ビノテクノ製品の光軸が狂わないカラクリ

ビノテクノ製の双眼望遠鏡は、お客様の手元に届いたその日からすぐに観望が楽しめます。調整不要の構造になっているので、お客様の方で何日もかけて光軸を追い込んでいくといった作業は必要ありません。また使っていくうちに光軸が狂ってくるという不具合も発生しません。

今回はそのカラクリの一部を紹介します。

EZMを構成する頂角60度の2つのミラーケースは、70.53度のねじれ角度で接続すると、90度正立となります(詳細はこちら)。そのためEZMのミラーケースは、その角度でしか接続できないよう、位置決めピンが埋めてあります。

対物側ミラーケース(中間リング取付面)
アイピース側ミラーケース(中間リング取付面)

取付面を時計の文字盤に例えて12時の位置に見えるのが位置決めピンです。それ以外の穴はすべてネジ穴です。

中間リング(アイピース側)

12時の位置にある長穴が位置決めピンの入る場所です。余談ですがこの場合の位置決め穴を丸穴ではなく長穴にするのは機械設計の定石です。

中間リング(対物側)

上の写真では、2時の方向と10時の方向に見えるのが位置決めピンのための長穴です。正確に言えば、12時の方向を0度として、時計方向に70.53度と、反時計方向に70.53度の位置です。どちらの穴を使うかで右用と左用が決まります。

ちなみにこれらの位置に正確に位置決めピンの穴を施すのは職人芸でもなんでもありません。プロの加工業者なら普通の加工です。逆に言えば、普通の加工レベルの部品構成で要求性能を実現させるのが、設計者の腕の見せどころです。

クレードル本体ベース

鏡筒を連結して目幅調整を行うクレードルについても同様のカラクリが施してあります。位置決めピンを使って鏡筒の平行を確保しています。写真では4個の位置決めピンが見えます。

鏡筒バンド(下側)の取付面

取付面の3つの穴のうち、真ん中の穴が位置決めピンのための穴です(この場合は丸穴で大丈夫です)。

市販の鏡筒バンドではこのような位置決め穴がないので、双眼望遠鏡に必要な鏡筒の平行状態の確保が難しいです。しかも固定ネジが緩むとすぐにずれるので不安定です。

このようにビノテクノ製品は、要所要所に位置決めピンが埋めてあるので、調整レスであり、使っているうちにずれる心配もありません。

ここからは余談ですが、

私は3年前まで株式会社デンソーで35年間設備設計の仕事をしていました。そこで培った設計技術のひとつに、「カンコツ調整に頼らない設計」というものがあります。ちなみに「カンコツ」というのは「勘」と「コツ」の意味で、特定のベテランの感覚的なスキルを指します。そのスキルの習得には敬意を表しますが、その人しか調整できない設備はデンソーではNGです。

今回紹介したEZMとクレードルのカラクリ(=設計上の工夫)はまさに、デンソー在職中に獲得した設計技術が反映されています。

FC-76DC対物ユニット双眼望遠鏡

タカハシFC-76DC対物ユニットを使った双眼望遠鏡です。この対物ユニットを使った完成品の鏡筒はFC-76DCUになりますが、EZMではピントが出ないので、対物ユニットのみを使って双眼望遠鏡に仕立てました。

鏡筒の構成は、対物レンズ側から以下のとおりです。
・ FC-76DC対物ユニット
・ 特注接続リング
・ BORG 80φL100mm鏡筒BK【7101】
・ BORG M77.6→M68.8AD【7801】
・ 笠井トレーディング BORG互換アダプター
・ 笠井トレーディング V-POWERII接眼部(お客様からご支給)
・ ビノテクノ EZM

クレードルはビノテクノ CRDL-105のベース部分に80mm鏡筒用バンドを特注製作して取り付けました(FC-76DC対物ユニットの外径も80mmです)。お客様のご要望でファインダー台座は上の写真の位置に取り付けました。

納品前に昼間の景色を見たところ、色収差が全く感じられない、すっきりくっきりした、タカハシらしい見え方でした。

新対物レンズ,ボケ部も色収差なし

星を見るときには無用の性能ですが、10.2cm新対物レンズはボケた部分の色収差も皆無であることがわかりました。

下の写真は上記新対物レンズを使って野鳥撮影されている方からご提供いただいた写真です。野鳥(オオルリ)の手前の水の光り方にご注目ください。ごく自然に白く光っています。

一方下の写真は、ほぼ同口径のフローライトレンズを使った野鳥(キビタキ)の写真です(同じ方からのご提供)。こちらの写真の手前の水は紫色の色収差を伴って光っています。

ピントが合っている部分はどちらも色収差はありませんが、手前の少しボケている部分(ピントが合っていない部分)に差が出ているのがわかります。

こういった部分まで野鳥写真の仕上がりに気を配られる方にはとりわけお勧めしたい対物レンズです。