。

一方EZMは、平面ミラーの2回反射で像を正立させています。そのイメージと原理は、ビノテクノHPの技術解説「EZMの機能と原理」をご覧ください。

一見すると別の理屈に見えますが、実は対物レンズからやってくる光路が2回反射で描くベクトルは、どちらもまったく同じです。それを理解していただくため、上記動画にさらに手を加えました。それが下記の動画です。

手を加えたのは、入り口と出口の円、そしてその円を反射面に投影した2つの楕円です。ちなみにこの楕円の長径:短径比は2:1になります。これは、EZM(正立天頂ミラー)の楕円ミラーの理論比と同じです。つまりEZMは、アミチプリズムの反射面に沿って2枚のミラーを配置したものであることが分かっていただけると思います。

 

※ 以前から「正立天頂ミラーはアミチプリズムの一種」とおっしゃる方がいらっしゃいます。像の正立原理だけをみればそのとおりですが、このアミチプリズムを見て、底に平面ミラーを仕込んだ頂角60度の2つのケースをひねってつなぎ合わせる構造を誰が着想できるでしょう。これを着想して形にされた松本龍郎氏には、今でも畏敬の念を抱いています。

EZPを使った双眼望遠鏡(ユーザー様より)

EZP(天頂正立プリズム)はまだ発売したばかりですが、さっそくペアで購入して双眼望遠鏡に仕立てられたユーザー様がいらっしゃいます(その素早さに驚いています)。その写真を紹介いたします。

鏡筒はAPMの8センチ、架台はSLIKのTELE BALANCEのようです。

EZPはEZMのようなXY微調整機構が組み込めないので、左右の鏡筒を正しく平行に取り付ける必要があります。鏡筒の平行を微調整する機構は無いようですが、ある程度平行を追い込まれたようで、30倍程度なら快適とのことです。

新製品「EZP」

本日より新製品「EZP」の販売を開始します。

EZP(Erecting Zenith Prism)は、笠井トレーディングと共同開発したアメリカンサイズ(31.7mm)アイピース専用の正立天頂プリズムです。

製品の詳しい仕様や特長は、ビノテクノの商品ページ笠井トレーディングの商品ページをご覧ください。

この商品はビノテクノ、笠井トレーディング、および販売店からご購入可能です。

またこのEZPを使った小口径用双眼望遠鏡も開発中です。出来上がり次第このブログで紹介させていただきます。

パラリンピックに思うこと

今日(9/5)でパラリンピックが閉幕しました。自国開催ということもあってたくさんの競技をテレビで観ることができました。おかげでやっとパラリンピックの意義が私なりに理解できました。端的に言えばパラリンピックは、やり抜く意思の大切さをあらためて私に教えてくれました。

パラのアスリートたちは、自分が負っているハンディを嘆いてなどいません。残っている機能を最大限活用して武器のレベルにまで磨き上げています。やり抜く熱い意思でたくさんのサポートを集めています。

「障害があるのに頑張ってるね」などという感想はとんでもない上から目線、失礼の極みです。パラのアスリートを見て感じるのは、「自分はあの人達ほど頑張っていない」という自省です。何かがないことをやらないことの言い訳にしていないか、やるといいながら勝手にやめていないか、何がしたいかをきちんと周りに伝えているか。

障害があろうがなかろうが、やり抜く意思は大切です。それができている人には最大限のリスペクトを捧げたいです。頑張らなければならないのは、それができていない自分です。

Ninja320 on AZ-EQ6GT-J

以前このブログで紹介した改造AZ-EQ6GT-J架台に、Ninja320鏡筒を載せた写真をオーナー様からいただいたので紹介させていただきます。

接眼部が高くならないよう、ピラー高さがかなり低く切り詰めてあります。

AZ-EQ6GT-Jはそんなに小さい架台ではありませんが、Ninja320鏡筒を載せるとさすがに小さく見えます。これでもオーナー様の話によると、200倍でも問題なく追尾できたそうです。AZ-EQ6GT-Jのポテンシャルは高いです。

視野回転の不一致が発生する意外な原因

今まで問題なく使えていた双眼望遠鏡が急にひどい視野回転の不一致に見舞われたとき、原因として見落とされがちなのがEZMの取付状態です。

EZMの2インチバレル根元フランジ部を、接眼部の2インチスリーブ端面に密着させるのが正解ですが(上の写真のオレンジ色の四角の部分)、ここが密着していないと、接眼部に対してEZMが傾く可能性があります。その許容値は脳に依存するので人によりますが、経験的に、0.5度以上傾くとほとんどの人が視野回転の不一致に気づきます。これぐらい傾いているとEZM調整ネジを盛大に回すことになり、視野中央で無理やり一致させた星が視野の端で2つの星に見えます(=視野回転の不一致)。

0.5度というとピンとこないかもしれませんが、これを2インチ差込部の外周(直径50.8mm)付近の隙間に換算すると、隙間の最大と最小の差が0.44mmとなります。つまり1mmの半分以下です。けっこうシビアだと思いませんか?

また接眼部には、傾きやすいものと傾きにくいものがあります。2インチの内径部が口元しかなく、奥の内径が大きくなっているものは傾きやすいです。一方奥まで2インチの内径があるものは傾きにくいです。

仮に傾きやすい接眼部だとしても、望遠鏡を真下に向けてEZMを取り付けると、密着させやすいです。もちろんこのときアイピースは外しておきます。

それからEZMの取付に限りませんが、2インチ部を固定するための3方向からのネジは、3本のうち2本だけをきつく締めればOKです。3本ともきつく締めると、逆にガタが出やすくなります。かといって、3本目のネジをゆるゆるにしておくと知らないうちに落下してしまうので、他の2本よりは緩く締めるか、いっそ3本目(手が届きにくい方向)を取り外しておいてもいいです。ネジで確実な締結を求める工業製品は120度離れた2方向から締め上げる構造が一般的なので、これは乱暴な話ではありません。

BINO-60ED ハンドル取付

以前BINO-60EDを買ってくださったお客様から、ハンドル取付のご要望をいただいたので、特注対応で製作しました。うまい具合に底面へのアリガタ金具取り付けのご希望もいただいたので、写真の通り、底面のアリガタにハンドルを取り付けました(2つのアリガタ金具で多種の架台に対応)。

底面から見るとこうなってます。

実を言うと製品企画の段階でハンドルオプションも考え、実際に試作もしたのですが、そのときはどことなく野暮ったい感じがしたので取りやめました。今回は底面アリガタ金具を使って取り付けたので、野暮ったさはありません。

BLANCA-102EDPビノ

以前納品したBLANCA-102EDPビノがオーナー様の自宅天文台に設置されたので、訪問して写真を撮らせていただきました。

写真右側がBLANCA-102EDPビノで、左側がケンコー25cmニュートン(電子観望専用)です。架台はケンコー・トキナーAZ-EQ6GT-J、ピラーは特注品です。

BLANCA-102EDPは笠井トレーディングの10.2cmF11という眼視専用の鏡筒です。昨年単眼でこの鏡筒を覗いたオーナー様がこの星像に惚れ込んで、ビノ製作をご注文くださいました。ご自宅は街なかにあるので、ご覧になるのはもっぱら月、惑星、明るい星団になります。

鏡筒が長いため、弊社製クレードルCRDL-105に一部特注部品を追加して、鏡筒バンドの間隔を広げました。ピントハンドルが妙な位置にあるのは、この鏡筒の接眼部が、ハンドルの左右入れ替えができない構造となっているためです。

スライドルーフの外から撮った写真です。観測室の壁が立体的に見えるのは目の錯覚です。遊び心を掻き立ててくれる空間となっています。

オーナー様、プライベート観測所の完成おめでとうございます!

BINOKIT(10.2cm対物) on AZ-3経緯台

先日納品させていただいたBINOKITのオーナー様から写真をいただいたので紹介させていただきます。

機材は、右側がBINOKIT-BORG+10.2cm対物レンズユニット、左側が以前からお持ちのBORG50mmアクロマート対空双眼です。バランスウェイトは5kgとのことです。

架台はKasai AZ-3経緯台、三脚はアイベル強化型ステンレス三脚です。経緯台と三脚を接続するアダプターはビノテクノで特注製作させていただきました。

バランスウェイトを含めた搭載重量は約20kgと思われますが、見た目、まったく危なげなく、実際、問題なく使えているとのことです。

Kasai AZ-3経緯台は元々剛性ポテンシャルが高いのと、微動ができるので、双眼望遠鏡によく合う経緯台と言えます。搭載方法の参考として紹介させていただきました。

AZ-EQ6GT-J改造

お客様のご依頼で、ケンコー・トキナーのデュアルモード(赤道儀と経緯台)架台AZ-EQ6GT-JにNinja320鏡筒を載せるための改造を行ったので紹介させていただきます。

改造内容は主にふたつで、ひとつは経緯台モードでの剛性アップ、もうひとつは、Ninja320を取り付けるための逆ブランコ方式(勝手に命名)のフレーム取り付けです。このブログをご覧になっている方はお気づきと思いますが、どちらも以前製作したTOA130ビノの類似設計になっています。

写真の向かって右の黒いかたまりはバッテリーです。写真では見づらいのですが、下に支えのL型板金ステーがあります。その下に見えているアルミの厚板には、バランスウェイト用のシャフトが取り付く予定です。反対側(左側)のシャフトもバランスウェイト用です。

逆ブランコのてっぺんに見えるアリミゾ金具はKASAI大型アリミゾ金具で、ここにNinja320が取り付きます。Ninja320のオリジナル状態ではアリガタ金具がないので、お客様の方からバックヤードプロダクツ様に依頼して付けてもらうとお聞きしています。

上の写真は、鏡筒の接眼部側から見たアングルになります。幅広のアルミフレーム(40X120mm)から突き出た細いアルミフレームの先端には、SynScanコントローラのホルダーが取り付けてあります。ちょうど接眼部に近い位置になります。AZ-EQ6GT-JにWi-Fiアダプターを取り付ければスマホから操作できますが、SynScanコントローラの方が使いやすいというオーナー様のご要望でこの仕様にしました。

アリミゾ金具クランプノブの操作性向上のため、逆ブランコのトッププレートの一部を切り欠きました。トッププレートに対してアリミゾ金具との距離を取ればこの切り欠きは不要ですが、それでは鏡筒重心が架台の不動点からさらに離れてしまうのでこの方法を取りました。鏡筒重量は25kgぐらいのはずなので、安易に不動点からの距離を大きくしてしまうと、追加するバランスウェイトが増えてしまいます。地味な配慮ですが、架台の耐久性を考えると、バランスウェイトを最小限に済ませることは設計上大事なポイントです。

すでに販売中止となっていますが、Ninja320はドブソニアンの中でも優秀な光学系を搭載しているので、これを自動追尾架台に載せたいというご希望はよく理解できます。しかしアリガタ金具を取り付けて普通の赤道儀に載せても鏡筒回転装置がないので、この口径では実用上無理があります。そのソリューションとしてこの事例をご覧いただければありがたいです。

ユーザーレポート(BINO-60ED)

以前納品したBINO-60EDのオーナー様からユーザーレポートをいただいたので紹介させていただきます。

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HPで広告を見て以来ずっと気になっていたが、60mm ED(f = 360 mm)の実力はどうなのか?と不安な気持ちもあった。しかし、背中を押されたのは、星ナビ7月号 “趣味全開のガレッジメーカー” という特集記事。早速60EDビノが我が家にやって来た。

ファーストライトは、梅雨明け・新月期と好条件が重なった先週末(ビノテクノ注:7月上旬頃)、国内屈指の星空観望地、漆黒の闇が広がった。アイピースは、定番 TeleVue Type4-22mm、広視界で(16倍、実視界5°)鋭く美しい星像。もう1つはZeiss Microscopy W-PL 25mm(ビノテクノ注:元はツアイス製顕微鏡用アイピースだそうです)、こちらは14.5倍で4°強、中心像とヌケ、バーローと相性が良いので中倍率まで楽しめる。アイピースを何度も交換しながら、濃厚な天の川のメシエ天体を堪能した。

60EDビノの実力は想像以上で、5-6cmの双眼鏡とは別次元と思う。剛性感も高い。電車、あるいは飛行機での海外遠征など、車以外でのトラベル星見に最適。三脚と架台を含めてもキャスターバック1つに入るサイズ感、無二の存在価値があると感じた。

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オーナー様、レポートありがとうございました。一見豪勢に思われるアイピースとの組み合わせですが、この対物レンズの優秀さを余すところなく引き出しています。このように優れた光学系による15倍ぐらいの倍率では、天の川が星々に分解され始めて、見ごたえのあるざらざら感が味わえます。

※ BINO-60EDは、対物レンズの在庫がなくなったため、いったん販売終了とします。

10.2cm対物レンズユニット完売しました

BINOKIT-BORG発売と同時にオプション販売していた10.2cm対物レンズユニット(2枚玉EDアポ)が完売しました。お買い上げいただいた皆様、ありがとうございました。これでこのスペックの対物レンズユニットの販売は終了です。

もう一方のオプション、8.5cm対物レンズユニットも残りわずかです。こちらも在庫がなくなり次第販売終了となります。購入を検討されていらっしゃる方、どうぞお見逃しなく。

ただし、上記オプションの対物レンズユニットがなくなっても、BINOKIT-BORGは引き続き販売していきます。数カ月後になると思いますが、新しいスペックの対物レンズユニットを発売する予定です。どうぞお楽しみに。