今年の星まつりの出店予定

今年は各地の星まつりがリアル開催されるので、ビノテクノは以下の2つの星まつりに出店する予定です。

8/26(金)-28(日) 胎内星まつり(新潟)

9/18(日)-19(月祝) 星をもとめて(京都)

当日は双眼望遠鏡のデモ機を展示いたします。実物を覗く機会は少ないと思いますのでぜひお越しいただいて、双眼の醍醐味を体感してください。

その他処分品やジャンク品も若干用意いたします。

みなさんと直接お会いできることを楽しみにしています。

2018年胎内星まつりの夕方風景

タカハシFOA-60Qビノ

タカハシ製FOA-60Q鏡筒を使った双眼望遠鏡です。

鏡筒中ほどの黒い継ぎ目からアイピース側がエクステンダー1.7XR

FOA-60Qは、口径60mmF8.8のFOA-60鏡筒にエクステンダー1.7XRを標準付属してF15とした鏡筒です。

EZMは通常の2インチバレル差し込みではなく、特注の光路短縮アダプターで取り付けてあります。FOA-60Qの状態で使う場合バックフォーカスに余裕があるのでこの処置は不要ですが、FOA-60の状態でも見たいというオーナー様のご希望でこの仕様にしました。この取付を採用したおかげで、ピント位置の苦しいイーソス17mm(テレビューアイピースデータによると絞り環位置はin側9.9mm)でもFOA-60でピントが出ます。

クレードルは弊社製CRDL-105をベースに、鏡筒バンドの部品だけ特注製作して対応しました。架台に取り付けるためのアリガタ金具はMORE BLUE製自在アリガタです(オーナー様のご希望)。

小笠原で星を見てきました -8(最終回):またいつか

島内の施設も回ったのでいくつか紹介しておきます。

まずは泊まったペンションのすぐ裏手にあった小笠原世界遺産センター。2011年に世界遺産登録されたことを記念して2016年に建てられた施設です。

小笠原世界遺産センター入り口

そしてこちらはおが丸停泊港のすぐそばにある小笠原ビジターセンター。展示内容は先述の小笠原世界遺産センターと重複している部分もありますが、こちらの方が充実かつ網羅されているように感じました。

小笠原ビジターセンター入り口
小笠原ビジターセンターすぐ横のビーチ

小笠原ビジターセンターから車で5分もかからない場所にあるのが小笠原水産センター。ここは小さな水族館です。海に潜ったときは見つけられなかったのですが、ダイバーに人気のあるユウゼンという魚もいました。

小笠原水産センターの敷地内

そしてこちらは小笠原海洋センターです。小笠原海洋センターから車でさらに5分ぐらいです。海洋生物、特にウミガメの研究と展示を行っています。

小笠原海洋センター入り口
小笠原海洋センターすぐ横の海岸

次に買物情報です。父島にコンビニはありません。島内で一番大きいスーパーは下の写真の生協です。店内はスーパーとドラッグストアとホームセンターがミックスされた感じの品揃えです。おが丸入港日は商品が入荷する日でもあるので、その日の夕方店内に入ったらレジに長蛇の列ができていました。並んでいたのは島内の宿泊業の方たちと思われます。

その向かいにももう1軒スーパーがあります。どちらもおが丸停泊港のすぐ横を通る湾岸通りに面しています。そんなに遅くまでやっていません。

それでは困るという人たち御用達のお店もあります。湾岸通りから少し路地に入ったところにある佐藤商店は夜10時まで営業しているそうです。ツアーガイドさんによると、夜おつまみを買い足したいときに重宝するそうです。

この写真を撮ったのは夜中の1時過ぎ。さすがに閉店していました。

食べ物の名物はそれほど多くありませんが、島寿司はいくつかのお店で看板を見かけました。これはサワラの醤油漬け(いわゆるヅケ)を使ったお寿司です。泊まったペンションでも一度夕飯で出ました。さっぱりした味で食べやすいお寿司でした。

中央のオレンジ色の6貫が島寿司。その右のマグロの刺身も美味でした。

それ以外にはハートロックカフェというお店でカメの肉を使った亀煮丼も食べました。カメのいろんな部位が入っているようで見た目が少しグロいのですが、塩ダレのようなもので味付けされていて臭みもなく美味でした。

ハートロックカフェの亀煮丼

この丼を食べ終わったのが最終日(おが丸に乗って帰る日)の午後1時頃でした。出航までまだ2時間ほどありますが、この時間になると湾岸通り沿いの飲食店は一斉に閉店します。もたもたしていると食べそびれるので注意が必要です。

さて、いよいよ帰るときが迫ってきました。

船に乗り込み右舷側のデッキに出ると、岸壁では地元の人たちによる見送りのセレモニーが行われています。宿の従業員さんやツアーガイドさんと思われる人たちが大勢集まって船に手を降ってくれました。

岸壁では見送り太鼓が叩かれていました

小笠原では見送りのことばは「さようなら」ではなく、「また来てね」の気持ちを込めて「いってらっしゃい」だそうです。実際小笠原に来る観光客の半分以上はリピーターさんと言われています。その気持はよくわかります。

午後3時、出航を告げる銅鑼の音が響いていよいよおが丸が桟橋から離岸します。

桟橋付近ですらこの海の色!

見送りのパフォーマンスはこれで終わりではありません。出航したおが丸の右側を、父島のツアーに使っているボートが10隻以上並走し、乗っている人たちがこちらに手を降ってくれます。最後は順次ボートを止め、一斉のせいで海に飛び込んで、見送りの気持ちを私たちに伝えてくれました。おが丸に乗っている私たちも手を降ってこれに応えました。

一斉に海に飛び込む瞬間

並走していたボートからの飛び込みセレモニーが一通り終わると、最後尾にいた海上保安庁の高速ボートがすべてのボートを一気に追い越してからUターン。見送りのセレモニーがすべて終わったことを無言のうちに伝えていました。

高揚感と喪失感を抱きながら船室に戻り、しばしベッドでゴロゴロ。その後日没を見に屋外デッキに出ましたが、グリーンフラッシュは見えませんでした。

22時前、再び屋外デッキに出ました。22時を過ぎると出られなくなるのでその前に夜空の見納めです。そこそこ晴れていて、さそり座、いて座、夏の大三角、そしてうっすらと天の川が見えていました。帰りは船尾側が南になるのでこの景色が見られます。

そして爆睡。かろうじて日の出前に目が覚めて屋外デッキへ出るも空は雲だらけ。グリーンフラッシュは早々に諦めて再びベッドへ。行きに見えたことはやはり超ラッキーと言う他ありません。

昼過ぎ、おが丸は房総半島沖を通過。海の色がどんどんどす黒くなってきました。スマホの電波も受信可能になってゆっくりと現実の世界に戻っていきます。

15時。予定通り竹芝客船ターミナルに到着。船を降りてJR山手線に乗ると、周りは平日の日常風景。濃密な6日間の旅が終わったことを実感しました。

最後に旅の費用ですが、海のアクティビティ代も含めてざっと20万円といったところです(船室のランクを落とせばさらに節約可能)。国内旅行としては高いかもしれませんが、海外旅行と思えばそれほどでもありません。

同様に、6日間という日数も国内旅行としては長いのですが、海外旅行と思えば普通です。むしろ日本語が通じて治安がよく、ビザもパスポートも要らない海外旅行と思えばお値打ちです。

長くなりましたが以上で小笠原ツアーのブログは終了です。帰ってくると何かを語らずにはいられない魅力が、小笠原には満ち溢れていました。いつかまた機会をみつけて行ってみたいと強く願っています。みなさんもぜひどうぞ。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

小笠原で星を見てきました -7:海のアクティビティ

小笠原を訪れる観光客のお目当ては9割以上海のアクティビティです。スキューバダイビング、スノーケリング、シーカヤック、ウェイクボード、釣り、などなど。ただしサーフィンは見かけませんでした。ビーチの波がそれほど高くないのと、海底のほとんどがサンゴ礁なので向かないのだと思います。

今回のツアーでは欲張って、私もスノーケリングとスキューバダイビングに挑戦しました(どちらも初体験!)。

スノーケリングレッスン(到着1日目午後)

海に入るのはおよそ35年ぶりです。

父島ではスノーケリングやスキューバのツアーがたくさんあります。ただしほとんどが経験者向けです。あるツアーに問い合わせたときは「45歳以上の未経験者はちょっと、、、」という回答でした。惜しくも何ともない年齢制限です(笑)。それでも探したら見つかったのは、小笠原エコツーリズムリゾート(TAKE NATURE ACADEMY)のツアーでした。体力や経験に応じていくつかのメニューが用意されています。まず最初に参加したのが、父島到着日の午後のみ開催のスノーケリングレッスンでした。

スノーケリング3点セット(スノーケル、ゴーグル、フィン)やウェットスーツは事前に予約しておけば貸してくれます(有料)。ゴーグルは度付きのものを借りました。

レッスンではゴーグルの正しい付け方、ゴーグルに水が入ったときの出し方、スノーケルに水が入ったときの出し方、フィン(足ひれ)を付けての泳ぎ方などを学びます。

ウェットスーツは浮力があるので溺れる心配はありません。若いときに平泳ぎができる程度だったのですが(25メートルレベル)、フィンを付けて学んだ通りに足を動かすとあら不思議、ちゃんと前に進みます。岸から20メートルほど離れるとすでに足がつかない深さ。身体をうつ伏せの水平に保ってゴーグル越しに海の底を見るとサンゴ礁が見えます。ちょっと感動しました。

スノーケリングレッスンを受けた宮之浜。遠くに見える山は父島の北にある無人島の兄島。

さらに沖の海面でチャプチャプ30分ほど遊んでいたらガイドさんから「そろそろ岸に上がりますね」の声。そのときになって両足がつり気味になってきました。ふだん運動らしい運動をしていないので、ちょっとの負荷でこんなはめに陥ります。ウェットスーツがあるので溺れる心配はありませんが「服部さん、大丈夫ですか?」の呼びかけに「足がつりました」と正直に応えたら、2人の若い女性ガイドが私の両脇を抱えて岸まで連れて行ってくれました。情けない気持ちを抱えつつスノーケリングレッスン終了です。

南島上陸(2日目午前&午後)

同じくの小笠原エコツーリズムリゾート(TAKE NATURE ACADEMY)の南島上陸ツアーに参加しました。

南島は父島の南西にある小さな無人島です。島全体が天然記念物に指定され、一日の上陸者数は100人以下、滞在時間は2時間以内に制限されています。

朝8時半、おが丸が停泊する港の近くに集合。参加者は20名程度。2隻のボートに分乗してさっそく南島に向かいます。時間にして20分ぐらい。南島の近くに来るとかなり波が高くなってきました。「場合によっては上陸できないこともあります」というガイドさんの説明もありましたが、波が少し収まったタイミングを見計らって南島の南側の入江にボートは突入。入江に入ると別世界のような穏やかな海に変わりました。参加者全員思わず拍手。

金属製の階段が取り付けられた岩場に接岸し、いよいよ南島に上陸です。島内の歩行ルートは決められていて、そこから外れての立ち入りはできません。まずは島内の最高点(60m)を目指して登ります。尖った岩が多いので、鼻緒だけのビーチサンダルは論外。簡単に脱げない靴が必須です。

上陸後の南島の入江の景色。海の透明度はこの世のものとも思えないほどでした。

最高点にたどり着くと360度のパノラマが広がります。海の青さが濃いです。

南島から南東方向の景色。左端の島影は父島。

目線を下に向けると、南島の人気スポットの扇浜が見えます。

最高点から写した扇浜

その扇浜に降りて30分ほど散策しました。

扇浜で見かけたカニさん

あっという間に滞在時間終了。再びボートに乗り込んで父島方面へ。途中イルカの群れを発見したのでボートは接近します。このイルカがミナミハンドウイルカなら人間と一緒に泳いでくれることもあるそうですが、ガイドさんによると、背びれの形からこれはハシナガイルカ。残念ながら一緒には泳いでくれない種類だそうです。

それでもここにボートを止めてスノーケリングタイム。昨日のレッスンが生きました。海の底を見ると、深いところをイルカの群れが通過していくのが分かりました。ちなみにこの日着たのはウェットスーツではなくスノーケルベスト(レンタル)。ライフジャケットほどの浮力はありませんが、これを着ていれば、ウェットスーツ同様、溺れることがありません。

その後計4箇所場所を変えながらスノーケリングタイム。足がつることもなく、海面から海中の景色を楽しみました。どの場所も海底はサンゴ礁、いろいろな色の熱帯魚が普通に泳いでいました。

最も魚影が濃かったスノーケリングスポット

夕方4時前に帰港してツアー終了です。

スキューバダイビング(3日目午後)

今度は酸素ボンベを背負って海に潜るスキューバダイビングです。私のようなど素人でも受け入れてくれるツアーを催行しているのはST TOUR(エス・ティー・ツアー)さんです。

昨日と同じ港からボートに乗って15分ほどのスポットに到着。さっそくガイドさんが丁寧に機材の説明をしてくれました。さすがにスキューバダイビングの機材はスノーケリングより複雑で重いです。船上で酸素ボンベを背負うと立ち上がるのもたいへんです。

ところがガイドさんの指示に従って船尾の階段伝いに海に入ると途端に軽くなります。そこからいきなり泳ぐのは無理なので、船から垂らされたロープ伝いに、慎重に海底に向かって降りていきます。途中水圧で耳が痛くなるので、その都度少し上がって耳抜きを行いました。

何とか海底に到着。ガイドさんの指示に従ってサンゴの隙間にある砂地に膝をつき、そばにあるサンゴを両手でつかんで身体を固定しました。つかんだらサンゴがもげるのではと心配しましたが、意外にしっかりしています。水中でも使える筆談ボードでガイドさんが「おがさわらのうみにようこそ」と歓迎メッセージをくれました。続けてこのときの水深が7.3メートルであることも教えてくれました。

落ち着いてまわりを見渡すと、いろいろな種類の熱帯魚が人間のことなどまったく気にせず優雅に泳いでいます。目の前に立ち止まった黄色の魚は胸びれをはためかせながらしばらく目を動かしてキョロキョロし、その後またどこかに行ってしまいました。少し離れたところにはタコもいました。まるで熱帯魚の水槽にいる気分です。

しばらくして浮上。体感20分ぐらいかと思ったら、40分ほど潜っていたそうです。1時間ほど休憩して再度潜水。1回目よりは落ち着いて潜れました。この体験は一生物です。

ガイドの武田さん。この笑顔が緊張を解してくれました。

1時間の休憩の間、ガイドの武田さんが小笠原についていろいろな話をしてくれました。

小笠原で武田さんのようなガイドをしている人の8割、9割はよそから来た人だそうです。実際武田さんも関東出身で、オーストラリア、フィジーで海のツアーガイドをしたあと、小笠原に来たそうです。

島内には「空港建設を」という垂れ幕もありましたが、島民はそれほど歓迎しているわけでもなく、そんなお金があるならおが丸をもう1隻作って欲しいという要望もあるそうです。父島にはもともと長い滑走路の空港を作るほどの平地がなく、海を埋め立てて作ったとしてもせいぜい80人乗りの飛行機しか離着陸できないからです。たしかに経済効果の観点で見れば、800人乗りのおが丸の方がメリットがありそうです。

また父島はとても治安がいいそうです(実際そう感じました)。そもそも自然いっぱいのこの素敵な土地で悪いことをしようという気など起こさないでしょうし、逃げる手段もおが丸しか無いので簡単に捕まります。なので大きな犯罪は聞いたことがないそうです。

一刻を争う急病の場合は、硫黄島に駐留する自衛隊のヘリが飛んできて一旦硫黄島に移送され、そこから自衛隊のジェット機で(本州の)東京に運ばれるそうです。ただしよほどのことがない限りこの手段は認められないそうです。

こんな話が聞けたことも貴重な体験となりました。

以上が私の体験した海のアクティビティです。これらのツアーはすべて事前予約が必要です。参加される方はあらかじめ目星をつけておいて、おが丸乗船が確定したらすぐに予約を入れておくことをお勧めします。

小笠原で星を見てきました -6:父島で見る天の川

さて観望場所も決まっていよいよ星見です。このブログの-1に書いた通り、チャンスは3晩しかありません。しかも夏至直後で極端に夜が短い時期です。薄明を避けると夜の9時から明け方3時が勝負です。

意気込んで臨んだ1晩目はあいにくの曇りでした。それでも薄明が残っている20時頃、宿の外に出てみると、東の方に少し晴れ間が見えました。街灯があるにも関わらず、ザラッとした濃い天の川がはくちょう座を貫いていました。いやが上にも期待が高まります。しかし願いも虚しくまもなく全曇り。そのうち雨も降り出してこの夜は早々に諦めました。明け方にはすごい雨音のスコールもあったので、望遠鏡を出さなくてよかったです。

気を取り直して2晩目。20時頃スコールがありましたが30分ほどで止み、そのあと晴れ間が広がってきました。いよいよ出動です。レンタカーに双眼望遠鏡一式を積み込んでウェザーステーション展望台に向かいました。

そこで見た天の川は想像をはるかに超えていました。天の川の明るい部分と暗い部分の輝度差がすごいです。特にいて座の南斗六星の少し下あたりの濃い部分は、輝くように明るいです。一方そこから西側に、暗黒帯を挟んで広がる天の川は、淡いながらもしっかり見えています。写真では見たことがありますが、肉眼でここまで見えるとは思いませんでした。ひっきりなしに雲が流れてくる空でしたが、この天の川がわし座、はくちょう座と流れていくさまは壮観です。

松尾芭蕉が奥の細道の序文で「松島の月まず心のかかりて」と書いていますが、同じように私も小笠原行きを考え始めたときから「小笠原の天の川まず心にかかりて」でした。24時間かけてここまで来た苦労がすべて報われた気持ちです。

下の写真は現地で固定撮影した写真を、現地で見たイメージに合わせて画像処理したものです。淡い部分に切れ込む暗黒帯もこんな感じです。ふだん撮らない人の拙い写真で恐縮ですが、少しでもイメージが伝わればと思います。

左上隅の白い影とさそり座下あたりの黒い影は雲

天の川以外にも目を引くものはあります。例えばさそり座の高さです。さすが北緯27度(沖縄と同じぐらい)、位置が異様に高いです。天の川が直立する夜半すぎ、さそりはほぼ水平に横たわりますが、それでも全景が見えています。南国に来たことを実感しました。

ただしこの夜は直前のスコールのせいで湿気がひどく、望遠鏡はあっという間に曇ってしまいました。したがってもっぱら肉眼と手持ち双眼鏡(42mm)での観望でした。

そして3晩目。天の川が凄いのは分かったので、この日は何としてでも望遠鏡で星を見たいものです。そしてその望みは叶いました。

この日はスコールもなく、多少雲があるものの、空もまずます。21時過ぎにウェザーステーション展望台へ出動しました。

はじめは32倍(アイピースはナグラータイプ4・22mm)でメジャーな天体を観望。天の川にかかる天体のまわりはものすごい星の数です。

次に71倍(アイピースはデロス10mm)に切り替えると各天体がクローズアップされて迫力が増します。10cm双眼望遠鏡を持ってきてよかったです。

0時頃、天の川の写真を撮りにウェザーステーション展望台へ来られた方がいたので、声をかけてM11を見てもらいました。しばらくご覧になったあと覗いたまま「すみません、ちょっと望遠鏡の先を手で塞いでもらえますか?」というリクエストがありました。「いいですけど何かありました?」と逆質問したところ、「いや、疑ってるわけじゃありませんが、リアルに見えていることを実感したくて」とのことでした。まるで映像が嵌めてあるような錯覚に陥ったそうです(笑)

電子ファインダーのアストロイドは、32倍なら視野内に導入できました。71倍では当たらずとも遠からずという感じです。供給者の話では「80倍でも大丈夫」とのことだったので、使い方に問題があったのかもしれません。視野を多少ずらすとだいたいお目当ての天体が入ってくるので、私としてはこれで十分です。プレートソルビングによるタイムラグがあるので、少し慣れが必要です。

夜半過ぎ、東の空に木星が昇ってきました。土星と併せて71倍で見たところ、ひと目でわかる好シーイング。このシーイングが小笠原の「普通」なのかもしれません。高倍率の出せるアイピースを持ってこなかったことが少し悔やまれます。

基本的に小笠原のような離島の場合、湿度は常に高いと考えてよさそうです。実際、ブログの-3で紹介した父島の月別降水量の推移を見ても、年間を通じて湿度はほぼ70%以上です。この晩、スコールこそありませんでしたが、撤収するころには鏡筒が夜露で濡れていました。

結局この日もウェザーステーション展望台に望遠鏡を持ち出しているのは私だけでした。これだけの空とロケーション、そして夏の天の川の最も見頃な時期なので、もったいないなと思いました。

そして1時過ぎに撤収。本当は3時頃まで見ていたかったのですが、この日はもう帰る日。同じ船に載せるため、朝までに望遠鏡等を梱包して宅配を依頼しなければなりません。「またこの星空を見に来ることができるだろうか」と少し感傷的な気持ちになりながらも、宿に戻って寝ずに望遠鏡の梱包を開始しました。どうせこの日は15時におが丸に乗船して24時間の「休憩時間」が与えられるので、頑張ってやり切りました。

小笠原での星見は以上でミッションコンプリートです。

小笠原で星を見てきました -5:星を見る場所

今回は父島内の星見に適した観望地の話です。

旅行を計画している段階でたびんちゅさんという父島のツアーガイドさんに連絡を取ったところ、面識がないにも関わらず貴重なアドバイスをくれました。要約すると以下のとおりです。

  • 本格的に星見をしたい人にとって、ツアーガイドが催行するスターウォッチングやナイトツアーは物足らないはず。レンタカーを借りて自分で星を見ることを勧める。
  • レンタカーは早めに予約した方がよい。

このアドバイスに従って、おが丸の予約が確定した日に島内唯一のレンタカー業者・小笠原整備工場レンタカーに予約を入れました(おが丸の予約確定前はレンタカー予約不可)。

また観望候補地として以下の場所を教えてくれました。

  1. ウェザーステーション展望台
  2. 旭平展望台
  3. コペペ海岸
  4. 小港海岸

結論から言うと1のウェザーステーション展望台で星見をしましたが、それぞれ明るいうちにロケハンしたので写真付きで紹介させていただきます。

ウェザーステーション展望台

宿がある二見港付近から車で7~8分ほどの高台にあります。大きい四阿(あずまや)があり、その南側と西側に大きく張り出すテラスがあります。かなりしっかりしたテラスなので揺れることはありません。この南側テラスに望遠鏡を置くと北側以外の空がすべて見えます。突然スコールが来ても四阿に緊急避難が可能です。

ウェザーステーション展望台の四阿
南側テラスからの眺望。冬にはここからホエールウォッチングが可能とのこと。

このテラスのすぐ横に駐車場があり、トイレも併設されています。

ウェザーステーション展望台駐車場のトイレ

というわけでほぼ理想的な観望場所です。

旭平展望台

二見港付近から東へ車で15分ほど山道を登って行くとあります。ここは島の東側になるので東側の眺望は素晴らしいのですが、西側の空はほとんど見えません。この展望台は道路のすぐ脇にあるので望遠鏡の設置はさほど大変ではありません。ただし地面は土で、トイレもありません。

星を見るとしたら写真奥のフェンス際
平展望台からの眺望。日の出を見るには最適の場所。

コペペ海岸

二見港付近から南へ車で30分弱かかります。望遠鏡を置くとしたら砂浜近くの広場になりますが、そこまで駐車場から少し歩かなければいけないのと、途中に階段や細い橋があるので、機材を運び込むのは難しいです。ただし昼間ここから見るビーチの景色は美しいです。島内はこんなビーチがいくつもあります。

小港海岸

コペペ海岸に比較的近いです。ここは駐車場からかなり歩かなければいけないようで、小港海岸のバス停まで行って引き返しました。

東京都最南端のバス停

観望候補地の紹介は以上です。次回はいよいよものすごい天の川の話です。

参考:父島の地図(PDF)(東京都小笠原支庁HPより)

小笠原で星を見てきました -4:持ち込んだ機材

ここで小笠原に持っていった機材を紹介します。下の写真の機材を父島に持ち込みました。

この写真は自宅で撮影

上記のうちアストロイドについて少し説明します。これは電子ファインダーと呼ぶべきもので、この赤い筐体にレンズ、CMOSカメラ、ラズパイコンピューターが組み込まれています。

COMSカメラに映った星の配列から、今望遠鏡がどこを向いているのかを解析し(これを「プレートソルビング」と呼ぶそうです)、Android端末(この機材で言えば8インチタブレット)に星図で示します。アストロイドとAndroid端末間の通信はWi-Fiです。

天体の検索も可能で、Android端末側から見たい天体を入力すると、望遠鏡を動かす方向を示してくれます。具体的なイメージはこちらをご覧になることをお勧めします。

アストロイドはUSB5Vが必要なので、それを供給するためにモバイルバッテリーも取り付けました。

8インチタブレットとモバイルバッテリーは、エアロバイク用のタブレットホルダーを購入して使いました。このように取り付けたおかげで、望遠鏡がどちらに向いても配線が絡むことはありません。

8インチタブレットとモバイルバッテリーの取り付け方

8インチタブレットに映すアストロイドの画面は、ナイトモードにしても明るすぎるので、赤い透明の塩ビシートを貼り付けました。このシートの上からでもタブレットの操作ができます。

さてこれだけの機材(推定20kg以上)をどうやって運んだか、ですが、宅配を利用しました。今回調べてみて驚いたのですが、クロネコヤマトの場合、父島へ送る料金は、東京23区内と同じでした。

しかもありがたいことに、私が宿泊したペンションに限らず、父島内のほとんどの宿は、前の便のおが丸で送ると宿泊当日まで保管しておいてくれます(ただし要事前連絡)。

実際私の荷物は120センチサイズのダンボール3箱だったので、片道料金が5千円ぐらい。前の便のおが丸に載せられたので、宿について部屋に入ったらその荷物がちゃんと置いてありました。

またビノキットは分解可能なので、その分ダンボールもコンパクトになります。

ダンボールの中には機材だけでなく、父島でしか使わない着替え等も緩衝材代わりに詰めておいたので、おが丸に乗る際の手荷物は最小限で済みました。

帰る際は、宿にお願いしておくと朝イチでクロネコヤマトさんが集配に来てくれ、同じ船便に載せてくれます。おがげで荷物は帰宅翌日に受け取れました。

離島とはいえ、宅配で荷物が送れるのは国内ならではのメリットです。これを利用しない手はありません。

小笠原で星を見てきました -3:おが丸での船旅

ところでなぜこの時期(6/29-7/4)を選んだか、ですが、参考にしたのは父島の月別降水量の推移です。これによると雨が最も少ないのは1月~3月。その次が7月です。7月というと本州は通常梅雨の真っ最中ですが、小笠原は梅雨前線のはるか南になるので雨が少ないようです。夏の天の川が見たかったのでこの時期の新月期を選びました。

さて無事おが丸に乗り込み、いよいよ出航です。桟橋では関係者による送迎がありました。

ひときわ目立つ着ぐるみはマスコットキャラクターの「おがじろう」
海の色がどす黒い。。。
レインボーブリッジ(違ってたらすみません)通過

船内の食事ですが、レストランと展望ラウンジがあり、さらに売店もあるので、食べることには困りません。「売り切れ」もなかったので、早い時間に焦って食べに行く必要もありません。

驚いたのは7デッキ(船では「7階」といわず「7デッキ」と言うようです)の展望ラウンジの光景です。自分の部屋に荷物をおいて一息ついたあと展望ラウンジを覗いてみたらすでに満席で酒盛りが始まっていました。おそらくこの人たちはリピーターさんで、乗船直後に席を取ったと思われます。同じように屋外デッキの円卓も酒盛りで満席でした。

スマホの電波は東京湾を出ると入らなくなりました。次に電波が入るようになったのは父島到着1時間前です。強制的なデジタルデトックスです。

特2等寝台以上の部屋にはテレビがありますが、スマホの電波と同じように地上波が入るのは東京湾までです。ただし衛星放送はずっと入りました。また船内放送も何チャンネルかあり、洋画、邦画、アニメ、おが丸の航行状況などが常時配信されていました。

船内放送のひとつ、おが丸の航行状況。出航から4時間以上経過してもやっと東京湾を抜けたぐらい。

各フロアには鍵がかかる個室タイプのシャワー室もあります。24時間の船旅ですからこういう施設もありがたいです。

日没直後の屋外デッキからの眺め

屋外デッキは夜の10時から日の出30分前までは出ることができませんでした(おそらく安全上の措置)。それでも夜10時前に屋外デッキに出てみたら、雲間からはくちょう座あたりの天の川が濃く見えていました。父島の天の川への期待がますます高まってきます。

ちなみに屋外デッキはすべてブリッジ(艦橋)の後方にあるので、進行方向の空が見えません。つまり父島に向かうとき、いて座方向の天の川(=南側)は見えません。これはちょっと残念でした。

しかし大ラッキーもありました。明け方グリーンフラッシュを見ることができました!生まれて初めてです。日の出前屋外デッキに出てみたら割とよく晴れているので「ひょっとしたら」という思いで凝視していたら本当に見えました。時間にしたら1秒から2秒ぐらいでしょうか。かなり強い緑色の光でした(もっと弱い光を想像していました)。日の出を告げる閃光です。同じデッキにいた人たちとこの大幸運を喜び合いました。

日の出直前の東の空。このあとグリーンフラッシュが!

小笠原に近づくと、いよいよ海の青さが際立ちます。別世界に来たことを実感します。

この海の青さと言ったら。遠方の島影は小笠原諸島。

そしてついに父島到着。

やっと下船。

このあと港に迎えに来ていた宿の方の送迎で予約していたペンションに入りました。

宿泊先のペンション。手前の道路は父島のメインストリート「湾岸通り」。

小笠原で星を見てきました -2:おが丸に乗るにあたって

前回書いた通り、小笠原諸島に行くにはおがさわら丸(通称「おが丸」)に乗るしかありません。このチケットの入手方法はいくつかあります。私の場合は宿とセットになったツアーを扱うナショナルランド(小笠原旅行専門のツアー会社)を通じて申し込みました。正確な比較はしていませんが、一般的な旅行会社のツアーよりもお値打ちのようです。

おが丸に乗船する竹芝客船ターミナル(JR浜松町駅から徒歩約10分)

ツアーを申し込むにあたって最初に決めなければいけないのは、母島まで行くかどうかです。母島へ行くには父島で船を乗り換えて、さらに片道約2時間の船旅になります。父島よりもさらに人口が少ないので、いっそう空が暗いことが期待されますが、往復で4時間以上、つまり約半日船に乗る時間が増えてしまいます(父島・母島間の船はほぼ毎日運行)。その時間が惜しかったのと、今回欲張って海のアクティビティもしたかったので、それが充実している父島オンリーのツアーとしました。ちなみに母島にもペンション等の宿泊施設はありますが、その数は父島に比べるとぐっと少ないようです。

おが丸は約800人乗れる大型客船(私が行ったときは新型コロナの関係で約500人乗船)で、船室はいくつかのグレードに分かれています。プライバシーが確保されるのは2等寝台からになります。私の場合、行きは1等室、帰りはそれよりワンランク下の特2等寝台を利用しました。特2等寝台はベッド横の通路に他人が入ってこない構造になっているので、比較的セキュリティが確保されます。上のランクになればなるほど快適ですが、お値段もそれなりになるので、私としては特2等寝台で十分でした。

出発の4ヶ月ほど前にツアーの申込みを行いましたが、船室も含めてツアーが確定するのは約2ヶ月前です。これはナショナルランドの都合ではなく、おが丸を運行する小笠原海運の都合と思われます。ナショナルランドによると、早く申し込めば希望の船室が予約できるというわけでもなく、かといって抽選でもないそうです。じゃあ、どうやって決めるの?と思いましたが、結果としては希望通りの船室で行けることになりました。

今回少し面倒くさかったのは、直前のPCR検査が必要だったことです。これはいずれなくなると思いますが、私が行ったときはまだ必要でした。出発の1週間ほど前に検査キットが送られてきて、出発前日の96時間以内にサンプリングした検体を送り返しました。出発の前日までに連絡がなければ陰性ということだったので、ちょっとどきどきでした。万が一陽性の場合はもちろん船に乗れず、予約もすべてキャンセル(有料!)となります。結局陽性の連絡がなかったので、無事出発できることになりました。

竹芝客船ターミナル内のナショナルランドブース。ここで乗船チケットを受け取る。

小笠原で星を見てきました -1:はじめに

6/29-7/4の日程で小笠原諸島・父島へ行って、ものすごい天の川を見てきました。何回かに分けてそのレポートをさせていただきます。

———————————————————————————–

まずは小笠原諸島についてですが、東京から南へ約1,000キロ。人が住んでいるのは父島(人口約2,000人)と母島(人口約450人)だけです。

出航直前のおがさわら丸

父島に空港はないので、行くには6日に1回東京から出航する「おがさわら丸」に乗るしかありません。なので最低でも6日間の旅程になります(ただし夏休み等のハイシーズンは3日に1回出航するようです)。

しかもこの船旅、片道きっちり24時間かかります。したがって6日間の旅行といっても、現地で3泊、残りの2泊は船中泊となります。つまり星を見るチャンスは3晩しかありません。

星見を計画したのは半年以上前からですが、意外なことに小笠原の詳細な星見情報をネットで見つけることができませんでした。実際現地でも本格的に星見をしている人には出会えませんでした。ロケーションから考えると空の暗さは容易に想像できるのですが、「船しかない」「最低6日間」がハードルとなって、実際に行く人は少ないのかもしれません。

そういう意味でこのレポートは、これから小笠原行きを計画される方の参考になるような情報を盛り込んでいきたいと思います。

タカハシ鏡筒用ペンタックスファインダー台座

少しややこしい仕様ですが、タカハシ製鏡筒にペンタックス製ファインダーを取り付けたいというご要望があったので製作しました。ペンタックス製ファインダーは正立像であり、なおかつ像質が良いので、鏡筒が変わっても使いたいというリクエストです。

ペンタックス製ファインダーは3センチと5センチの2サイズあり、それぞれ大きさが異なりますが、どちらも取付可能なマルチ仕様です。

ペンタックス製3センチファインダーを取り付けた状態
ペックタックス製5センチファインダーを取り付けた状態

双眼望遠鏡とは直接関係ありませんが、ビノテクノはこういうご要望にも対応しています。

Mewlon180C/210用 EZM特別仕様セット(スターベース東京様扱い)

スターベース東京様からMewlon180C/210用 EZM(正立天頂ミラー)特別仕様セットが発売されました。

Mewlon180C/210側(鏡筒側)もEZMもノーマル状態ではバックフォーカスがわずかに足らずピントが出ません。しかし幸いなことに鏡筒側の2インチスリーブは全長約40mmと長いので、このスリーブとEZM側の2インチバレルをそれぞれ切り詰めるとピントが出ます。このセットはそういう仕様になっています。正立像であるだけでなく、濃くてクリアな惑星像が楽しめます。これから本格的な惑星シーズンとなりますので、Mewlon180C/210をお持ちの方はぜひこのセットの導入をご検討ください。

※ このセットの販売は、スターベース東京様からのみとなります。ビノテクノからの販売はしておりません。

ビノテクノ製品の光軸が狂わないカラクリ

ビノテクノ製の双眼望遠鏡は、お客様の手元に届いたその日からすぐに観望が楽しめます。調整不要の構造になっているので、お客様の方で何日もかけて光軸を追い込んでいくといった作業は必要ありません。また使っていくうちに光軸が狂ってくるという不具合も発生しません。

今回はそのカラクリの一部を紹介します。

EZMを構成する頂角60度の2つのミラーケースは、70.53度のねじれ角度で接続すると、90度正立となります(詳細はこちら)。そのためEZMのミラーケースは、その角度でしか接続できないよう、位置決めピンが埋めてあります。

対物側ミラーケース(中間リング取付面)
アイピース側ミラーケース(中間リング取付面)

取付面を時計の文字盤に例えて12時の位置に見えるのが位置決めピンです。それ以外の穴はすべてネジ穴です。

中間リング(アイピース側)

12時の位置にある長穴が位置決めピンの入る場所です。余談ですがこの場合の位置決め穴を丸穴ではなく長穴にするのは機械設計の定石です。

中間リング(対物側)

上の写真では、2時の方向と10時の方向に見えるのが位置決めピンのための長穴です。正確に言えば、12時の方向を0度として、時計方向に70.53度と、反時計方向に70.53度の位置です。どちらの穴を使うかで右用と左用が決まります。

ちなみにこれらの位置に正確に位置決めピンの穴を施すのは職人芸でもなんでもありません。プロの加工業者なら普通の加工です。逆に言えば、普通の加工レベルの部品構成で要求性能を実現させるのが、設計者の腕の見せどころです。

クレードル本体ベース

鏡筒を連結して目幅調整を行うクレードルについても同様のカラクリが施してあります。位置決めピンを使って鏡筒の平行を確保しています。写真では4個の位置決めピンが見えます。

鏡筒バンド(下側)の取付面

取付面の3つの穴のうち、真ん中の穴が位置決めピンのための穴です(この場合は丸穴で大丈夫です)。

市販の鏡筒バンドではこのような位置決め穴がないので、双眼望遠鏡に必要な鏡筒の平行状態の確保が難しいです。しかも固定ネジが緩むとすぐにずれるので不安定です。

このようにビノテクノ製品は、要所要所に位置決めピンが埋めてあるので、調整レスであり、使っているうちにずれる心配もありません。

ここからは余談ですが、

私は3年前まで株式会社デンソーで35年間設備設計の仕事をしていました。そこで培った設計技術のひとつに、「カンコツ調整に頼らない設計」というものがあります。ちなみに「カンコツ」というのは「勘」と「コツ」の意味で、特定のベテランの感覚的なスキルを指します。そのスキルの習得には敬意を表しますが、その人しか調整できない設備はデンソーではNGです。

今回紹介したEZMとクレードルのカラクリ(=設計上の工夫)はまさに、デンソー在職中に獲得した設計技術が反映されています。