野鳥撮影用に新対物レンズを購入されたオーナー様から、カワセミの写真をいただいたの紹介させていただきます(前回記事はこちら)。
【共通データ】
カメラ:FUJIFILM X-T3
レンズ:ビノテクノ 新対物レンズ 10.2cm3枚玉SDアポ F7
補正レンズ:BORG 1.4xテレコンバーターDG
オリジナル画像を強拡大すると、その解像度の凄さが分かります。オーナー様、ご提供ありがとうございました。
ビノテクノのブログ
弊社HPの「製品」ページにも案内してありますが、双眼望遠鏡の調整サービスを無償で行っています(送料のみお客様負担)。これは弊社製、他社製、自作品問わず、左右の光軸がずれて何ともならない状態になった双眼望遠鏡を、ちゃんと両目で気持ちよく見られるように調整するサービスです。
先日も一件、ご依頼主のオーナー様が中古で入手した双眼望遠鏡を調整させていただきました。
オーナー様から事前にいただいたお話によると、正立ミラーの2つのミラーボックスを接続するネジが緩んで(ミラーボックスの)ねじれ角度がずれてしまったそうです。その後試行錯誤でいろいろ調整を試みたものの左右の視野回転が大きくずれたままで、例えばオリオン大星雲を見るとそれがよく分かる状態とのことでした。
そこで双眼望遠鏡一式を送っていただき、こちらで調整することにしました。
ラベルもロゴ刻印もなかったので型式不明の鏡筒ですが、外観から察すると古いビクセン製の10センチオーバーだったので、それなりに古い双眼望遠鏡と思われます。正立ミラーは他社製、目幅調整機構付きクレードルは他社製か自作品かは不明です。
昼間の景色で調整前の状態を確認すると、なるほどひどい視野回転のずれでした。視野中央を正立ミラーのXY調整ノブで合わせると、右と左で視野回転の量が30度以上違います。これではまともに双眼視ができません。さっそく調整に取り掛かりました。
まずはじめに行ったのは正立ミラーのミラーボックスねじれ角度の調整です。
一般的な仕様の正立ミラーは「90度対空」で、このときのねじれ角度は理論上アークコサイン(1/3)≒70.53度になります。とはいってもこの角度に合わせて正確にねじるのはほぼ不可能です。そのため、別の方法を採ります。これは90度対空であることを利用した方法です。
具体的には下の写真のように、定盤の上にマグネット付きVブロックを置き、さらにVブロックに表裏の平行度が出ている仕上げプレートをマグネット吸着させて、正しく90度で直行する平面を設けます。
これに正立ミラーを密着させます。
「90度対空」仕様なので、ねじれ角度が正しければ、対物側のバレル端面とアイピース側のスリーブ端面が、90度直交面に同時密着します。調整前の状態では同時密着しなかったので、オーナー様のお話どおり、このねじれ角度はずれていました。ミラーボックス同士を接続するセットネジを一旦緩め、同時密着するねじれ角度にして再度締め付ければ、ねじれ角度の調整は完了です。
次に行ったのは、正立ミラーのミラーアライメント調整です。これはレーザーポインターを使った自家製のアライメント調整治具を使います。
これに正立ミラーをセットしてミラーのアライメントを調整します。
これに調整対象の正立ミラーをセットして確認したところ、XY調整ノブのない側はほとんどずれていませんでした(実際のところ、このアライメントはまずずれません)。XY調整ノブのある方はいろいろ触っていたと思われるので当然ずれていましたが、XY調整ノブで修正して直しました。また調整原点がわかるように、XY調整ノブにミニグラインダーで小さい彫込を付けておきました。
ここまでの調整作業で正立ミラーは完璧な状態になったので、最後にクレードルの鏡筒平行調整を行いました。
調整済みの正立ミラーを双眼望遠鏡に取り付けたとき、両目に映る映像のズレが鏡筒の平行のずれになります。このずれを正立ミラーのXY調整ノブで調整すると必ず視野回転のずれが発生するので、鏡筒の平行もきちんと出さなければいけません。
今回のクレードルは鏡筒付属の鏡筒バンドをバカ穴で固定しただけの構造だったので、左右のずれはこの固定を一旦緩めて平行調整します(とはいっても微調整機構がないのでそれなりに慎重にやらないと合いません)。厄介なのは上下のずれです。実際今回のクレードルでは、左右よりも上下の方が大きくずれていました。このため鏡筒バンド固定部の下に薄いワッシャを追加して上下のずれを解消しました。
ちなみにこの部分はまた将来ずれる可能性がありますが、正立ミラーがずれてなければ復元は容易です(そのための調整原点マークです)。
これで調整作業は完了です。文章で書くと手間がかかっているように見えますが、実際の作業は1時間もかかっていません。
以上のようにねじれ角度、ミラーアライメント、鏡筒平行それぞれをきちんと整えると、必ずちゃんと見えるようになります。あらためて昼間の景色で確認すると、左右の像が気持ちよく一致し、本来の双眼望遠鏡としての見え方に戻りました。この双眼望遠鏡はすでに返却済みですが、オーナー様からも問題なく見えるようになったとのご報告をいただきました。
このようにビノテクノに預けていただければ、現在うまく両目で見えない双眼望遠鏡も本来の状態にすることができます。お困りの方はどうぞ気軽にお問い合わせください。
すでに同様の工夫をされている方もいらっしゃると思いますが、エアコンプレッサーを利用したエアダスターを紹介させていただきます。
少し前までレンズやミラーの清掃には、スプレー缶タイプのエアダスターを利用していました。しかし頻繁に使うとあっという間に空になってしまいます。またエア圧力もそれほど強くなく、その点も不満でした。
そこで自作というか、市販パーツを組み合わせて用意したのが今回紹介するエアダスターです。
構成は以下のとおりです。
ポイントはミストセパレーターを使ったことです。
これがないと、エアコンプレッサーが吸い込む大気中のホコリや水分が、そのままレンズやミラーに当たってしまいます。ミストセパレーターは空気中のホコリや水分を除去する機能があるので、ここを通過した圧縮エアはとてもクリーンです。
ちなみにこのエアコンプレッサーの最高圧力は0.9MPa(一般的な工場で使われる圧縮エア圧力の約2倍)ですがこれでは強すぎるので、エアダスターとして使うときは0.3MPaに減圧しています。この圧力でもスプレー缶のエアダスターよりはるかに強力です。
細かい話ですが、それぞれの構成機器はワンタッチカプラーで外れるようにしてあります。普段使わないときは外して保管しています。こうしておけば保管場所も取りませんし、ミストセパレーターを蹴飛ばして壊したりしません。
市販のエアダスターにご不満を抱いている方の参考になれば幸いです。
EZM金属パーツの在庫が払底しました。パーツは注文済みですが、入荷予定は4月末以降です。
ついては大変申し訳ありませんが、以下の商品について、これからのご注文分の納品は4月以降になります。どうかよろしくお願いします。
<4月以降の納品となる商品>
2022/02/21 末尾にジョウビタキのトリミング画像(シャープ加工等無し)を追加しました。
野鳥撮影のベテランの方にお願いして、10.2cm3枚玉SD対物レンズユニットで撮影してもらいました。
星も見ても色の出方がきれいなのですが、野鳥撮影においてもこのレンズの色の出方はきれいです。
この「700mm望遠レンズ」は20mぐらいの距離からでも狙えるので、撮影チャンスが格段に増えるそうです。
レンズの解像度が分かるよう、トリミング画像とフルサイズ画像の両方を掲載しておきます。カメラはAPS-Cサイズ,、対物レンズ以外のパーツはほぼすべてBORG製品とのことです。
※ 画像をクリックするとオリジナル画像が開きます。
BINOKIT用8.5cm対物レンズユニットの在庫が無くなったので販売終了となりました。ご購入いただいたみなさま、ありがとうございました。
これでBINOKIT用の対物レンズユニットは、昨年末に発売した10.2cm3枚玉SDのみとなります。こちらの方も引き続きよろしくお願いします。
10.2cm3枚玉SDアポ対物レンズユニットは眼視だけでなく、写真撮影においても素晴らしいパフォーマンスを発揮します。下の写真はその作例です。
詳細は特設ページをご覧ください。上記写真のピクセル等倍画像や、星像確認用のフルサイズピクセル等倍画像、さらにBORG製パーツ構成例などが掲載してあります。
90FL/71FLからのアップグレードを検討されているBORGユーザー様には特にお勧めの対物レンズです!
明けましておめでとうございます。
今年もみなさんの天文活動が一層楽しくなるよう、
いろいろな提案をさせていただきます。
どうか本年もよろしくお願いします。
先日紹介した新対物レンズの単眼仕様を実際に作ってみました。構成内容はこちらをご覧ください(構成内容に少し変更があったので訂正しておきました)。
この鏡筒の重量は、アイピースを除いて4.6kgです(鏡筒バンド、アリガタ金具含む)。
またFPL53素材を使っているので、商品ページに表記してあった”ED”はすべて”SD”に変えました。
この対物レンズの見え味ですが、このスペックを裏切らない見え方です。星像がシャープであることは言うまでもありませんが、特筆すべきは、星の色がとてもわかり易いことです。例えばトラペジウムの4つの星の色の違いがはっきり分かります。これはこの対物レンズが優秀であることを示す特長のひとつです。
前回の紹介で言い忘れたのですが、今回の対物レンズのリリースはかなり気合が入っています。FPL53素材使用かつ3枚玉なので、仕入れ金額もそれなりでしたが、無難なスペックではインパクトがないと考えて、今回このモデルを用意しました。ビノテクノの本気度を感じていただければ幸いです。
双眼望遠鏡と関係のないアルミパーツの加工も承ります。
これまで特に宣伝してこなかったのですが、依頼先が少なくて困っていらっしゃる方が意外と多いようなので、あらためてご案内します。想定しているアルミパーツは以下のようなものです。
例:鏡筒取付用サブプレート,架台とピラー/三脚の接続アタッチメント、接眼部まわりの接続リング等
ただし一品物(いわゆるワンオフ品)になるので、市販のパーツより高くなります。したがって、市販のパーツが手に入るなら、そちらのご利用をお勧めします。あくまで市販品では解決できないときのための有償サービスです。
ご依頼から納品までの流れは次のとおりです。
ここまでは無償対応いたします。金額が折り合わない場合はキャンセルしていただいてかまいません(値引き交渉はご容赦ください)。
流れは以上です。どうぞ気軽にご相談ください。
作業場が手狭になってきたので、下記の通り処分セール(直販のみ)を行います。金額はすべて税別です。
小型簡易クレードルCRDL-miniにBLANCA-60SEDを載せてみました。
BLANCA-60SEDに付属している鏡筒バンドは、アリガタ金具への取り付けを想定していないので、以前販売していたBINO-60ED用のパーツ(鏡筒バンド)を流用してアリガタ金具を取り付けました。
この構成例の金額は下記のとおりです(すべて税別)。
クレードル:CRDL-mini 58,000円
正立プリズム:EZP-P 56,000円
鏡筒(2本):笠井トレーディング BLANCA-60SED 116,000円
鏡筒バンド+アリガタ金具(鏡筒2本分):8,000円
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合計 238,000円
ご不明な点があれば気軽にお問い合わせください。
先日納品したTSA120ビノ(特注品)を紹介させていただきます。
鏡筒はタカハシTSA120(D120mmF7.5 3枚玉アポクロマート)です。左側に同架しているのはBINO-60EDです。オーナー様のご要望で、鏡筒バンドの色を青色にそろえました。同様にEZMの中間リングは白色にそろえました。
架台本体はアイベル・ノースマウントCT-30です。右側に同架しているのはStarsense Exploreです(お客様よりご支給)。そのすぐ下に見えている、右側に突き出た機構は目幅調整です(右側鏡筒が平行に移動します)。
架台フレームは先日紹介したBK150750ビノと同じ逆ブランコ方式です。この方式のよいところは、架台本体に偏荷重がかからないところにあります。バランスウェイトを含めれば総重量50kg以上あるはずですが、剛性に不安はまったくありません。
両サイドに、上から下に垂れている黒い角柱は工業用アルミフレームです。メインのバランスウェイトの位置は、このアルミフレームの溝に沿って変えることができます。
パン棒に仕込んであるのは1kgのバランスウェイトです。この位置はアイピース交換時に動かします。
また言うまでもなく、メインのバランスウェイトが観測者側にオフセットしてあるのは、鏡筒を前にオフセットするためです。
オーナー様のお住まいは街なかと伺っていますが、ベランダからの見晴らしはよさそうです。
先日発売を開始したCRDL-mini(小型簡易クレードル)の微動ステージ機構(鏡筒の平行調整用)について、ある方から「どうやって2枚のプレートだけで上下と左右の調整を行っているのか?」というご質問をいただきました。鋭いご質問です。
ベタに考えれば一番下にベースプレート(基準プレート)、その上に上下揺動プレート、さらにその上に左右スイングプレートの3枚必要です(上下と左右の順番は逆でも可)。ところがそうしてしまうと、この部分の厚みが増して、クレードルが大柄になってしまいます。それを避けるため、工夫を加えて2枚で済むようにしました。
その工夫の内容を、写真で紹介させていただきます。
まずは鏡筒を取り付けるためのアリミゾ金具を外した状態です。
さらに上のプレートを外した状態です。見えているのがベースプレートです。両サイドに載っているのは鋼球(スチールボール)です。この鋼球は円弧状の彫り込みに収まっています。
この写真は、上のプレートを裏面から見たものです。両サイドのすり鉢状の彫り込みが、上述の鋼球を上から保持します。左右の微調整ノブを回すと鋼球はベースプレートの円弧状の彫り込みに沿って動くので、上のプレートはその円弧中心を仮想中心としてスイングします。
さらに上下調整ノブを回すと、今度は鋼球を支点にして上のプレートが揺動します。
つまり今回の工夫は、上下2枚のプレートの間に2個の鋼球をはさみ、さらにその鋼球の軌道を円弧状にしたことです。この工夫で、この機構は2枚のプレートで済んでいます。
最後に上下調整用ノブに仕込んであるパーツも紹介しておきます。写真の左端から、左2枚が球面座金(凸と凹)、次の3枚がスラストベアリング、次がスペーサー、最後がノブ本体です。スラストベアリングがあるおかげで、ロック状態からアンロックする操作がとてもやりやすくなっています。
先日納品したBK150750ビノ(特注品)を紹介させていただきます。
鏡筒はスカイウォッチャー製BK150750(D150mmF5アクロマート)です。
接眼部は笠井トレーディングV-POWERII(S)です。鏡筒チューブと接眼部をつなぐリングは特注アルミパーツです。ストロークの長いV-POWERII(L)を使わずV-POWERII(S)を使った理由は口径食の回避です。事前にCADで確認したところ、Lは長いドロチューブで口径食を起こすので、ストロークの短いSを採用しました。
EZMは対物側もノーマルサイズのミラーで、接眼部との接続は2インチバレルです。鏡筒間ピッチが広いので、第1ミラーと第2ミラーの間に延長スペーサが設けてあります。
クレードルのみの写真です。基本的にオーナー様しか使わないので、目幅調整機構は思い切って簡略化しました。
その部分のクローズアップです。片側の鏡筒バンドのみ、キー(精密な寸法で仕上げられたステンレス製角材)に沿って動かせる機構にしてあります。長穴に取り付けられているボルトを緩め、あらかじめオーナー様の目幅に合わせて動かし、再度ボルトを固定します。この鏡筒バンドはキーに沿ってしか動かないので、どの位置でボルトを固定しても左右の平行が崩れることはありません。
当然ながら目幅調整は煩雑ですが、一度合わせたらまず変更することはないとのことだったので、コストダウンのため、割り切ってこういうシンプルな機構にしました。
以下はオーナー様からいただいた写真とメール抜粋です。
※ ビノテクノコメント:架台はiOptron AZマウントPro、逆ブランコ方式のブラケットはリンクス製です。今回はこの逆ブランコ方式ブラケットのトッププレートを換装する形で改造を行いました。
15cmビノにての初観望を行いました。
素晴らしい!のひと言に尽きます。
特に散開星団は圧巻です。
やはり口径がものをいうのですね。
既にボーグ107ビノを所有しており、その見え味には満足しているのに更に15cmビノが自分に必要なのかと、かなり悩みましたが、作っていただいて本当に良かったというのが今の正直な気持ちです。
また、軽量化を図っていただいたお陰でマウントとの相性もバッチリでした。
15cmビノと架台のマッチングについて追記させていただきますと、口径に対して鏡筒長が短いこともあり、しっかりとバランスさえ取られていれば観測中に気になるようなふらつきはありませんでした。
大変お世話になりまして、ありがとうございました。
※ ビノテクノコメント:オーナー様、こちらこそありがとうございました。出来上がりにご満足いただけて、とてもうれしく思っています。目幅調整機構の簡略化等、ご自身の使い方に合わせてシンプルな仕様を採用されたことは、とても賢明なご判断と思います。