プレートソルビング自動導入観望

遅ればせながらプレートソルビング自動導入観望を始めました。

ご存じの方も多いと思いますが、プレートソルビングとはCMOSカメラに写った星空から星の座標(赤経赤緯)を解析する技術です。この技術が商品に実装され始めたころはもっぱら写真撮影用の技術として紹介されていました。

「これって観望用にも使えないの?」と思っていたら、協栄産業さんのHPでその使い方がすでに紹介されていることに最近気づきました。完全に出遅れてます(笑)

ハイランダープロミナーとAM3でプレートソルビング自動導入観望を楽しもう!
AM3、AM5赤道儀の経緯台モードで天体観望を楽しもう

ご覧の通り経緯台モードでもできるとあって、さっそく機材を入手しました。買い揃えたのは、
ZWO AM5架台
ZWO ASIAIR mini
ZWO TC40カーボン三脚
ZWO AM5・新型ハーフピラーPE200
です。

それなりの金額になりましたが、こういう技術は実際に使ってみないとお客様に勧めることもできません。

AM3架台ではなくAM5架台(以下、AM5)にしたのは、10センチ双眼望遠鏡を載せたかったからです。ハーフピラーは当初ノースマウントCT-30用のハーフピーラを使おうとしましたが、なぜか取り付け座面あたりがぐらぐらしたので、純正のハーフピラーにしました。こちらにしたらぐらぐらは無くなりました。

この純正ハーフピーラを使う場合、三脚もZWO純正のTC40になりますが、これについては少し不満があります。脚がそれほど伸びないので接地半径が小さく、10キロ以上ある双眼望遠鏡を片持ちで載せると転倒の恐れがあります。そのためAM5にウェイトシャフトを取り付けてウェイトを使うことにしました。もう一段伸びたなら転倒リスクは無くなると思われるので惜しいです。ちなみにウェイトシャフトはCT-30用が流用できました。

AM5自体の剛性はケンコー・トキナーAZ-EQ6GTに劣りますが、この軽さは魅力です。持ち運びは断然AM5が楽です。

AM5に10センチ双眼望遠鏡を載せるとこんな感じになります。

バランスウェイトは外してあります

下の写真は双眼望遠鏡を外した状態です。右側の箱がASIAIR miniです。本格的な写真を撮る場合はASIAIR Plus-32GとかASIAIR Plus-256Gが必要ですが、観望だけならASIAIR miniで十分です。

電源はAM5から供給(逆でも可)

ちなみにこの架台に望遠鏡を載せるときは、アリミゾ金具に描かれた絵のとおりの向きにしなければなりません。対物レンズが逆向きになるように載せると正常に動作しません。そのためBINOKITのアリガタ金具の取り付けをいつもと逆にしました。

ガイドスコープは産業用CCTVレンズ(100mmF3.5)と、以前から所有しているZWO非冷却カメラASI462MCの組み合わせです。Askar製やZWO製のガイドスコープを使うという選択肢もありますが、こちらの方がコンパクトで安価(14,000円程度)でした。像質は劣るかもしれませんがプレートソルビングに支障がなければ大丈夫です(後述しますが実際問題はありませんでした)。

ガイドスコープ

このガイドスコープと双眼望遠鏡本体の光軸を合わせるため、SLIK 微動雲台SMH-250を使いました。この微調整機能は必須です。使ってみて分かったのですが、プレートソルビングを使った自動導入は、目標の天体を、惚れ惚れするぐらい完璧に「ガイドスコープ視野」のど真ん中に持ってきます。したがって目標天体が望遠鏡本体の視野ど真ん中に来るかどうかはこの微調整次第です。

ちなみにSLIK 微動雲台SMH-250をファインダーアリミゾ金具に取り付けるため、底面に特注サブプレートを介してMORE BLUE ビクセン規格ファインダー台座 FG304を取り付けました。

これらの機材を実際に使う場合、スマホにASIAIRのアプリを入れる必要があります。これはGoogle Playから無料でダウンロードできます。ZWOのアプリは他にも電視観望でASI STUDIOを使ったことがありますが、どちらのアプリも直感的に分かりやすいです。きっと優秀な技術者がアプリを作っているに違いありません。

それと買う前は基本的なことが分かってなかったのですが、プレートソルビングを行うのはAM5ではなくASIAIR miniの方です。ASIAIR miniはCMOSカメラの画像を取り込み、プレートソルビングで画像の赤経赤緯を解析し、目標天体までの赤経/赤緯軸修正量を架台に指示します。

ということはASIAIR miniがあれば、AM5でなくてもこの機能は使えるわけで、実際アプリの起動画面の架台選択肢に他社製架台の名前がずらりと出てきます。ただし問題は接続ケーブルで、AM5用のケーブルは使えません。例えばSky Watcher製架台に接続するには、ASIAIR mini側がUSB-A、架台側がRJ45モジュラージャックのケーブルが必要です(販売店に問い合わせるとたぶん見つかると思います)。

さて本題に戻ります。実際に使ってみました。笑いが止まらないぐらいど真ん中に導入できます。これまでも自動導入架台というのはありましたが、当たらずとも遠からずといった感じの微妙なずれ方をすることがよくありました。しかしプレートソルビングではそういうことはありません。視野がずれていたら自己修正するので必ずど真ん中に来ます。期待以上の性能です。

下の画像2つは、天体を導入したときのスクリーンショットです。使用場所は桑名市内の自宅ベランダです。肉眼では2等星ぐらいしか見えませんが、CMOSカメラはプレートソルビングを行うのに十分な星の数を映しています。

M27導入時のアプリ画面
M13導入時のアプリ画面(操作パネルオフ状態)

最後に、使ってみて分かったことを挙げておきます。

アプリ起動時、メインスコープとガイドスコープの焦点距離を入力する必要があります。先述のガイドスコープはここではメインスコープになります。ややこしいかもしれませんが、ガイドスコープの焦点距離をメインスコープ欄に入力します。

また上記焦点距離はできるだけ正しい値を入れなければなりません。いい加減な数値をいれるとプレートソルビングでエラーが発生します。余談ですが上記システムでプレートソルビングをしたところ、メインスコープの焦点距離が入力値の100mmから95mmに自動修正されました。購入した産業用レンズの本当の焦点距離は95mmかもしれません。

それからAM5を赤道儀モードから経緯台モードに変更する場合、左右の「高度固定ネジ」(どのネジかは取扱説明書参照)を必ず締め直さなければなりません。これを忘れると、望遠鏡のポジション次第でバランスが崩れて高度が急に変わり、最悪望遠鏡の落下事故につながります。

またAM5は、望遠鏡を真北水平に向けた状態で電源をいれると、その後の動作で対物レンズが下に向いたり、天頂を超えてのけぞるようなポジションを取ったりすることがありません。

というわけで、やっと究極の自動導入架台に出会えました。このシステムならお客様にも安心して勧めることができそうです。

シングルアーム架台(スペシャルバージョン)

高級経緯台で有名なノースマウントの関係者から、スペシャルバージョンのシングルアーム架台をお借りしたので紹介させていただきます。

ハーフピラーはノースマウントCT-30用

同じ構造のシングルアーム架台はすでに販売されていますが、この架台は各構成部品をサイズアップして大型機材積載に対応させたスペシャルバージョンです。

片持フォークの角度は変更可能(現行モデルと同じ)
天頂姿勢時のバランス調整も可能(現行モデルと同じ)
水平アームとビクセン規格アリミゾが一体化した構造(現行モデルと同じ)

上の写真の右側に見えるのは、それぞれ上下回転(上側)と水平回転(下側)のクランプハンドルです。微妙なフリクション調整ができるのはCT-20やCT-30と同じですが、シングルアーム架台ではさらに完全なクランプができます。

ちょうど出荷前の10センチビノがあったので、ビノの底部にアリガタ金具を取り付けて載せてみました。上下回転がクランプできるのは着脱時とてもありがたいです。

水平アームに載せるのでビノ落下のリスクは小さい
載せたビノはBLANCA-102SEDビノ

そもそもこのスペシャルバージョンは、10センチビノを想定して製作されたそうです。そのおかげで、見た目にも収まりがいいです。

これで実際に星を見てみると、30倍程度ならまったく問題ありません。70倍ぐらいでは触ると視野が揺れますが、手を離すとすぐに揺れが収まります。揺れ具合は残念ながらCT-30に劣りますが、これはシングルアームという構造の特性でやむを得ないことです。

逆にCT-30に対してのメリットは、転倒リスクが小さいことです。全体の重心が三脚中心からそれほど離れていないので、三脚の接地半径を気にしなくても大丈夫です。

また架台本体の重量は約4.4kgです。

ちなみにこのスペシャルバージョン架台は4台のみ製作された限定モデルで売り切れたら終わり、その後の製作予定はないそうです。

本来ビノテクノはメーカーであって販売店ではないのですが、関係者のご希望を受けてビノテクノから販売します。価格は税別130,000円(税込み143,000円)。納期は2週間程度です。

ユーザーレポート

ユーザー様から、スマホやゲームパッド活用のレポートをいただいたので転載させていただきます。

自分は双眼望遠鏡の架台として、AZEQ6,AZ-EQ5を経緯台モードで使用しており、これにWi-Fiアダプターを取り付けてアンドロイドタブレットでsynscanとSkySafariで操作しています。既にやって見える方もお見えかもしれませんが、ちょっとした工夫で大変便利になったのでリポートいたします。

観測中にWi-Fiが途切れ、アライメントをやり直すこともしばしばありました。自分の場合は下記の方法で、ほとんど途切れなくなりました。

① タブレットの設定で、操作が行われない場合の画面消灯までの時間を長めに設
定します。(自分の場合30分)

② synscanとSkySafariを分割表示で同時に立ち上げます。タブレットによって
はどちらかの画面を大きめにすることができるので、アライメントした後はSkySafariを大きめにしています。(古いアンドロイドでは分割表示機能が無いようです)

③ 画面を暗くするアプリを入れると、眼視では大変便利です。(ナイトスクリー
ン等)
次にタブレットを操作する上で不便なのが望遠鏡の向きの微調整です。⇒ をタッ
プするためにいちいち望遠鏡から視線を外し、ボタンの位置を確認してタップす
る必要があります。また、手元にタブレットを持っていないといけない、逆に固
定すると微調整がやりにくい等の問題がありました。付属コントローラーを使え
ば解決ですが、それだとSkySafariが使えません。
調べているうちに、synscanはゲームパットが使用できることがわかったのでやってみました。これが大変調子よいです。
ゲームパットはsynscanのマニュアルに記載のあるXboX 用を使用しました。(真ん中のボタンは光ってまぶしいのでシールを貼り、ボタンの縁から漏れる光をシャットアウトするため、一回り小さいワッシャを両面テープで貼ってあります)

以下手順です。
① タブレットとの接続はBluetooth接続もできますが、それだと架台とのWi-Fi が途切れやすいのでケーブルを使用しています。(接続には必ずOTG ケーブルを使用)

② ゲームパットを使用する場合は、分割表示されているsynscanの部分をどこでも良いのでタップしてから操作します。(これはSkySafariがゲームパットに非対応ため)

SkySafariで導入して望遠鏡が動いている間でもsynsca部分をタップすればOKです。

後は望遠鏡を見ながら操作。左のジョイステックで上下左右、右のジョイスティックの左右で速度変換です。この機能だけで十分ですが、他にもボタンで操作できる機能がありますので、synscaのマニュアル( 英語) 参照してください。
尚、写真のゲームパットホルダーは100円均一で購入した台所の水栓に引っか
けて使うスポンジホルダーです。それを同じく100円均一で購入した道具を束ねるコムバンドで固定しています。EQ5の脚には恐ろしいくらいぴったりです。(セリアで買いました)
また、タブレットの分割表示は、SkySafari+ASIcapでも当然使え、ビノ
ブログのレポートにある自作電子ファインダーでも1 台のタブレットで並べて見
えるので大変便利です。

I様。貴重なレポートありがとうございました。

昇降式ピラー三脚販売します(1台限定)

売約済み

高級フリーストップ経緯台ノースマウントを製作しているメーカーの試作品です。訳あってビノテクノが入手しましたが、処分販売いたします。

設置半径は約450mm。地上から架台取付面までの高さは680mmから970mmです(上の写真は高さ680mmの状態)。

上の写真は高さ970mmの状態。この状態で大人一人分の体重をかけてもびくともしません。

ピラー下部の取っ手が昇降ハンドル、上部のハンドルがクランプになります。ご覧のとおり、ガンメタリックカラーの美しいアルマイトが全体に施されています。

架台取付部は3/8カメラネジです。ノースマウントならそのまま取付可能です。ビクセンやタカハシ製の架台も、別途特注アダプターを製作すれば取付可能です(ご希望があれば承ります)。

石突きはこんな感じです。

バッグも付属します。総重量は約15kgです。まあまあ重いです。

聞くところによると、メーカーはこれを試作したものの、あまりにも手間がかかるので製品化を諦めたそうです。出来栄えが素晴らしいので個人所有したい気持ちも強かったのですが、実際に使う出番がなさそうなので、使っていただける方に譲ることにしました。昇降機能があるので、大型双眼鏡のピラーとして使うのもよいと思います。

なお販売価格は
税込240,000円(送料込み)
です。引き取りに来ていただける場合は5,000円引きです。

AZ-EQ6GT-J改造

お客様のご依頼で、ケンコー・トキナーのデュアルモード(赤道儀と経緯台)架台AZ-EQ6GT-JにNinja320鏡筒を載せるための改造を行ったので紹介させていただきます。

改造内容は主にふたつで、ひとつは経緯台モードでの剛性アップ、もうひとつは、Ninja320を取り付けるための逆ブランコ方式(勝手に命名)のフレーム取り付けです。このブログをご覧になっている方はお気づきと思いますが、どちらも以前製作したTOA130ビノの類似設計になっています。

写真の向かって右の黒いかたまりはバッテリーです。写真では見づらいのですが、下に支えのL型板金ステーがあります。その下に見えているアルミの厚板には、バランスウェイト用のシャフトが取り付く予定です。反対側(左側)のシャフトもバランスウェイト用です。

逆ブランコのてっぺんに見えるアリミゾ金具はKASAI大型アリミゾ金具で、ここにNinja320が取り付きます。Ninja320のオリジナル状態ではアリガタ金具がないので、お客様の方からバックヤードプロダクツ様に依頼して付けてもらうとお聞きしています。

上の写真は、鏡筒の接眼部側から見たアングルになります。幅広のアルミフレーム(40X120mm)から突き出た細いアルミフレームの先端には、SynScanコントローラのホルダーが取り付けてあります。ちょうど接眼部に近い位置になります。AZ-EQ6GT-JにWi-Fiアダプターを取り付ければスマホから操作できますが、SynScanコントローラの方が使いやすいというオーナー様のご要望でこの仕様にしました。

アリミゾ金具クランプノブの操作性向上のため、逆ブランコのトッププレートの一部を切り欠きました。トッププレートに対してアリミゾ金具との距離を取ればこの切り欠きは不要ですが、それでは鏡筒重心が架台の不動点からさらに離れてしまうのでこの方法を取りました。鏡筒重量は25kgぐらいのはずなので、安易に不動点からの距離を大きくしてしまうと、追加するバランスウェイトが増えてしまいます。地味な配慮ですが、架台の耐久性を考えると、バランスウェイトを最小限に済ませることは設計上大事なポイントです。

すでに販売中止となっていますが、Ninja320はドブソニアンの中でも優秀な光学系を搭載しているので、これを自動追尾架台に載せたいというご希望はよく理解できます。しかしアリガタ金具を取り付けて普通の赤道儀に載せても鏡筒回転装置がないので、この口径では実用上無理があります。そのソリューションとしてこの事例をご覧いただければありがたいです。

TOA130ビノ完成

これまで何回かに渡って製作途中を紹介してきたTOA130ビノがやっと完成しました。あらためて写真で紹介させていただきます。

単体では大げさに見えるEM400用のメタル三脚も、この組み合わせになると違和感がありません。

バランスウェイトはAZ-EQ6GT-J付属のものです。

ご支給いただいたTOA130鏡筒は写真用のタイプです。4インチフォーカーサーの太さと剛性は迫力があります。

上の写真の左側鏡筒が固定側、右側が移動側です。

上の写真の手前左側に突き出ているのが目幅調整ハンドルです。

以下は組み立て手順の概要です。

まずは三脚設置。

その上に補強済みの架台本体を載せます。

両側のアリミゾ金具にフレームを取り付け。

フレームの上にクレードルを取り付け。

バランスウェイトを取り付けた後、鏡筒を載せます。

EZMの傾きをそろえたら完成。

あわてると落としたり傷をつけたりするので、あえてゆっくり組立作業を行います。所要時間は10~15分程度です。

架台の動作確認のため、実際に外に出して夜空の下でアライメントから自動導入までを行いました。結果はまったく問題ありませんでした。AZ-EQ6GT-Jは静かに、そして正確に目標天体を導入してくれました。カタログ的には明らかなオーバースペックですが、三脚中心と水平回転軸、そして不動点を一直線上に一致させると、搭載可能重量は格段に増えることが分かりました。AZ-EQ6GT-Jのポテンシャルは高いです。この手法は、少なくともこの重さの鏡筒までなら有効です。例えばBLANCA-125SED鏡筒ならTOA130より軽いので、三脚はAZ-EQ6GT-J付属のものが使えそうです。

ところで、肝心の見え味はどうかというと、それは想像通り素晴らしい見え方です。市街地なので球状星団ぐらいしか楽しめないのですが、それでもM3などは倍率を上げると中心から周辺まで星粒感に満たされて、さすがTOA130と思いました。これがお客様の手元に届いて本当に暗い空で見たとしたら、至福の時間を過ごされるはずです。

パーフェクトバランスキット

フリーストップ経緯台を使う場合、望遠鏡の重心バランス(以下、バランス)はとても重要です。スムーズに動かすため、できるだけフリクション(摩擦)を与えたくないのですが、バランスが崩れていると、ある程度のフリクションを与えざるを得ません。ノースマウントに代表されるような良質の経緯台なら、多少のフリクションを与えてもそれなりにスムーズに動かせますが、それでもフリクションは最小限にしたいものです。逆にいうと、バランスを完璧に取れば快適な観望が実現します。今回の内容は、これを解決するための、Tの字型フリーストップ経緯台用に特化した提案です。

まずバランスは、2種類あります。ひとつは鏡筒水平時のバランス、もうひとつは鏡筒垂直(天頂方向)時のバランスです。この両方のバランスを取れば、水平から垂直まですべての高度ポジションでバランスが取れていることになります。(参考→ビノテクノホームページ『使い方-バランス取り』

水平時のバランス取りは比較的容易です。鏡筒バンドに対して鏡筒取り付け位置をずらせばバランスが取れます。さらにアリミゾ金具内でアリガタ金具の取り付け位置をずらせば微調整ができます。

問題は垂直時のバランスです。ビノテクノも含めたメーカー側は、一応「当たらずとも遠からず」の位置に重心を設定していますが、使うアイピースやファインダーの重さで重心位置が変わります。この重心位置は割と微妙で、5ミリ変わるとバランスが崩れたりします。一部のユーザー様はこのためのバランスウェイトを自作で取り付けていらっしゃいますが、取り付けずに済むなら取り付けたくないはずです。

そこでひとつめの提案です。今回こういうものを作ってみました。

ご覧のとおりシンプルな構造です。アリミゾ金具の背面にアリガタ金具を90度回転させて取り付けたものです。これを経緯台に取り付けます。水平時のバランスは写真手前側のアリミゾ金具と望遠鏡のアリガタ金具の位置で微調整します。垂直時のバランスは写真背面側のアリガタ金具と架台のアリミゾ金具の位置で微調整します。

これで水平時も垂直時もバランスが取れるのですが、実際の運用ではもう一つ困ったことがあります。それは、重さの異なるアイピースに交換すると、せっかく合わせたバランスが再び崩れてしまうことです。このため一部のユーザー様は、最も重いアイピースと同じ重さになるよう、ウェイト代わりの金属リングを軽いアイピースに抱かせて運用されています。これはこれでひとつの解決方法ですが、手間とコストがかかります。

そこでふたつめの提案です。使うアイピースを2種類(多くの場合、重い低倍率用のアイピースと軽い高倍率用のアイピース)に限定し、両方ともあらかじめ望遠鏡に載せておく方法です。載せる位置も、できるだけ同じ位置にしておきます。そうしないと意味がないからです。下の写真は、実際に製作した試作品です。(冒頭に紹介したアリガタ/アリミゾ金具も取り付けてあります)

ちなみにパン棒の素材は工業用アルミフレームです。グリップエンドには持ちやすいように円弧状断面のゴム(元々は滑り止め用パーツ)が埋め込んであります。

実際にこの2つのアイテム(「アリミゾ/アリガタ金具」と「アイピースホルダ付きパン棒」)を取り付けることで、完璧なバランスが取れるようになりました。特に「アリミゾ/アリガタ金具」は、双眼望遠鏡に限らず有用です。

ただし実際の運用では、アリミゾとアリガタ金具の位置調整を毎回行うのは煩雑です。一度バランスを合わせたら、その位置をシールか何かでマークしておく方法がよいと思います。

そういうわけでまずはビノテクノ直販でこの2つのアイテムを販売します(注文が多くなった場合は型番モデル化して販売店様からでも購入できるようにします)。品名、仕様、価格は次のとおりです。

品名:パーフェクトバランス金具(上記のアリミゾ/アリガタ金具)
仕様:ビノテクノ製ロスマンディ互換幅アリガタプレート
   笠井トレーディング製KASAI大型アリミゾ金具
価格:24,000円(税込価格26,400円)

品名:マルチパーパスパン棒(上記のアイピースホルダ付きパン棒)
仕様:BINOKIT-BORG専用
   アイピースホルダ穴は2インチサイズ
価格:22,000円(税込価格24,200円)
※ BINOKIT-BORG以外用も特注として承ります。

TOA130ビノ(製作中)

タカハシTOA130NFB鏡筒を使った双眼望遠鏡(特注品)です。まだ製作途中ですが、ある程度形になってきたので紹介させていただきます(見苦しい背景ですみません)。

三脚はタカハシ製EM400用メタル伸縮三脚、架台はケンコー・トキナー製AZ-EQ6GT-Jを流用したものです。もう1本の鏡筒は入荷待ち、EZMも特注パーツの入荷待ちのため取り付けてありません。

当初AZ-EQ6GT-J付属の三脚使用を検討しましたが、オーナー様の希望もあってこの三脚にしました。単体で見ると過剰に思える太さですが、こうして組み上げてみると違和感がありません。

写真の左下方の大きく伸びた部材は40mmX120mmの工業用アルミフレームです。三脚に当たらないギリギリの長さにしてあります。写真ではバランスウェイトが1個(5kg)取り付けてありますが、最終的には3個(計15kg)でバランスする計算です。

工業用アルミフレームに対してバランスウェイトが写真手前側にオフセットしてあるのは、鏡筒バンドに接眼部を近づけたかったからです。TOA130鏡筒を持ったことがある方は分かると思いますが、対物レンズがとても重いため、鏡筒の重心がずいぶん対物レンズ寄りになっています。この重心に鏡筒バンドを取り付けると、鏡筒バンドと接眼部が離れ、結果として、望遠鏡の上下の向きが変わると接眼部の高さが大きく変わってしまいます。これを避けるためのバランスウェイトのオフセットです。

鏡筒バンドはいつも通りの構造です。ボルト(写真では写っていません)を締めると上側のレバーが内側に寄って鏡筒をクランプします。

写真の右側の鏡筒バンドが固定側、左側が可動側です。左端のツマミを回すと可動側の鏡筒バンドが左右に動いて目幅調整できます。

外からは見えませんが、鏡筒平行に関わる部品の合わせ面にはすべて位置決めピンが埋めてあります。

鏡筒バンド下に位置しているベースプレートと架台本体の間に数十ミリの隙間があり、本当はもっと詰めたいところですが、望遠鏡が天頂を向くと本体正面パネルに取り付けられているケーブル類(写真では外してあります)と干渉するので、やむなくこの隙間が設けてあります。

それにしてもこのクラスの鏡筒(1本約13kg)になると問題は架台です。今回オーナー様は「自動追尾&自動導入」を強く希望されました。自動追尾&自動導入が可能で、この荷重(ウェイトを含めた総重量約50kg)に耐えられる市販の架台はそれほど選択肢がありません。私の知る範囲では海外製のPantherTTS-300ぐらいです。ただしこの架台は日本に代理店がないので、故障した場合のサポートに不安があります(お値段もそれなり)。そこで今回はAZ-EQ6GT-Jを補強して使うことにしました。具体的には架台下部のフォーク部品(下の写真)を取り去り、アルミの厚板でサンドイッチして三脚に固定してあります。この構造のおかげで、少なくとも鏡筒を1本載せた状態ではグラグラ感がまったくありません。

このフォーク部品をそのまま使った場合の問題点は2つあります。ひとつは、経緯台モードの場合、不動点(水平軸と上下軸が交わる点)が三脚中心の真上に来ないこと。もうひとつは、フォークの剛性が邪魔をして架台回転部を強固にクランプできないことです。もちろんこれらは、カタログスペック(片持ち15kg)を満足させることに対してはまったく問題ありません。今回は超過剰な使い方をするのでこのような補強をしました。

この状態(鏡筒1本の状態)で架台の電源を入れて動かしたところ、最大速度(RATE=9)でも問題なく静かに動きました。もっとも、この状態で推定総重量は30kg弱ですから、これで無理があるようなら話になりません。

また、機能とは直接関係ありませんが、今回は架台の白色を意識して、アルミ部品は全て白色アルマイトに統一しました。

完成は2月以降になると思いますが、出来上がり次第またこちらに報告させていただきます。

BORG 107FL Bino @digiborg

アストロヒューテック様(アメリカ)のブログに、BORG107FLビノ(クレードルとEZMはビノテクノ製)とiOptron製架台を組み合わせた写真が掲載されました。

BORG 107FL Bino

BORG107FLビノもそれなりに大きい機材ですが、この組み合わせはとてもバランス良く見えます。

この架台やケンコー・トキナー製AZ-EQ6GTは自動追尾ができるので惑星観望も楽しめます。優秀なフリーストップ架台でも惑星観望は可能ですが、便利さの点では自動追尾架台に勝てません。もちろんその分重いのですが。。。

高剛性フリーストップ架台 売ります(1台限定)

【売約済み】2018.5.13

以前このブログで紹介した高剛性フリーストップ架台を1台限定で販売します。

内容は以下の通りです。

  • 伸縮式ピラー三脚
  • 経緯台ヘッド
  • ロスマンディ規格アリミゾ金具
  • キャリーバッグ
  • シーティングプレート
  • ウェイトシャフト(直径20ミリ)

デモ品であったため、外観に多少のこすれ傷があります。ただし機能上有害な傷や故障はありません。

価格は28万円(税込、送料込)です。

三脚のみ、経緯台ヘッドのみの単品販売はいたしません。

先日のブログでは「韓国ガレージメーカー製」と紹介しましたが、製作されたのは韓国の盧(ノ)さんという方です。最近まで日本に製品が入ってきていなかったので、日本ではほとんど知られていませんが、この方が製作する架台は”Noh’s Mount”(ノース・マウント)と呼ばれ、韓国の天文ファンの間では有名だそうです。

この製品を紹介してくれた知人によると、この盧さんはかつて韓国の財閥系企業で新製品の試作品を作る仕事に従事されていました。リタイアしたあと、そこで磨いたスキルを趣味の天文に生かそうと、望遠鏡用の架台を作り始めたそうです。金属部品はすべて自ら加工されていますが、そのレベルの高さは写真からもわかっていただけると思います。

また、写真での紹介はありませんが、ノース・マウントの経緯台ヘッドは内部に空間がほとんどありません。そのため、コンパクトながら高い剛性を実現しています。さらにフリクション(摩擦)調整の機構もユニークで、操作感がすばらしいです。普通のフリーストップ架台は、摩擦調整のハンドルと締めこんでいくと、ある時から急に摩擦が強くなります。ところがノース・マウントは締めこんだ量と摩擦力(=操作に必要な力)が比例する感覚があります。簡単に思われるかもしれませんが、実はこれはとても難しい技術です。作るのが簡単と思われがちなフリーストップ経緯台も、真面目に突き詰めればこうなるという見本のような製品です。

このノース・マウントは、最近アイベル様でも扱いを始めていらっしゃいます。今回販売するセットの経緯台ヘッドは、こちらの”M”タイプのプロトタイプ品です。ただし三脚との取り付けは異なります。取り付けの互換性はないのでご注意ください。

また、伸縮式ピラー三脚は、新品を入手したい場合は特注品扱いになります。ご希望の方はビノテクノへご注文ください。価格は25万円(税抜)になります。その他のノース・マウントもビノテクノで購入可能です。

購入ご希望または内容問い合わせはビノテクノまでご連絡を。

高剛性フリーストップ経緯台

13センチクラスの双眼望遠鏡が搭載できそうな経緯台を探していたところ、「いいのがあるよ」と知人から紹介がありました。一時借用して実物を見せていただいたところ、期待以上に剛性が高く、高級感もあるので紹介させていただきます。

韓国のガレージメーカー製で、部品はすべてアルミの削り出し、ガンメタリックのアルマイトが施されています。

ピラー部は不動点高さ95センチから145センチまで調整可能。いっぱいまで高くしてもぐらぐら感はありません。

脚部は設置半径約50センチで折りたたみ可能。重さは約15キロです。

 不動点高さを床から120センチに設定した状態

 脚部から高さ調整部付近

経緯台ヘッドはシンプルな形状で、水平回転、上下回転それぞれにフリクション調整ハンドルがあります。あいにく載せる機材が手元にないので実際の使用感はわかりませんが、触った感じは動きが滑らかです。知人によると、搭載重量20キロは楽勝とのこと。見た感じ、実際それぐらいは問題なく載せられそうです。

写真のアリガタ金具はビクセン規格ですが、ロスマンディ規格もあるそうです。

 経緯台ヘッド

折りたたむと専用のキャリーバッグに収まります。

収納時に分解する部品がないので、現場設置も撤収も、素早くできそうです。

近いうちに日本でも販売を計画しているそうです。

一度知ったら止められない

導入支援は便利です。カーナビ同様、一度体験したら止められません。

かつて、そういうものを使うのは『邪道だ』ぐらいに思っていました。星図を見なくても次々と天体の導入ができる人を『人間スカイセンサー』と呼んで褒めたたえ、自分もそれを目指していました。

ところが星見の頻度が減り、マイナー天体の場所が怪しくなってくると、星図のお世話になります。そしてその作業すら億劫になってきました。そんなとき私の目の前に現れたのが導入支援です。

導入支援には、星図ソフトに表示される望遠鏡の位置を見ながら自分で望遠鏡を動かす『Push TO』タイプと、架台のモータが望遠鏡を動かしてくれる『Go To』タイプがあります。

『Push To』の代表格は、架台の2軸に取り付けたエンコーダの現在値をWi-Fiで送信できる『NEXUS』と、その現在値を取り込んで星図に表示させるスマホアプリ『Sky-Safari』の組み合わせです。エンコーダとNEXUSが組み込まれた経緯台も商品化されているようですし、自作架台用に、エンコーダとNEXUSのキットも販売されています。

一方『Go To』は、タカハシ、ビクセン、スカイウオッチャー、ケンコー・トキナーなど、メーカー製の架台に組み込まれています。これらの架台はモータ付なので、当然自動追尾機能もあります。高倍率での惑星観望などに有利です。私個人はケンコー・トキナーのAZEQ6GTという架台を使っていますが、これに搭載されているSynScanコントローラは操作が直感的にわかりやすく、重宝しています。さらに、ステラナビゲータのような天文シミュレーションソフトとも連携できます。

いずれのタイプも、昔に比べれば随分リーズナブルな価格で提供されるようになりました。架台にこういう機能があると、一晩に見られる天体の数が増えます。観望会でとっかえひっかえいろいろな天体を見せる時も、人を待たせなくていいです。

今でも自力導入で頑張っている仲間たちからは、『裏切り者』と呼ばれていますが(笑)、そのうち大半はこちら側へ来ると予想しています。