低倍率が得意な双眼望遠鏡

20倍から30倍は、屈折式双眼望遠鏡のもっとも得意とする倍率です。

単眼の望遠鏡に組み合わせて使用する双眼装置は、リレーレンズを必要とするので主鏡の合成焦点距離が長くなり、この倍率が出せません。さらに言うと、2インチサイズのアイピースが使える双眼装置は今のところ市販されていません。また、ニュートンやカセグレンのように中央遮蔽のある鏡筒に長焦点アイピースを組み合わせると、副鏡の影が見えて不快です。

この倍率での観望は双眼望遠鏡の独断場です。

見かけ視野60度以上のアイピースを使えば実視野は2度以上、二重星団、M42、M31、プレアデスの全体が見渡せます。星雲星団にこだわらなくても、天の川の濃い部分に双眼望遠鏡を向ければ、手持ち双眼鏡より集光力があるため、微光星がびっしり見えて星の多さに驚きます。頭から暗幕をかぶって完全に外の光をシャットアウトすれば、まさに気分は宇宙遊泳です。

手持ち双眼鏡の観望が好きな人はきっとこの倍率が好きになります。

双眼望遠鏡観望の必須アイテム

人間は立っているとき、頭を長時間静止させることができません。理由はよくわかりませんが、人間の身体はそのようにできているようです。このことが、立ったままの長時間観望を困難にしています。アイピースに対して目の位置が固定できないからです。

ところが、座ったり、片手で何かにつかまったりすると上半身が固定され、長時間観望が可能になります。

うまい具合に屈折式双眼望遠鏡のアイピースは低い位置にあるため、椅子に座って観望することができます。椅子に座る効果は絶大で、同じ対象を快適に見続けることができます。パッと目には見えなかった微光星や星雲の形が、じっくり見ることでじわじわと浮かび上がってきます。さらに言えば、一晩中観望していても、足腰の疲れを感じません。もちろん目は疲れますが(笑)。

使う椅子は、座る高さを変えられるタイプが好ましいです。移動観測で使う場合、折りたためることも条件です。具体的には、国際光器のエコノミー観測チェアやルネセイコウのワーキングチェア(Amazonで購入可能、各種あり)などがあります。望遠鏡が天頂を向くとアイピースの位置はかなり低くなるので、なるべく低い位置まで座面が下げられるタイプがお勧めです。

 

クレードルのあたりまえ

クレードル(鏡筒連結部)は、双眼望遠鏡を構成するシステムの中で、EZMと同じぐらい重要なパーツです。特に目幅調整機構を有するクレードルは、その完成度が観望時の操作性に大きな影響を及ぼします。

目幅調整時にクランプ(固定)、アンクランプ(解除)の操作が必要であったり、目幅調整時に左右の像の一致が崩れたりするのは、煩雑で不快です。ひとりで見ているならこの操作も一晩に一度きりですが、観望会などで仲間にも見せようとすると(映像が楽しいのでつい見せたくなります!)、

「ちょっと待ってね、ここを解除して、このハンドルを回して、、、どう?目幅合う?」

「うーん、合ってるのか合ってないのか、、、左右の像がずれてるから合ってない?ハンドルから手を放すと合う。。。うーん、まあこんなもんかな。固定するのはどこだっけ?」

といったことが頻繁に起こります。クレードルの完成度が高ければ、本来しなくていい苦労です。

「双眼望遠鏡って、ちゃんと合えば楽しいけど、合わせるのが大変」「難しい」「割と面倒くさい」という声を時どき聞きますが、その原因のほとんどはクレードルの完成度にあります。

ビノテクノ製クレードルは、目幅調整時も左右の平行がずれないよう、十分な剛性と精度が確保されています。固定/解除操作も不要です。はじめて操作される方でも安心して使えます。貴重な観望時間をつまらない作業で浪費してほしくないと、ビノテクノは願っています。

日本の空が暗くなった?

あまり実感はありませんが、日経ビジネス9月25日号によると、日本の夜の明かりは減少傾向にあるそうです。ただしその理由は国民の省エネ意識の向上ではなく、夜の経済の衰退だそうです。人口減少、高齢化、健康志向、SNSの普及などで夜遊びする日本人が減ってしまったため、夜の歓楽街はじり貧、24時間営業だったお店も深夜は閉店するようになりました。

空が暗くなるのは天文ファンにとって喜ばしい傾向ですが、夜の経済の衰退は、回りまわって昼の経済にも影響するそうです。手放しで喜んでいいものか、微妙です。

双眼望遠鏡に適した鏡筒

口径

移動観測に使うなら9センチから12センチぐらいがお勧めです。

これより小さい口径は鏡筒単価が安いため、EZMとクレードルの費用(合わせて30万円弱)に割高感が出てしまいます。ただしそこに目をつぶるなら、6~8センチの双眼望遠鏡もおもしろいです。

一方13センチ以上のアポクロマートは鏡筒が重いため移動観測が大変です。架台もほとんど特注になります。

レンズの種類

アポクロマートがお勧めです。低倍率では針で突いたような気持ちの良い星像を見せてくれます。よい架台を使えば中倍率、高倍率も楽しめます。

アポクロマートの中でも2枚玉と3枚玉があります。もちろん3枚玉の方が高級品ですが、多くは写真性能を意識したモデルで、眼視用にはオーバースペック気味です。さらにいうと、レンズセルが大きいため、2本並べたときのピッチが大きくなり、より長いバックフォーカスが必要になります。重さも2枚玉の1.5倍ぐらいあります。もちろんこれらの問題がクリアできるなら、3枚玉は最高級の双眼望遠鏡になります。逆に言えば、2枚玉モデルは双眼望遠鏡用の鏡筒として、コストパフォーマンスに優れています。

低倍率専用と割り切るなら、15センチクラスのアクロマートも面白いです。口径が大きくても意外と軽量で市販の架台が使えます。口径が大きいので暗い天体の観望に有利です。

バックフォーカス

10センチクラスまでなら160mm以上欲しいです。ところがこれだけのバックフォーカスが確保されているモデルは、どちらかといえば少数派です。メーカーカタログにこの数値が明記されていない場合も多いです。お客様からご要望があれば、ビノテクノからメーカーへ問い合わせをいたします。

バックフォーカスが足らない場合、鏡筒を切断する方法もありますが、望遠鏡メーカーは基本的に対応しません。また、望遠鏡メーカー以外で切断加工した場合、メーカーの保証対象外となります。光学性能の保証も含めた切断加工可能の業者がいないので、ビノテクノでは切断加工はお断りしています。

接眼部

ラックピニオンまたはクレイフォードタイプがお勧めです。ただし安っぽいものはだめです。

ヘリコイドはEZMの自重で発生するトルクで操作が重くなるのでお勧めしません。

ビノテクノのおすすめ鏡筒

ビノテクノで製作可能なお勧め鏡筒は次の通りです。(バックフォーカス確認済み)

・ Capri102ED(笠井トレーディング)

・ Blanca102SED(笠井トレーディング)

・ FC-100DL(タカハシ)

双眼望遠鏡のあるべき姿

昭和30年代に運転免許を取得した父によると、当時学科試験に『構造』という科目があったそうです。自動車のエンジンや変速機、ブレーキなどの知識を指します。私が取得した昭和50年代にはすでにこの学科はなくなっており、構造科目で苦しんだ父からうらやましがられました。

この科目がなくなった理由は、自動車という製品が進化したからにほかなりません。昭和30年代はまだ自動車の品質が低かったため、ユーザーに構造の知識は必須でした。多少の不具合は自分で直せないと使えない製品でした。逆に言えば、ユーザーの構造理解が前提の製品でした。

もちろん今の自動車は違います。構造を知らなくても操作はできます。もちろん構造の知識はあって邪魔にはなりません。でも必須ではありません。ユーザーが覚えるべきは正しい操作です。

これを双眼望遠鏡に照らせばどうでしょう?

ユーザーの原理・構造理解が前提になっているなら、双眼望遠鏡という製品はまだまだ進化の余地があります。大半のユーザーは原理・構造を理解したいのではなく、両目による観望を楽しみたいだけです。

目幅調整と、視野一致のためのX-Y微調整の方法さえ習得すれば、あとは普通の望遠鏡と同じように使える、これがビノテクノが目指す双眼望遠鏡のあるべき姿です。