9/15 星をもとめて出店します

京都るり渓で行われるをもとめてに、ビノテクノは今年も出店します。

開店時間は、
9/15(日)12:00-22:00ごろ
の予定です。9/16(月)の出店はありません。

デモで展示する機材や特価販売するアイテムは、また日が近づいたら案内させていただきます。

昨年の出店風景

西表島・小浜島で星を見てきました

一昨年の父島、昨年の宮古島に引き続き、7/5-7/10の日程で西表島(いりおもてじま)と小浜島(こはまじま)へ行ってきました。以下はそのレポートです(長文注意)。

西表島ってどこ?

Googleマップより

まずは場所の確認です。西表島や小浜島、石垣島は、上の地図の赤丸の位置にあります。沖縄本島よりも台湾に近いです。北緯25度で本州より約10度低く、東経124度で明石より11度ほど西です。このため太陽の南中高度はこの時期ほぼ天頂、太陽の南中時刻は午後1時近くになります。

アクセス

竹富町観光協会HPより

この地域で空港があるのは石垣島だけです。他の島へ行くにはまず飛行機で石垣島へ行き、そこからフェリーに乗ります。中部国際空港から石垣島への直行便は1日1便ですが、那覇経由も含めれば一日数便の飛行機があります。同様にフェリーも一日数便あります。

ここから各島へのフェリーが出航

日程

今回のツアーは欲張って2つの島に行きました(西表島3泊&小浜島2泊)。そのため移動の多いツアーとなりました。ここまで来たら憧れの波照間島行きも考えましたが、さらに移動のロスが大きくなるので断念しました。

機材と梱包

鏡筒:BINOKIT用10.2cm3枚玉SD対物レンズユニット+BORG鏡筒
接眼部:EZM(アルミメッキ)+ハイペリオンズームアイピース
架台:Sky-Watcher AZ-GTi+ノースマウントCT-20用ハーフピラー
三脚:MORE BLUE製カーボン三脚
バッテリー:MAKITAリチウムイオンバッテリー18V6Ah+電源変換アダプター
カメラ:富士フィルムX-T20+18-55mmズーム

今回の機材はこれです。商売柄双眼にしたいところでしたが、今回は島をまたぐ移動があるので宅配が使えず、すべて自分で運ばなければならないので単眼にしました。それでもけっこうな重量となりました。

スーツケースに詰め込んだ機材

運ぶにあたってカメラバッグも考えましたが、最終的には大きめのスーツケースにしました。上の写真のように段ボールで個包装し、隙間が空かないようにスーツケースに詰めました。この状態で航空会社に荷物を預けましたが特に機材の破損はありませんでした。もちろんこれは国内線だったからよかったのかもしれません。国際線はもう少し手荒いと聞いてますが、海外へ行くことはもうないので要らぬ心配です。

西表島について

前半3晩を宿泊した西表島は、ジャングルとマングローブに覆われた自然豊かな島です。最高標高が470mもあり、降雨量も多いようです。そのため離島にしては珍しく水が豊富です。宿や飲食店のほとんどは島の北部(上原港を中心としたエリア)にあります。

マングローブ林

イリオモテヤマネコで有名な島でもあり、実際島内いたることろに「ヤマネコ注意」の看板がありますが、夜行性ということもあり、滞在中一度も見ることはありませんでした。

ハブもいるらしいのですが、島の住人ですら滅多に見ることはないそうです。しかも西表島のハブは弱毒性らしく、いまだかつて西表島でハブに噛まれて死んだ人はひとりもいないとのことでした。

西表島での観望

観望は「うなりざき公園展望台」という場所で行いました(下のマップの赤丸)。ここから南はすべてジャングルで街の光がなく、地平線近くまでびっしり星が見えました。

Googleマップより

泊まったペンションから車で10分もかからない場所にあり見晴らしも抜群です(ほぼ360度パノラマ)。

明るい時間のうなりざき公園
うなりざき公園から見た日没直後の海岸風景

この場所に毎晩通って星を見たのですが、一度もスコールに見舞われることもなく3晩とも快晴でした。こんなに晴れたのは一昨年から始めた離島ツアーではじめてのことです。ちなみにこの時期梅雨前線は本州に北上しているので、西表島はすでに梅雨明けしています。

架台AZ-GTiはそこそこ優秀で、ドンピシャとは言わずとも当たらずとも遠からずといった感じでサクサクと自動導入してくれました。

春から夏の主だった星雲星団はすべて見ましたが、圧巻の天体はケンタウルス座のオメガ星団(NGC5139)でした。この場所でも南中高度は15度ぐらいで、薄明が終わるのを待って見る頃にはもう少し高度が下がっていました。それでも十分な明るさでその勇姿を眺めることができました。

10cmは10cm

少しクールな話になります。これは父島や宮古島でも感じたことですが、10cmでの観望は、本州の暗い空での観望とそれほど変わりません。もちろん肉眼で見える天の川付近の星の数はこちらの方が圧倒的に多いのですが、不思議なことに望遠鏡で覗いてみるとそれほど迫力がありません。「これぐらいなら本州で見たことがある」というのが正直な感想です。

暗い天体も同様で、安定して見えるのは10等級ぐらいまで。11等級はほとんど見えません。頑張れば存在ぐらいはわかるかもしれませんが、間違っても20cmクラスの見え方にはなりません。これぐらいの暗さが10cmクラスの限界なのかなと思います。

星座双眼鏡大活躍

逆にこの空で大活躍したのが星座双眼鏡です。持参したのはメガネ使用者でも最大視野が確保される笠井トレーディングWideBino30GF。ただでさえ星数の多い天の川付近の星の数がさらに倍増。変な話ですが10cmより感動しました。暗い空でこそ真価を発揮する機材です。

笠井トレーディングHPより

星野写真

時間があったので、持ってきたミラーレス一眼をAZ-GTiに載せて、30秒のタイマー撮影で写真も撮りました。

アルカスイス台座を使った自作雲台

ISO6400、開放から半分だけ絞りました。一応自動追尾しているのでガイド撮影です。おかげで割とクオリティの高い写真になりました。

クリックすると画像が拡大します。さそり座の高度に注目!
クリックすると拡大します。さそり座からいて座付近
クリックすると拡大します。夏の大三角

西表島の宿泊

泊まった宿はペンション・イリオモテというペンションでした。島内の周回道路沿いにありますが、特に看板が出ていないので、うっかりすると入口を見落とします。

ペンション・イリオモテの入口

部屋の窓の外はすでにジャングルでした

部屋から撮った風景

夕方になると毎晩ペンションの中庭にたくさんのカメが現れました。愛嬌ある歩き方をしますが、天然記念物とのことで接触禁止でした。

ヤエヤマセマルハコガメ(?)

由布島水牛ツアー

西表島の東部海岸から数百メートル離れた場所にある由布島(ゆぶじま)まで、水牛車に乗って渡るツアーに参加しました。

ほぼ干潮の時間帯

ときどき水牛が尻尾を振るので「あれは機嫌がいいのですか?」とガイドに訊ねたら、「いえ、逆です」とのことでした。

水牛のサオリちゃん
由布島内のショップにて

カヌー&トレッキング&キャニオニングツアー

西表島ならではのアクティビティーにも参加しました。利用したのは西表ポロロッカさんの「大はしゃぎコース」です。

まずはカヌーを漕いで川を遡上。川といってもほとんど流れがなく、カヌー初心者の私でも難なく漕げました。ジャングルの養分がたっぷり溶け込んでいるので川の水は濁っています。

生まれて初めて漕ぐカヌー

20分ほど漕いだらカヌーは係留してここからジャングル内の滝までトレッキング。

カラフルなカヌー係留所
ガジュマルの大木
足元は木の根がびっしり
最初の目的地ピナイサーラの滝に到着

ここからまたカヌー&トレッキングで別の地点に移動。そこから沢下り。途中数か所、岩の上から水に飛び込みました。ヘルメットとウォータージャケットを装着しているので怖くありません。

大はしゃぎ中の服部

ツアーが終わって部屋に戻ると足が筋肉痛で悲鳴を上げていましたが、貴重な体験となりました。

子午線モニュメント

島内にはこんなモニュメントもありました。1から9までの数字が並ぶ経度地点のモニュメントです。それだけといえばそれだけの場所です(笑)

そのすぐ隣りにあったイタリアンのお店で一服。この時期の沖縄地域は、パイナップルをはじめあらゆるフルーツの旬だそうです。ここではマンゴー100%ジュースをいただきました。

小浜島へ移動

西表島観光を満喫したあと、4日目に小浜島へ移動しました。小浜島へ渡るには、西表島の大原港へ移動しなければなりません。宿があった上原港付近からレンタカーで小一時間かかりました。レンタカーは大原港の営業所で乗り捨てです。

ちなみに西表島でタクシーを見つけることは困難です。ゼロでは無いそうですが、イリオモテヤマネコ同様、滞在中一度も見ませんでした。

小浜島の宿泊

小浜島では奮発して、高級リゾートホテルはいむるぶしに宿泊しました。小浜島は朝の連ドラ「ちゅらさん」の主人公エリーの出身地として有名ですが、実際には小さい島で、観光資源もほとんどありません。

その代わりにホテルはいむるぶしは、広大な敷地の中にいろいろなタイプの宿泊施設、レストラン、カフェ、ショップ、プール、プライベートビーチを備え、ホテル内で自己完結しています。すぐとなりの星野リゾートもおそらく同じだと思います。

またホテル内はゴルフ用(?)カートで移動します。これがないと部屋からレストランまでの移動すら困難です。しかしこのカートが曲者で、運転しづらく、振動の激しい乗り物でした。とてもではありませんが、これで望遠鏡を運ぶことはできません。かといって敷地内に車の乗り入れができないので、観望するとしたら、部屋のすぐ外になります。

ところがあろうことか、ホテルの敷地内はどこも照明が「完備」され、暗い場所がありません。実にもったいない話です。

小浜島滞在中、天気はそれほど良くなかったのですが、それでも二晩とも夜中に少しだけ晴れました。そのとき照明の直撃がないところへ徒歩で移動して空を見たら、西表島と遜色ない雄大な天の川が見えました。地理的条件を考えたら当然です。

望遠鏡を出そうかと思っていたらすぐに曇ってしまって結局観望は諦めました。西表島で好天に恵まれたから良かったものの、小浜島で勝負だったら悩ましい状況でした。教訓です。小浜島で星を見たかったら、こういうところに泊まってはいけません。もっと安い宿に泊まって、夜間車で観望地に移動するのが賢い選択です。もっとも星空観望を除けば、ホテルはいむるぶしではリゾート気分が十二分に満喫できます。

幻の島上陸ツアー

自己完結しているホテルを抜け出して、小浜島の港からボートで15分ほどのところにある、満潮になると水没する幻の島に上陸するツアーに行ってきました。正式名称は『浜島』というそうですが、三日月状の砂地ですぐそばまでボートが近づけます。

海の色と空の色に注目!

この世の楽園のような景色を楽しんだあとは、さらにボートで移動して、水深が浅く、サンゴ礁のある場所で小1時間ほどシュノーケリングをしました。

シュノーケリングも今回で3回目になるのでだいぶ要領が分かってきました。戸惑うことはありません。シュノーケリングジャケットを装着しているので、疲れたら仰向けになるだけです。そうすると自動的に顔が水面から出て休憩できます。

回復したらまたうつ伏せ姿勢で足ヒレを動かしてサンゴ礁の観察です。指先ほどのサイズから手のひらサイズぐらいまで、大小さまざまな魚がサンゴ礁を縫うように泳いでいました。何度見ても癒やされる景色です。

静かな島、小浜島

「何もないですよ」と言われたものの、それでもレンタカーで島内を回りました。確かに特別なものはありませんでしたが、サトウキビ畑や牛の牧場があり、実にのどかで静かな風景でした。島の中央部を除けば、人がほとんど見当たりません。

本州なら観光客が殺到しそうな美しいビーチにも人がいません。小浜島ではまったく特別な景色ではなく、ごくありふれた景色なのでしょう。素敵です。

細崎(くばざき)海岸付近のビーチ

最後に

そんなこんなで今回もひと足早く夏休みを満喫してきました。今回は特に西表島で3晩快晴に恵まれたので大成功と言えるツアーでした。

長文にお付き合いいただきありがとうございました。

おわり

双望会はDSPの前身?

成澤広幸氏が天文ガイドで連載している「星空に会いに行く撮りに行く」の今月号(8月号)の話題はDSP2024でした。記事によるとDSPはますます盛況のようで何よりですが、その中で看過できない記述がありました。私が仲間と主催していた双望会がDSPの前身とあります。これはあたかも、DSPが双望会の後継イベントであるという誤解を招く表現です。形としては似ているかもしれませんが、DSPは双望会の後継イベントではありません。双望会とまったく関係のないイベントです。主催者もまったく別メンバーです。「双望会を参考にした」というのが正確な表現ではないでしょうか。

双望会のホームページより

さらに

の記述は何を指しているのかよく分かりません。少なくとも双望会では初心者の参加を制限したことは一度もありません。もちろん排除したこともありません。

双望会に関する記述はおそらく成澤氏が会場で聞かれた情報を下に書いたと推測しています。双望会がDSPの中でそのように語られていることを残念に思います。

しかし繰り返しになりますが双望会とDSPは無関係であり、比較すること自体意味がありません。双望会の話がなくてもこの記事は成立しているので、言わずもがなという思いです。

10.2cm対物レンズユニット 残り1セット

BINOKIT-BORGのオプションとして販売している10.2cm3枚玉SDアポ対物レンズユニットが残り1セット(2本)となりました。BORG107FL対物レンズに決して引けを取らない光学性能でお勧めの10センチでしたが、この在庫がなくなったら今のところ追加で仕入れる予定はありません。仮に仕入れるとしてもこの円安なので次ロットの販売価格はかなり上がると思います。ご購入を検討されている方はどうかこの機会をお見逃し無く。

プレートソルビング自動導入観望

遅ればせながらプレートソルビング自動導入観望を始めました。

ご存じの方も多いと思いますが、プレートソルビングとはCMOSカメラに写った星空から星の座標(赤経赤緯)を解析する技術です。この技術が商品に実装され始めたころはもっぱら写真撮影用の技術として紹介されていました。

「これって観望用にも使えないの?」と思っていたら、協栄産業さんのHPでその使い方がすでに紹介されていることに最近気づきました。完全に出遅れてます(笑)

ハイランダープロミナーとAM3でプレートソルビング自動導入観望を楽しもう!
AM3、AM5赤道儀の経緯台モードで天体観望を楽しもう

ご覧の通り経緯台モードでもできるとあって、さっそく機材を入手しました。買い揃えたのは、
ZWO AM5架台
ZWO ASIAIR mini
ZWO TC40カーボン三脚
ZWO AM5・新型ハーフピラーPE200
です。

それなりの金額になりましたが、こういう技術は実際に使ってみないとお客様に勧めることもできません。

AM3架台ではなくAM5架台(以下、AM5)にしたのは、10センチ双眼望遠鏡を載せたかったからです。ハーフピラーは当初ノースマウントCT-30用のハーフピーラを使おうとしましたが、なぜか取り付け座面あたりがぐらぐらしたので、純正のハーフピラーにしました。こちらにしたらぐらぐらは無くなりました。

この純正ハーフピーラを使う場合、三脚もZWO純正のTC40になりますが、これについては少し不満があります。脚がそれほど伸びないので接地半径が小さく、10キロ以上ある双眼望遠鏡を片持ちで載せると転倒の恐れがあります。そのためAM5にウェイトシャフトを取り付けてウェイトを使うことにしました。もう一段伸びたなら転倒リスクは無くなると思われるので惜しいです。ちなみにウェイトシャフトはCT-30用が流用できました。

AM5自体の剛性はケンコー・トキナーAZ-EQ6GTに劣りますが、この軽さは魅力です。持ち運びは断然AM5が楽です。

AM5に10センチ双眼望遠鏡を載せるとこんな感じになります。

バランスウェイトは外してあります

下の写真は双眼望遠鏡を外した状態です。右側の箱がASIAIR miniです。本格的な写真を撮る場合はASIAIR Plus-32GとかASIAIR Plus-256Gが必要ですが、観望だけならASIAIR miniで十分です。

電源はAM5から供給(逆でも可)

ちなみにこの架台に望遠鏡を載せるときは、アリミゾ金具に描かれた絵のとおりの向きにしなければなりません。対物レンズが逆向きになるように載せると正常に動作しません。そのためBINOKITのアリガタ金具の取り付けをいつもと逆にしました。

ガイドスコープは産業用CCTVレンズ(100mmF3.5)と、以前から所有しているZWO非冷却カメラASI462MCの組み合わせです。Askar製やZWO製のガイドスコープを使うという選択肢もありますが、こちらの方がコンパクトで安価(14,000円程度)でした。像質は劣るかもしれませんがプレートソルビングに支障がなければ大丈夫です(後述しますが実際問題はありませんでした)。

ガイドスコープ

このガイドスコープと双眼望遠鏡本体の光軸を合わせるため、SLIK 微動雲台SMH-250を使いました。この微調整機能は必須です。使ってみて分かったのですが、プレートソルビングを使った自動導入は、目標の天体を、惚れ惚れするぐらい完璧に「ガイドスコープ視野」のど真ん中に持ってきます。したがって目標天体が望遠鏡本体の視野ど真ん中に来るかどうかはこの微調整次第です。

ちなみにSLIK 微動雲台SMH-250をファインダーアリミゾ金具に取り付けるため、底面に特注サブプレートを介してMORE BLUE ビクセン規格ファインダー台座 FG304を取り付けました。

これらの機材を実際に使う場合、スマホにASIAIRのアプリを入れる必要があります。これはGoogle Playから無料でダウンロードできます。ZWOのアプリは他にも電視観望でASI STUDIOを使ったことがありますが、どちらのアプリも直感的に分かりやすいです。きっと優秀な技術者がアプリを作っているに違いありません。

それと買う前は基本的なことが分かってなかったのですが、プレートソルビングを行うのはAM5ではなくASIAIR miniの方です。ASIAIR miniはCMOSカメラの画像を取り込み、プレートソルビングで画像の赤経赤緯を解析し、目標天体までの赤経/赤緯軸修正量を架台に指示します。

ということはASIAIR miniがあれば、AM5でなくてもこの機能は使えるわけで、実際アプリの起動画面の架台選択肢に他社製架台の名前がずらりと出てきます。ただし問題は接続ケーブルで、AM5用のケーブルは使えません。例えばSky Watcher製架台に接続するには、ASIAIR mini側がUSB-A、架台側がRJ45モジュラージャックのケーブルが必要です(販売店に問い合わせるとたぶん見つかると思います)。

さて本題に戻ります。実際に使ってみました。笑いが止まらないぐらいど真ん中に導入できます。これまでも自動導入架台というのはありましたが、当たらずとも遠からずといった感じの微妙なずれ方をすることがよくありました。しかしプレートソルビングではそういうことはありません。視野がずれていたら自己修正するので必ずど真ん中に来ます。期待以上の性能です。

下の画像2つは、天体を導入したときのスクリーンショットです。使用場所は桑名市内の自宅ベランダです。肉眼では2等星ぐらいしか見えませんが、CMOSカメラはプレートソルビングを行うのに十分な星の数を映しています。

M27導入時のアプリ画面
M13導入時のアプリ画面(操作パネルオフ状態)

最後に、使ってみて分かったことを挙げておきます。

アプリ起動時、メインスコープとガイドスコープの焦点距離を入力する必要があります。先述のガイドスコープはここではメインスコープになります。ややこしいかもしれませんが、ガイドスコープの焦点距離をメインスコープ欄に入力します。

また上記焦点距離はできるだけ正しい値を入れなければなりません。いい加減な数値をいれるとプレートソルビングでエラーが発生します。余談ですが上記システムでプレートソルビングをしたところ、メインスコープの焦点距離が入力値の100mmから95mmに自動修正されました。購入した産業用レンズの本当の焦点距離は95mmかもしれません。

それからAM5を赤道儀モードから経緯台モードに変更する場合、左右の「高度固定ネジ」(どのネジかは取扱説明書参照)を必ず締め直さなければなりません。これを忘れると、望遠鏡のポジション次第でバランスが崩れて高度が急に変わり、最悪望遠鏡の落下事故につながります。

またAM5は、望遠鏡を真北水平に向けた状態で電源をいれると、その後の動作で対物レンズが下に向いたり、天頂を超えてのけぞるようなポジションを取ったりすることがありません。

というわけで、やっと究極の自動導入架台に出会えました。このシステムならお客様にも安心して勧めることができそうです。

シングルアーム架台(スペシャルバージョン)

高級経緯台で有名なノースマウントの関係者から、スペシャルバージョンのシングルアーム架台をお借りしたので紹介させていただきます。

ハーフピラーはノースマウントCT-30用

同じ構造のシングルアーム架台はすでに販売されていますが、この架台は各構成部品をサイズアップして大型機材積載に対応させたスペシャルバージョンです。

片持フォークの角度は変更可能(現行モデルと同じ)
天頂姿勢時のバランス調整も可能(現行モデルと同じ)
水平アームとビクセン規格アリミゾが一体化した構造(現行モデルと同じ)

上の写真の右側に見えるのは、それぞれ上下回転(上側)と水平回転(下側)のクランプハンドルです。微妙なフリクション調整ができるのはCT-20やCT-30と同じですが、シングルアーム架台ではさらに完全なクランプができます。

ちょうど出荷前の10センチビノがあったので、ビノの底部にアリガタ金具を取り付けて載せてみました。上下回転がクランプできるのは着脱時とてもありがたいです。

水平アームに載せるのでビノ落下のリスクは小さい
載せたビノはBLANCA-102SEDビノ

そもそもこのスペシャルバージョンは、10センチビノを想定して製作されたそうです。そのおかげで、見た目にも収まりがいいです。

これで実際に星を見てみると、30倍程度ならまったく問題ありません。70倍ぐらいでは触ると視野が揺れますが、手を離すとすぐに揺れが収まります。揺れ具合は残念ながらCT-30に劣りますが、これはシングルアームという構造の特性でやむを得ないことです。

逆にCT-30に対してのメリットは、転倒リスクが小さいことです。全体の重心が三脚中心からそれほど離れていないので、三脚の接地半径を気にしなくても大丈夫です。

また架台本体の重量は約4.4kgです。

ちなみにこのスペシャルバージョン架台は4台のみ製作された限定モデルで売り切れたら終わり、その後の製作予定はないそうです。

本来ビノテクノはメーカーであって販売店ではないのですが、関係者のご希望を受けてビノテクノから販売します。価格は税別130,000円(税込み143,000円)。納期は2週間程度です。

その後の後始末

パスポート盗難の憂き目にあったダラスツアーから、あっという間に1ヶ月が経ちました。その顛末を紹介したブログは思いの外反響が大きく、多くの方から温かいお見舞いのことばをいただきました。この場を借りてあらためてお礼申し上げます。

大変な思いで帰国したのですが、その後の後始末も割と大変でした。大変と言ってもお金と時間で解決できることばかりですが、それが多いとうんざりします。

クレジットカードはすべて再発行してもらったので、自動引き落としになっていた支払いがことごとく引っかかり、そのたびにクレジットカード情報を更新しています。

金額的に一番痛かったのが機材やカメラです。その中には買ったばかりのレオフォトの三脚大小各1セットもありました。これは再購入しようかどうしようか思案中です。

カメラについては、ブログを読んで気の毒に思ってくれた知人の知人が、中古品を格安で譲ってくれました。

機材やカメラ以外にも、
お札入れ、小銭入れ、家の鍵、車の鍵、腕時計、帽子、サングラス、工具等
を盗られたのですべて再購入しました。

合計するとそれなりに痛い出費ですが、出発前に入っておいた旅行会社の保険が使えたのはありがたかったです。損害額の半分以下ではありますが、限度額いっぱいの金額をもらいました。

ちなみにこの申請には盗難事件があったことを証明する書類が必要だったので、テキサス州のMesquite警察のHPをネットで探し、リクエストフォームに必要事項を記入して事件調書を請求しました。

Mesquite警察から取り寄せた事件調書の1ページ目(全5ページ)

あとで分かったことですが、クレジットカードの種類によっては、海外旅行の保険がついているものもあります。ただしそのクレジットカードで旅行代金等を支払っていることが条件です(ゴールドカードやプラチナカードはその縛りもないようです)。私の場合残念ながらそういう保険の付いていないカードで支払ってしまったので、その保険は使えませんでした。

なんだかんだで後始末もほとんど終わりましたが、あらためて自宅の中を見渡すと、盗られたものの空箱がいくつか目に付きます。

ミラーレス一眼カメラの空箱

持っていても仕方がないので処分するしかありませんが、見るたびに切ない気持ちになります。心の傷が癒えるにはもう少し時間がかかりそうです。

双眼望遠鏡専用ケース

ビノテクノ製品のオーナー様から、特注で専用ケースを製作されたとの情報をいただいたので紹介させていただきます。写真はすべてオーナー様からのご提供です。

機材はBLANCA-90SDTビノ

この専用ケースは、伊藤製鞄株式会社に機材を持ち込み、採寸してもらって製作した1点物だそうです。ケースの外側にはイニシャル銘板もあります。写真では分かりませんが、取手は縦横二方向にあり、肩掛けストラップ用金具付きです。

それなりのお値段がかかったようですが、十分にその価値がうかがえる美しい仕上がりです。

I様、情報のご提供ありがとうございました。

ダラスで日食を見てきました

4/6-4/11の日程でアメリカ・ダラスへ皆既日食を観に行ってきました。生まれて初めて皆既日食を見ることができたものの、ダラス滞在中大変な事態に遭遇しました。以下はそのレポートです(長文注意)。

はじめに

以前ブログに書いた通り、業者のツアーに参加せず、自分で飛行機とホテルを手配してのツアーでした。同行者は高校時代の天文部同級生A(イニシャルではありません)。家庭の事情で出発直前まで参加が危ぶまれていましたが何とか参加可能となりました。

宿泊先はダラスの東側に隣接するメスキート(Mesquite)という街です。この街自体が皆既食帯に含まれるので、この宿の敷地内で日食を観ました。皆既食帯のど真ん中ではありませんが、それでも皆既時間が4分1秒あります。

Googleマップより

出発!

名古屋市内に住むAを車でピックアップして4/6の昼過ぎ、中部国際空港に車で到着。そこからまずは成田へ。そして18:30、アメリカン航空のダラス直行便が離陸しました。この便はアメリカ・ウェーコやメキシコ・マサトラン、トレオンで日食観望するツアー客も乗っていてほぼ満席でした。

メスキート到着

約12時間のフライトを経て予定通りダラスに到着。日付変更線をまたいでいるので、現地時間は出発と同日4/6の16時頃です。入管ゲートはたいへんな混雑で通過に小一時間かかりました。ここからタクシーを使ってメスキートへ移動。レンタカーを借りようか迷いましたが、宿泊先に着いてしまえばほとんど移動しないのと、通行帯が日本と逆で運転リスクがあるのでタクシーを選びました。

宿泊先。見た目はきれいだが施設はかなり古い。

宿泊先はホテルというより、アメリカ映画によく出てくる「モーテル」です。サマータイムのせいで19時を過ぎてもちっとも暗くありません。このすぐ近くにあるタコスの店で晩御飯のハンバーガーを食べました。

日本の倍ぐらいのボリュームのハンバーガー&大量のフライドポテト(完食不能)

店内にはスナックや飲み物も売っていたので、翌日の朝ご飯用にパンや水も買っていきました。

大事件発生!

翌日の4/7(旅程2日目)午前10時頃、いきなり大変なことが起きました。

宿泊した部屋の扉

モーテル周りの景色を撮ろうとコンデジとスマホだけを持って部屋を出、15分ほどして3階の自分の部屋の前に戻ると、扉が少し開いていることに気づきました。元々この扉のオートロックは調子が悪く、カードを差し込んでもなかなか開かなかったり、閉めるときもドアをしっかり手前に引かないとロックがかからなかったりしました。

「あれ?しっかり閉めたつもりだったけど??」と思いつつ部屋の中に入って驚きました。外出前に組み立てたばかりの望遠鏡機材一式がこつ然と消えています。

盗難にあった機材。出発前に撮影した画像

落ち着いて室内を見回すと、床に置いてあったカメラバッグもありません。この中にはミラーレス一眼レフカメラが入っていました。そして一番ショックだったのが、パスポートやクレジットカード、現金の入っていた手持ちバッグが無くなっていたことです。私が外出していた短い時間に誰かが侵入し、金目の物をすべて奪っていきました。しかし部屋全体は荒らされた感じがありません。短い時間に効率よく金品だけを持ち出した手際の良さに驚きました。

しかし驚いている場合ではありません。私と異なる部屋でこの難を免れたAに電話をかけ、すぐに部屋に来てもらいました。Aも大変驚きました。「どうしよう?」「まずはフロントに行こう」ということで、フロントに行って状況を伝えると、フロント職員はそれほど驚いた感じもなく、従業員を一人呼んで、私と一緒に現場を確認するよう指示しました。私の室内も含めて施設内を一通り見回りましたが、有力な手がかりはありませんでした。

OFFICE=フロント

警察も呼んでほしいとフロントに頼みましたが「自分で呼んでください」とのこと。このあたりからこのモーテルへの違和感が高まってきました。こちらにとっては生涯の一大事ですが、あちらにとってはまるで「よくあること」、「当方は関係ない」といった風情です。

自分のスマホから’911’に電話をかけ、カタコトの英語で場所を伝えると、30分ほどで警官が現れました。私の名前、電話番号、盗まれたもの、などをメモると無線でどこかに連絡を取り、8桁の番号を書いたメモをくれました。事件番号だそうです。警官の対応はそれだけでした。近隣の部屋の聞き込みをするでもなく、現場の写真を撮るでもなく、まして指紋採取の鑑識班を呼ぶこともありません。おそらく彼らにとっても「よくあること」で、事情聴取して事件番号を伝えたら業務完了。いちいち捜査してたら仕事が回らないのでしょう。

問題はパスポート

盗られたものが戻ってくる可能性は限りなくゼロ。諦めるしかありません。しかしパスポートだけは困ります。これがないと帰国できません。ネットで調べてみると、アメリカ国内にある総領事館に出向いて再発行してもらわなければいけません。ダラスから最も近い総領事館は在ヒューストン日本国総領事館。ダラスから約400キロ離れています。ずいぶん距離がありますが、これでもまだ近い方です。アメリカ本土の日本国総領事館は全部で13箇所。各州に1箇所ずつあるわけではないので、運が悪ければ州を超える移動が必要です。

発行してもらえるパスポートは2種類。持っていたのと同等のパスポートと、帰国専用のパスポートです。前者は6日間ぐらい、後者は2日間ぐらい発行に時間がかかるとHPにありました。もちろん帰国専用で十分ですが、それにしても2日間かかるので、明日(4/8)の皆既日食を待たずにヒューストンへ移動しないと帰りの便に間に合いません。あるいは帰りの便をキャンセルして別便で帰国するか。この場合飛行機代がまったく戻ってきません。気持ちは半分皆既日食を諦める方向に行きかけましたが、ここで引き戻してくれたのはAでした。「せっかくここまで来たんだからもう少し粘ろうよ。少なくともヒューストンまでは付き合うから」と。

またAは現金で$500貸してくれました。クレジットカードも無いので、現金が無いとパン一つ買うことができません。

気を取り直して在ヒューストン日本国総領事館に直接電話して確認したところ、必要書類がそろっていれば1日で再発行可能とのこと。戸籍謄本とかマイナカードの写しは日本にいる家族に頼んでLINEで送ってもらい、その都度総領事館にメールで送りました。皆既日食翌日の9日早朝便でヒューストンに移動すれば朝イチで総領事館に入ることができ、その日のうちに帰国専用パスポートを手に入れることができそうです。光が見えてきました。

やはり怪しいモーテル

諸々の段取りを済ませたころに日が暮れ、歩いていける距離のレストランでAと夕飯を済ませました。いろんなことがぎゅっと詰まった怒涛の一日でした。部屋に戻って今日あった出来事を思い返すと、このモーテルがいかに危険であるかに気づきます。敷地内はいうに及ばず、各フロアは誰でも入れます。実際モーテル内ですれ違う人の半分は「近所の人?あるいは住人?」と思われる風体です。HPの案内には「ペット連れの宿泊お断り」とありましたが、ペット連れを何回も見ました。フロントにはいつ行っても正体不明の人が床に座り込んでぼおっとしていました。もちろんセキュリティカメラはありません。悪い人にとってはやりたい放題の環境です。

窃盗犯について

勝手な推測ですが、窃盗犯はここに頻繁に出入りする人間、もっといえば同じフロアの『住人』で、扉の立て付けが悪いことを熟知していて、オートロックが不完全になる機会を見計らっていたと思われます。しかも犯人は複数で、見張りをつけていたのではないでしょうか。つまり極めて計画的な常習犯というわけです。さらにいえばモーテルだってグルの可能性があります。従業員はどの部屋も開けられるカードキーを持っているので、出入りは自由です。私の落ち度は外出時、パスポートの入ったカバンを持ち出さなかったこと。これさえ心がけていれば最悪の事態を招くことはありませんでした。今となっては悔やんでも悔やみきれません。

建付けの悪いオートロックドア

また考えようによっては「窃盗」で済んでよかったです。万が一現場に出くわしたら殺されていたかもしれません。そう思うとぞっとします。この晩はあれこれいろんなことが頭に浮かびなかなか眠れませんでした。深夜になっても部屋の前を通る人の気配が絶えず、駐車場からも話し声が聞こえます。ついでに言えば部屋の中で小さいゴキブリが出ました。どんどん気持ちが萎えていきます。予定ではここでもう一泊するつもりですがとても耐えられそうにありません。

そして皆既日食当日!

ほとんど眠れないまま夜が明け、朝になってAが私の部屋に来てくれました。「このモーテルを引き払って今日のうちにダラス市内中心部のホテルへ移動しないか?」と切り出すと「実は俺もそう思っていた」と意見が一致。第3接触が終わったら早々に撤収してこのモーテルを出ることに決めました。

お昼前、外を見るとそこそこ雲はあるものの、ある程度期待できそうな空。第1接触は12時過ぎなので、その前に腹ごしらえをしておこうと、一日目の夕飯を食べたタコスの店に出かけることにしました。するとモーテル敷地内の芝生エリアに望遠鏡を設置している20名ぐらいの中華系の団体を発見。話しかけてみると台湾から来たとのこと、昨晩駐車場で見かけた大型バスでこのモーテルに来たようです。お願いして一緒に観望させてもらうことにしました。

モーテルの敷地内で日食観望

実は盗まれたものとまったく同じ構成の機材をAに渡してありました。貴重な皆既時間を無駄にしないようそれぞれの機材で観望に専念しようという狙いです。しかしこういう状況になってしまったので、1台の機材をふたりでシェアしながら見ることにしました。

芝生に設置した日食観望機材

12:23、いよいよ第1接触です。タイムキーパーはスマホアプリの’ECLIPSE 2.0’を使いました。

ECLIPSE 2.0の起動画面

雲は多めですがときどき太陽が顔を出し、その都度ソーラーフィルターを付けた望遠鏡で欠けていく様を観望しました。第1接触から皆既が始まる第2接触まで1時間17分ありましたが、時間の進みは意外と速く、あっという間に第2接触の時刻が近づいてきました。食分が90%を超えると周りははっきりと暗くなり、まるで日没後の光の加減です。そして日没を早回しで見ているようにどんどん暗くなっていきます。何というワクワク感!

スマホによるコリメート撮影

そして第2接触!

13:40:57、ついに皆既が始まりました。とてもラッキーなことに、皆既中の太陽が雲と雲の大きな切れ目に入りました。ダイヤモンドリングがばっちり見えました。フィルターを外した望遠鏡で見るとコロナの流線がよく分かります。コロナがこんなに明るいとは知りませんでした。写真では味わえないコロナの輝きです。月の影からはみ出た真紅のプロミネンスがいくつも見えました。肉眼で見ても、天空に浮かんだ黒い穴から全周に渡って光が溢れ出し、神々しいまでの光景です。はじめての日食観測でいきなり観測成功!なんという幸運!昨日の嫌な出来事を差っ引いても来てよかったと思いました。

あっという間の4分間でした。13:44:58、数秒間ダイヤモンドリングを我々に見せて太陽は再び本来の光を取り戻し始めました。思わず拍手をすると、同じように拍手をする台湾の人たちが何人もいました。

このまま第4接触まで見届けて余韻を楽しみたいところですが、そんな余裕はありません。部屋に戻って出発の準備にかかりました。

まずはダラス空港へ

来たときと同じようにダラス空港へ戻るときもタクシーを使いました。タクシーを呼んでからモーテルに迎えに来るまで小一時間待たされました。空港に着くとすでにチケットカウンターは多くの客でごった返していました。

ここでひとつ心配なことがありました。明日早朝出発するヒューストン行きの飛行機チケットを買うつもりでここへ来ましたが、総領事館の方から「アメリカ国内線といえどもパスポートがないと乗れないかもしれない」と言われていました。

そしてその心配は現実のものとなりました。長い列を我慢してチケットカウンターまでたどり着いて空港職員にこの点を確認すると、「私ではわからない」と言ってTSA(Transportation Security Administration アメリカ運輸保安局)の担当者を呼んでくれました。この人たちがOKといえば飛行機に乗れるし、NOだったら乗れないことになる空港関所の番人です。このTSAの担当者も”Mmmmm”と言って難しい顔になり、審査には最低でも2時間かかる、その結果搭乗を拒絶する場合もあるとのことでした。

飛行機に乗れさえすればヒューストンまで1時間ぐらいなので、早朝のフライトでヒューストン入りすれば朝イチで総領事館に行けます。これが予定の飛行機で帰国するためのシナリオです。しかし今から審査を受け、しかも乗れないとなると、その予定はかなり危ういものになります。

あらためてGoogleマップで確認すると、ダラスからヒューストンまで車で4時間と出ました。それなりの距離ですがこれが最も確実な方法です。運転リスクはありますが、Aも私も一応海外免許を持ってきているので車の運転は可能です。私の海外免許は別の荷物と一緒にしてあったので奇跡的に無事でした。「4時間なら頑張れば行けるかなぁ」とAと相談して車で行く覚悟を決めました。

レンタカーでヒューストンへ

なんだかんだでいろいろな手続きにずいぶん時間がかかり、レンタカーでダラス空港を出たのは夜の8時頃でした。Aは20年ほど前、仕事の関係でアメリカに2年間いたので一応右側通行、左ハンドルの経験があります。ずいぶんブランクはありますが、ド素人の私よりはましなので、まずはAの運転でフリーウェイに入りました。

私も途中替わって運転をしてみて分かったのですが、慣れない左ハンドルでレーンの真ん中を走るのはとても難しいです。右ハンドルの感覚でレーンの真ん中をキープしようとすると、実際にはずいぶん右に寄っていて、Aも私も、気がついたら右側の白線を踏んでいました。しかも雨で路面が濡れていてレーンが見づらく、かなり怖い思いをしてなんとかヒューストンにたどり着きました。時刻はすでに夜中の1時を回っていました。

先に総領事館のあるビルの位置を確認し、それから宿泊先を探すことにしました。このエリアにはホテルがたくさんあり、一軒目は「満室」と断られましたが、二軒目のホテルでダブルの部屋を確保することができました。

ヒューストンで一泊したホテル。天文ファンにとっては意味深な名前

フロアには宿泊客しか立ち入れず、オートロックもスムーズに閉まる、当たり前のことに感激しつつ、短い時間ながらも久しぶりによく眠れました。

在ヒューストン日本国総領事館

総領事館が開くのは朝の9時半。それまでに証明写真を用意しなければいけません。少し早めに私だけチェックアウトして、Googleマップで探した証明写真を撮ってくれるショップに向かいました。ここは日本のような無人のボックスではなく、店員が撮影するスタイルでした。

総領事館は商業ビルの30階にありました。それほど大きくありません。入口に空港の保安のような荷物検査と金属探知ゲートがありましたが、それ以外は日本によくある「小さい役所の窓口」といった感じです。いずれにしてもパスポートを盗られるようなトラブルがなければ縁のない場所です。

前もって来訪は伝えてあったので、名前を告げるとすぐに職員の方が親切に対応してくれました。ここでしか書けない書類を2枚、時間をかけて記入してから提出すると「これですべての書類が揃いました。午後3時頃帰国専用パスポートを渡しますから、その時間になったらまた来てください」とのことでした。「ついに帰れる!」ここまでの緊張が一気に解ける瞬間でした。

11時頃、ホテルで寝ているAに連絡を取り、再びAと合流。「アメリカでまともな食事ができるのはたぶんこれが最後。豪勢に行こか」と、ヒューストン市内にあるBenihana(ベニハナ)というアメリカでは有名なステーキハウスに行きました。

ラテン系の女性が愛嬌たっぷりに肉や野菜を焼いてくれました

その後3時まで商業ビル内のスタバで時間を潰し、再び30階の総領事館を訪れてついに帰国専用パスポートを受け取ることができました!ヒューストンまで来た努力が実りました。

これが帰国専用パスポート

帰国便のフライトは明朝6時出発。それまでにダラスに戻ればよいので楽勝です。それでも万が一のことを考えて、この日のうちにダラスに戻ることにしました。

帰路はまだ明るく、雨も上がっていたので来るときよりも運転がずいぶん楽でした。レーンキープもずいぶん慣れてきました。当然ながら周りの車もほとんどがアメ車。やんちゃな人に囲まれているような錯覚を覚えながらの運転でした。

途中給油もしました。ここで少しハプニング。給油口の開け方が分かりません。Aと二人で15分ほど運転席周りをくまなく探しましたが、それらしいレバーが見つかりません。ダメ元でガソリンスタンドの店員にも聞きましたがやはり分からず。もしやと思ってGoogleで「シボレー 給油口」と検索したら「レバーはない、直接開ける」とありました。「えっ?」と思って給油口の端を押したらあっさり開きました。いたずらされたらどうするんだろうと思う仕様でしたが、とりあえず開いてよかったです。

借りたクルマはシボレー

そんなこんなんで夜の10時近くにダラス空港へ無事到着。レンタカーを返して空港ロビーに入りました。もう大丈夫。あとは飛行機に乗るだけです。空港ロビーの空いている席で仮眠しながら夜を明かしました。

ついに帰宅!

4/10早朝6時、ダラス空港を帰国便が離陸。ロサンゼルス、羽田を経由して4/11の21時頃中部国際空港に着きました。本来ならここに止めてある車で帰るところですが、今回車のキーも盗られているので電車で帰宅しました(車は翌日電車で中部国際空港まで取りに行きました)。荷物の軽さが虚しかったです。

ロサンゼルス空港にて

この数日を振り返ると、よくぞ無事予定通り帰ってこられたものです。すべてが紙一重でした。
もしも殺されていたら、
もしもAがいなかったら(実際その可能性はありました)、
もしも日本に家族や知人がいなかったら、
もしもスマホまで盗られていたら、
もしも総領事館がとてつもなく遠かったら、
もしもヒューストン往復で事故っていたら、
もしもダラス観光日を設けてなかったら(その日をダラス往復に充てました)、、、
今だ帰国できずにいたかもしれません。最悪の事態が発生したにも関わらずその後はツイてました。またヒューストン往復まで付き合ってくれてAには感謝のことばしかありません。

おわりに

ここまで読んでいただきありがとうございました。日食の話よりパスポートを盗られた話がほとんどで申し訳ありません。パスポートを盗られるとどんなに大変か、今回のことでよく分かりました。そのことでAをはじめ、多くの人に迷惑をかけてしまいました。本当に申し訳なく思っています。

この話は武勇伝でもなんでも無く、治安の良い日本と同じ感覚で外国に出かけるとどういう目に合うかという見本のような話です。

「次回外国へ行くときは気をつけます」と言いたいところですが、当分(あるいは一生)外国へ行く気になれません。平和ボケしている私にとって滞在中ずっと気を張ることは強いストレスになるからです。

幸い1回目にして皆既日食を見ることができました。一昨年はオーストラリアで星も見ました。今回が最後の海外ツアーとなっても悔いはありません。

臨時休業のお知らせ

4/6(土)~4/11(木)の間、皆既日食遠征のため休業いたします。ご迷惑をおかけしますがどうかよろしくお願いします。

臨時休業期間中にいただいたメールは帰国後返信させていただきます。

本文とは関係ありません。昨年撮影した高遠の桜です。

2024日食遠征機材

意外に思われるかもしれませんが、今まで皆既日食を見たことがありません。星仲間はもっと若いうちに海外遠征を行って体験しているのですが、私の場合、1週間の休み(海外遠征の場合この日数はミニマム)を取る勇気がなく、会社生活している間は行かずじまいでした。

しかし会社生活も終わり、コロナも収束したので障害がありません。今年4/8の北アメリカ大陸・皆既日食を見に行くことにしました。観望地はアメリカ・ダラス近郊です。

「見に行こう!」と思い立ったのは昨年の9月頃。当初ツアーに申し込もうと思ったのですが、資料を取り寄せて、その費用にビビりました。思っていた金額の1.5倍ぐらいです。ただし「ツアー」となるとどれも似たような金額。これが相場なんでしょうね。自力で行くことにしました。

幸い今回の皆既日食帯にアメリカの大都市ダラスが含まれているので、その近郊に宿を取ることができました。本当は皆既中心に近い街のホテルを取りたかったのですが、私が探し出した時期はもう手遅れ。それらしいホテルはほぼ満室でした。ときどき空室がありましたが、宿泊代が通常の10倍ぐらいになっていて、とても手が出ませんでした。私が予約したホテルは中心ではありませんが、それでも皆既の時間が4分ちょうどぐらいあるのでよしとしました。

今回の遠征の目的は「皆既日食の体験」なので、持っていくのは観望用の小口径望遠鏡だけです。日食撮影用の機材は一切ありません(そもそもそのノウハウもスキルもありません(笑))。下の写真は持っていく予定の機材です。

鏡筒 ビノテクノ製BINOTECHNO-60SED
正立ミラー ビノテクノ製EZM
アイピース ハイペリオンMARK4 8-24mmズーム
ソーラーフィルター 笠井トレーディング SF-100-3
架台 笠井トレーディング Kasai-AZ-Palm
三脚 Leofotoカーボン三脚 LS-324C

ちなみにアリガタ金具は軽量加工済みの特注品です。アリミゾ金具は試作中のビノテクノオリジナル品です。

生まれてはじめての皆既日食ツアー、晴れてほしいものです。

特価販売更新しました

新年あけましておめでとうございます。

さっそくですが、特価販売のコーナーを更新しました。概要は以下の通りです。

・ BLANCA-90SDTビノ(ビノテクノ)を大幅に値下げました。
・ BLANCA-80SED鏡筒(笠井トレーディング)を追加しました。

今年もみなさんに、観望を楽しんでいただける機材を提供していきたいと思っています。どうかよろしくお願いします。