双眼望遠鏡の魅力

視覚障害の方を除けば、両目で見ることは日常生活において極めて自然な行為です。左右の目から得た情報を処理して立体を認識するように私たちの脳はできています。両目で見ることができる双眼望遠鏡はその脳のはたらきをそのまま使うことができます。
1300光年のかなたにあって本来視差など発生しないオリオンの大星雲を脳は立体として認識します。これはもちろん錯覚ですが、双眼望遠鏡を覗く人はこの擬似立体感に心地よさを感じ、この天体が存在する宇宙空間に想いを馳せます。明るい星が手前に見え、暗い星が遠くに見える不思議な遠近感に宇宙の奥行きを感じます。一度でも双眼望遠鏡を使って星空を観れば、これらの表現が誇張でないと分かっていただけます。

トップに戻る

双眼望遠鏡の楽しみ方

屈折式双眼望遠鏡の一般的な楽しみ方は、低倍率から中倍率での観望です。手持ちタイプの小型双眼鏡で星雲星団を見たときに感じる「もっとアップで見たい!」という願望を双眼望遠鏡は満たしてくれます。
特にエキサイティングな対象はメシエ天体のような比較的明るい星雲星団や月面です。自動追尾架台に載せれば高倍率での惑星観望も楽しめます。両目で見ることによる細部の認識力アップは想像以上です。
また、双眼望遠鏡は観望会でも活躍します。生の宇宙を見た感動をその場で仲間と分かち合うことができます。

トップに戻る

設置手順

双眼望遠鏡の一般的な設置手順は次の通りです。
1.三脚の設置
2.架台と鏡筒の取付け
3.EZM取付け
4.バランス取り
5.目幅調整
6.EZMの調整
以降、それぞれについて詳しく解説していきます。

1.三脚の設置

双眼望遠鏡の架台はほとんどの場合経緯台なので、三脚上部の架台取付け面は水準器を使ってきちんと水平を出す必要があります。水準器はホームセンターで売られている程度の安価なもの(最小感度勾配1/50〜1/100程度)で十分です。

トップに戻る

2.架台と鏡筒の取付け

双眼望遠鏡固有の注意点はありません。落とさないよう、傷つけないよう、そして身体を傷めないよう慎重に取り付けてください。組立途中のバランスの崩れにも十分注意してください。

トップに戻る

3.EZM取付け

アイピーススリーブ(アイピースを取り付ける筒の部分)が左右平行かつ同じ高さになるよう取り付けてください。目合わせが苦手な方は弊社のセッティング治具(別売)をお勧めします。
望遠鏡を横から見た際、どう取り付けてもアイピーススリーブが平行にならないときは、接眼部がたわんでいるか、EZMの2つのケースのねじれ角度がおかしい(70.53度になっていない)かのどちらかです。

トップに戻る

4.バランス取り

モーター駆動の場合それほどデリケートではありませんが、フリーストップ架台の場合バランスは重要です。バランスは望遠鏡を水平に向けた姿勢と天頂に向けた姿勢の両方を調整します。
水平姿勢のバランスは鏡筒バンドに対して鏡筒を前後させます。

天頂姿勢のバランスはおもりを付加するか耳軸の位置を変えるかのどちらかで調整します。この作業を現地で行うのは無理なので事前に確認と調整を行っておいてください。
言うまでもなく、バランス調整を行う場合はアイピースやファインダーなど想定しているアクセサリー類をすべて装着して行ってください。鏡筒のフードが伸縮タイプの場合は伸ばした状態でバランス調整してください。

トップに戻る

5.目幅の調整

目幅は人によって異なるので、双眼望遠鏡を『双眼』で見るためには目幅調整が必要です。その手順は次の通りです。
アイピースを取付け、実際に双眼望遠鏡を覗いてください。それぞれの目に円形の視野が映ります。この時点でピントは合っていてもいなくてもどちらでもかまいません。
次に片方の目を閉じ、開いた方の目に映る円形の視野が目の中心に来るよう顔の位置を動かします。顔の位置が決まったら今度は閉じる目を逆にし、もう一方の目に中心に円形の視野があるかどうかを見ます。中心にあれば目幅は合っていることになります。合っていなければ目幅調整機構を操作して中心に来るようにしてください(目幅調整機構の詳細は技術解説参照)。
【注意】目幅調整は倍率が高くなるほど正確に行わなければなりません。その許容差は射出瞳径までです。
例えば口径100mm、焦点距離800mmの鏡筒に焦点距離8mmのアイピースを使うと倍率は100倍で射出瞳径は100mm÷100=1.0mmとなります。この場合目幅62mmの人は双眼望遠鏡の目幅を62mm±1.0mmに調整する必要があります。

トップに戻る

6.EZMのミラー調整

目幅の調整が完了したら最後はEZMのミラー調整です。この調整で左右の映像を一致させます。ミラーの最適角度も人によって微妙に異なるのでご注意ください。
まずは双眼望遠鏡を覗いて左右のピントを合わせてください。次に右目の視野(どちらからでも可)の真ん中付近に明るめの星を導入してください。このとき両目に映る中央付近の星がひとつに重なって見えればEZMの調整は完了です。一致していない場合は右側EZMの第1ケース(対物レンズ側のケース)底面にある2つの調整ねじを操作して一致させてください。片方のネジが上下方向、もう一方のネジが左右方向の調整になります。
以上の作業で双眼望遠鏡の設置は完了です。
【注意1】昼間に行う場合、必ず100m以上離れた景色で調整してください。近距離の景色で合わせると視差の影響で視野回転が発生します。合わせる景色は遠ければ遠いほど好ましいです。
【注意2】近いものを見ようとする目線(立体視の交差法のような目線)でEZMの調整をしないよう注意してください。この目線で調整すると、左右の星像を一致させたとき視野円が左右にずれます。遠くを見るような目線で行うのがEZM調整のコツです。

トップに戻る