小笠原で星を見てきました -3:おが丸での船旅

ところでなぜこの時期(6/29-7/4)を選んだか、ですが、参考にしたのは父島の月別降水量の推移です。これによると雨が最も少ないのは1月~3月。その次が7月です。7月というと本州は通常梅雨の真っ最中ですが、小笠原は梅雨前線のはるか南になるので雨が少ないようです。夏の天の川が見たかったのでこの時期の新月期を選びました。

さて無事おが丸に乗り込み、いよいよ出航です。桟橋では関係者による送迎がありました。

ひときわ目立つ着ぐるみはマスコットキャラクターの「おがじろう」
海の色がどす黒い。。。
レインボーブリッジ(違ってたらすみません)通過

船内の食事ですが、レストランと展望ラウンジがあり、さらに売店もあるので、食べることには困りません。「売り切れ」もなかったので、早い時間に焦って食べに行く必要もありません。

驚いたのは7デッキ(船では「7階」といわず「7デッキ」と言うようです)の展望ラウンジの光景です。自分の部屋に荷物をおいて一息ついたあと展望ラウンジを覗いてみたらすでに満席で酒盛りが始まっていました。おそらくこの人たちはリピーターさんで、乗船直後に席を取ったと思われます。同じように屋外デッキの円卓も酒盛りで満席でした。

スマホの電波は東京湾を出ると入らなくなりました。次に電波が入るようになったのは父島到着1時間前です。強制的なデジタルデトックスです。

特2等寝台以上の部屋にはテレビがありますが、スマホの電波と同じように地上波が入るのは東京湾までです。ただし衛星放送はずっと入りました。また船内放送も何チャンネルかあり、洋画、邦画、アニメ、おが丸の航行状況などが常時配信されていました。

船内放送のひとつ、おが丸の航行状況。出航から4時間以上経過してもやっと東京湾を抜けたぐらい。

各フロアには鍵がかかる個室タイプのシャワー室もあります。24時間の船旅ですからこういう施設もありがたいです。

日没直後の屋外デッキからの眺め

屋外デッキは夜の10時から日の出30分前までは出ることができませんでした(おそらく安全上の措置)。それでも夜10時前に屋外デッキに出てみたら、雲間からはくちょう座あたりの天の川が濃く見えていました。父島の天の川への期待がますます高まってきます。

ちなみに屋外デッキはすべてブリッジ(艦橋)の後方にあるので、進行方向の空が見えません。つまり父島に向かうとき、いて座方向の天の川(=南側)は見えません。これはちょっと残念でした。

しかし大ラッキーもありました。明け方グリーンフラッシュを見ることができました!生まれて初めてです。日の出前屋外デッキに出てみたら割とよく晴れているので「ひょっとしたら」という思いで凝視していたら本当に見えました。時間にしたら1秒から2秒ぐらいでしょうか。かなり強い緑色の光でした(もっと弱い光を想像していました)。日の出を告げる閃光です。同じデッキにいた人たちとこの大幸運を喜び合いました。

日の出直前の東の空。このあとグリーンフラッシュが!

小笠原に近づくと、いよいよ海の青さが際立ちます。別世界に来たことを実感します。

この海の青さと言ったら。遠方の島影は小笠原諸島。

そしてついに父島到着。

やっと下船。

このあと港に迎えに来ていた宿の方の送迎で予約していたペンションに入りました。

宿泊先のペンション。手前の道路は父島のメインストリート「湾岸通り」。

小笠原で星を見てきました -2:おが丸に乗るにあたって

前回書いた通り、小笠原諸島に行くにはおがさわら丸(通称「おが丸」)に乗るしかありません。このチケットの入手方法はいくつかあります。私の場合は宿とセットになったツアーを扱うナショナルランド(小笠原旅行専門のツアー会社)を通じて申し込みました。正確な比較はしていませんが、一般的な旅行会社のツアーよりもお値打ちのようです。

おが丸に乗船する竹芝客船ターミナル(JR浜松町駅から徒歩約10分)

ツアーを申し込むにあたって最初に決めなければいけないのは、母島まで行くかどうかです。母島へ行くには父島で船を乗り換えて、さらに片道約2時間の船旅になります。父島よりもさらに人口が少ないので、いっそう空が暗いことが期待されますが、往復で4時間以上、つまり約半日船に乗る時間が増えてしまいます(父島・母島間の船はほぼ毎日運行)。その時間が惜しかったのと、今回欲張って海のアクティビティもしたかったので、それが充実している父島オンリーのツアーとしました。ちなみに母島にもペンション等の宿泊施設はありますが、その数は父島に比べるとぐっと少ないようです。

おが丸は約800人乗れる大型客船(私が行ったときは新型コロナの関係で約500人乗船)で、船室はいくつかのグレードに分かれています。プライバシーが確保されるのは2等寝台からになります。私の場合、行きは1等室、帰りはそれよりワンランク下の特2等寝台を利用しました。特2等寝台はベッド横の通路に他人が入ってこない構造になっているので、比較的セキュリティが確保されます。上のランクになればなるほど快適ですが、お値段もそれなりになるので、私としては特2等寝台で十分でした。

出発の4ヶ月ほど前にツアーの申込みを行いましたが、船室も含めてツアーが確定するのは約2ヶ月前です。これはナショナルランドの都合ではなく、おが丸を運行する小笠原海運の都合と思われます。ナショナルランドによると、早く申し込めば希望の船室が予約できるというわけでもなく、かといって抽選でもないそうです。じゃあ、どうやって決めるの?と思いましたが、結果としては希望通りの船室で行けることになりました。

今回少し面倒くさかったのは、直前のPCR検査が必要だったことです。これはいずれなくなると思いますが、私が行ったときはまだ必要でした。出発の1週間ほど前に検査キットが送られてきて、出発前日の96時間以内にサンプリングした検体を送り返しました。出発の前日までに連絡がなければ陰性ということだったので、ちょっとどきどきでした。万が一陽性の場合はもちろん船に乗れず、予約もすべてキャンセル(有料!)となります。結局陽性の連絡がなかったので、無事出発できることになりました。

竹芝客船ターミナル内のナショナルランドブース。ここで乗船チケットを受け取る。

小笠原で星を見てきました -1:はじめに

6/29-7/4の日程で小笠原諸島・父島へ行って、ものすごい天の川を見てきました。何回かに分けてそのレポートをさせていただきます。

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まずは小笠原諸島についてですが、東京から南へ約1,000キロ。人が住んでいるのは父島(人口約2,000人)と母島(人口約450人)だけです。

出航直前のおがさわら丸

父島に空港はないので、行くには6日に1回東京から出航する「おがさわら丸」に乗るしかありません。なので最低でも6日間の旅程になります(ただし夏休み等のハイシーズンは3日に1回出航するようです)。

しかもこの船旅、片道きっちり24時間かかります。したがって6日間の旅行といっても、現地で3泊、残りの2泊は船中泊となります。つまり星を見るチャンスは3晩しかありません。

星見を計画したのは半年以上前からですが、意外なことに小笠原の詳細な星見情報をネットで見つけることができませんでした。実際現地でも本格的に星見をしている人には出会えませんでした。ロケーションから考えると空の暗さは容易に想像できるのですが、「船しかない」「最低6日間」がハードルとなって、実際に行く人は少ないのかもしれません。

そういう意味でこのレポートは、これから小笠原行きを計画される方の参考になるような情報を盛り込んでいきたいと思います。

タカハシ鏡筒用ペンタックスファインダー台座

少しややこしい仕様ですが、タカハシ製鏡筒にペンタックス製ファインダーを取り付けたいというご要望があったので製作しました。ペンタックス製ファインダーは正立像であり、なおかつ像質が良いので、鏡筒が変わっても使いたいというリクエストです。

ペンタックス製ファインダーは3センチと5センチの2サイズあり、それぞれ大きさが異なりますが、どちらも取付可能なマルチ仕様です。

ペンタックス製3センチファインダーを取り付けた状態
ペックタックス製5センチファインダーを取り付けた状態

双眼望遠鏡とは直接関係ありませんが、ビノテクノはこういうご要望にも対応しています。

Mewlon180C/210用 EZM特別仕様セット(スターベース東京様扱い)

スターベース東京様からMewlon180C/210用 EZM(正立天頂ミラー)特別仕様セットが発売されました。

Mewlon180C/210側(鏡筒側)もEZMもノーマル状態ではバックフォーカスがわずかに足らずピントが出ません。しかし幸いなことに鏡筒側の2インチスリーブは全長約40mmと長いので、このスリーブとEZM側の2インチバレルをそれぞれ切り詰めるとピントが出ます。このセットはそういう仕様になっています。正立像であるだけでなく、濃くてクリアな惑星像が楽しめます。これから本格的な惑星シーズンとなりますので、Mewlon180C/210をお持ちの方はぜひこのセットの導入をご検討ください。

※ このセットの販売は、スターベース東京様からのみとなります。ビノテクノからの販売はしておりません。

ビノテクノ製品の光軸が狂わないカラクリ

ビノテクノ製の双眼望遠鏡は、お客様の手元に届いたその日からすぐに観望が楽しめます。調整不要の構造になっているので、お客様の方で何日もかけて光軸を追い込んでいくといった作業は必要ありません。また使っていくうちに光軸が狂ってくるという不具合も発生しません。

今回はそのカラクリの一部を紹介します。

EZMを構成する頂角60度の2つのミラーケースは、70.53度のねじれ角度で接続すると、90度正立となります(詳細はこちら)。そのためEZMのミラーケースは、その角度でしか接続できないよう、位置決めピンが埋めてあります。

対物側ミラーケース(中間リング取付面)
アイピース側ミラーケース(中間リング取付面)

取付面を時計の文字盤に例えて12時の位置に見えるのが位置決めピンです。それ以外の穴はすべてネジ穴です。

中間リング(アイピース側)

12時の位置にある長穴が位置決めピンの入る場所です。余談ですがこの場合の位置決め穴を丸穴ではなく長穴にするのは機械設計の定石です。

中間リング(対物側)

上の写真では、2時の方向と10時の方向に見えるのが位置決めピンのための長穴です。正確に言えば、12時の方向を0度として、時計方向に70.53度と、反時計方向に70.53度の位置です。どちらの穴を使うかで右用と左用が決まります。

ちなみにこれらの位置に正確に位置決めピンの穴を施すのは職人芸でもなんでもありません。プロの加工業者なら普通の加工です。逆に言えば、普通の加工レベルの部品構成で要求性能を実現させるのが、設計者の腕の見せどころです。

クレードル本体ベース

鏡筒を連結して目幅調整を行うクレードルについても同様のカラクリが施してあります。位置決めピンを使って鏡筒の平行を確保しています。写真では4個の位置決めピンが見えます。

鏡筒バンド(下側)の取付面

取付面の3つの穴のうち、真ん中の穴が位置決めピンのための穴です(この場合は丸穴で大丈夫です)。

市販の鏡筒バンドではこのような位置決め穴がないので、双眼望遠鏡に必要な鏡筒の平行状態の確保が難しいです。しかも固定ネジが緩むとすぐにずれるので不安定です。

このようにビノテクノ製品は、要所要所に位置決めピンが埋めてあるので、調整レスであり、使っているうちにずれる心配もありません。

ここからは余談ですが、

私は3年前まで株式会社デンソーで35年間設備設計の仕事をしていました。そこで培った設計技術のひとつに、「カンコツ調整に頼らない設計」というものがあります。ちなみに「カンコツ」というのは「勘」と「コツ」の意味で、特定のベテランの感覚的なスキルを指します。そのスキルの習得には敬意を表しますが、その人しか調整できない設備はデンソーではNGです。

今回紹介したEZMとクレードルのカラクリ(=設計上の工夫)はまさに、デンソー在職中に獲得した設計技術が反映されています。

FC-76DC対物ユニット双眼望遠鏡

タカハシFC-76DC対物ユニットを使った双眼望遠鏡です。この対物ユニットを使った完成品の鏡筒はFC-76DCUになりますが、EZMではピントが出ないので、対物ユニットのみを使って双眼望遠鏡に仕立てました。

鏡筒の構成は、対物レンズ側から以下のとおりです。
・ FC-76DC対物ユニット
・ 特注接続リング
・ BORG 80φL100mm鏡筒BK【7101】
・ BORG M77.6→M68.8AD【7801】
・ 笠井トレーディング BORG互換アダプター
・ 笠井トレーディング V-POWERII接眼部(お客様からご支給)
・ ビノテクノ EZM

クレードルはビノテクノ CRDL-105のベース部分に80mm鏡筒用バンドを特注製作して取り付けました(FC-76DC対物ユニットの外径も80mmです)。お客様のご要望でファインダー台座は上の写真の位置に取り付けました。

納品前に昼間の景色を見たところ、色収差が全く感じられない、すっきりくっきりした、タカハシらしい見え方でした。

新対物レンズ,ボケ部も色収差なし

星を見るときには無用の性能ですが、10.2cm新対物レンズはボケた部分の色収差も皆無であることがわかりました。

下の写真は上記新対物レンズを使って野鳥撮影されている方からご提供いただいた写真です。野鳥(オオルリ)の手前の水の光り方にご注目ください。ごく自然に白く光っています。

一方下の写真は、ほぼ同口径のフローライトレンズを使った野鳥(キビタキ)の写真です(同じ方からのご提供)。こちらの写真の手前の水は紫色の色収差を伴って光っています。

ピントが合っている部分はどちらも色収差はありませんが、手前の少しボケている部分(ピントが合っていない部分)に差が出ているのがわかります。

こういった部分まで野鳥写真の仕上がりに気を配られる方にはとりわけお勧めしたい対物レンズです。

ビクセンSD60SSビノ on 特注CRDL-mini

お客様よりご提供いただいた写真

クラウドファンディングで商品化されたビクセン鏡筒SD60SS(お客様よりご支給)の双眼望遠鏡です。正立デバイスはビノテクノ製EZPです。

お客様よりご提供いただいた写真

クレードルはビノテクノ製CRDL-miniを少しだけ特注アレンジしたものです。通常CRDL-miniは横抱きですが、写真の通り、小型の経緯台Giro Ercole Mini(お客様よりご支給)の両端に30mm角アルミフレームを固定する、いわゆる『逆ブランコ』形式で取り付けました。

バランスウェイトは1個あたり3.7kgのもの(お客様よりご支給)を両サイドに計2個取り付けました。SD60SS鏡筒はつくりがしっかりしているので意外と重いバランスウェイトが必要です。

今回鏡筒を1本だけお預かりしていたので昼間の景色を見てみましたが、外観同様、高級感の漂う像質でした。この鏡筒の双眼で月面を見たらさぞ素晴らしいだろうなと思いました。

ちなみに最近のビノ製作においては、製作実績のある鏡筒の場合、基本的に鏡筒はお預かりしません。預かっても、EZMのX-Y調整ネジ(CRDL-miniの場合は鏡筒のX-Y調整機構)で双眼視できることを確認するだけです。

そもそもX-Y調整ネジ以外の調整機構はないので、万が一双眼視できないときはパーツの加工不良が原因となりますが、信頼できる業者に加工を依頼しているので心配していません。実際今まで双眼視できなかったことは一度もありません。

むしろ鏡筒を預かると、新品の鏡筒を気づけないか心配ですし、送料も余分にかかります。こういった理由で鏡筒のお預かりは最小限にしています。

ただし今回は新規の鏡筒だったので、1本だけ預かって想定外の干渉やバランス、ピントが出るかどうかの確認をさせていただきました。

BORG55FLビノ

BORG55FL対物レンズと2インチダイアゴナル(どちらもお客様からご支給)を使ったシンプルな双眼望遠鏡です。ピント調整はアイピースの抜き差しで行うというサバイバルな仕様です。

パーツ構成は対物レンズ側から順に以下のとおりです。

  • BORG55FL対物レンズ
  • BORG40mm延長筒
  • 特注接続リング
  • 2インチスリーブ(ビノテクノEZMパーツ流用、一部追加工あり)
  • ORION 2インチダイアゴナル

2インチスリーブ下には特注のVブロック形状パーツを介してK-ASTEC製アルカスイスアリミゾ金具が取り付けてあります。写真では単純なアルカスイスレールに2本の鏡筒を載せていますが、実際にはお客様で用意される別形状のアルカスイスレール(写真なし)に搭載されます。

ちなみに左右平行の調整機構はありません。各パーツの部品精度を信じて組み立てたら、取り付けただけでぴったり像が一致しました。

正立光学系を使っていないので像は裏像になりますが、気軽に持ち運びできる双眼望遠鏡に仕上がりました。

EZMカラーバリエーション対応

先日納品したEZMのカラーバリエーション対応です。第1ケースと第2ケースをつなぐ中間リングは通常青色アルマイトですが、今回はFounder optics製FOT85のアルマイト色ダークグリーン(旧バージョンカラー)と合わせたいというご希望に対応しました。

お客様ご提供写真

色見本としてお客様から預かったFOT85のパーツもカラーアルマイト業者に渡しておいたところ、風合いも合わせるため、前処理としてショットブラストをかけてくれました。おかげで極めて統一感のある外観が得られました。

5/1よりEZM値上げします

たいへん申し訳ありませんが諸般の事情で、5/1以降のご注文より、下記の通りEZMとその関連商品の価格を値上げいたします。

商品4/30までの価格
(税別)
5/1以降の価格
(税別)
EZMペア(アルミコート)128,000円138,000円
EZM片側(アルミコート)64,000円69,000円
BINOKIT-BORG基本セット248,000円258,000円
BINO-BLANCA102基本セット521,000円531,000円
誘電体コート、銀メッキコートへの変更オプションは変更ありません


値上げ前の価格で購入ご希望の方は、4/30までにご注文いただくようお願いいたします。

EZM金属パーツ入荷しました

「4月下旬以降」とアナウンスしていたEZMの金属パーツが、思っていたより少し早く入荷しました。お待たせしていたお客様へはこれから順次組み立てて出荷していきます。またこれからご注文をいただく場合も通常通り2週間以内にお届けできますので、ご注文をお待ちしています。

EZMの金属パーツ(ミラーケース)