双眼装置より双眼望遠鏡の方がワクワクするワケ

よくいただく質問に「双眼望遠鏡と双眼装置の違いは?」があります。

どちらも両目で見るので片目より認識力は上がりますが、その上で「どっちがどうなの?」というのが上記の質問の趣旨です。

以前ブログにも書いた双眼望遠鏡のメリット、デメリットは以下の通りです。

[メリット]低倍率が出しやすい
[デメリット]コストが高い、大口径が作りにくい

双眼装置はこの逆です。でもこれだけでは質問者はすっきりしません。

「仮に口径も同等、倍率も同じだとすると、見え方も同じなの?」がおそらく本当に聞きたいことです。

実をいうとこの「口径が同等」は曲者で、口径面積が同等ということなら10センチ双眼とそのルート2倍の14センチ単眼+双眼装置ということになりますが、光学性能も同等となると事実上不可能で、客観的な比較ができません。

それでも自分の経験に照らせば「双眼望遠鏡の方がワクワクする」と私は答えます。

自宅ドームの25センチマクストフニュートン(単眼)を使う時は双眼装置を使いますが、双眼望遠鏡で感じるワクワク感を一度も感じたことがありません。もちろん、これで見る月面はなかなかの迫力ですが、なぜかワクワク感がありません。ところが10センチ双眼望遠鏡で月面を見ると、見えている情報量が少ないにも関わらずワクワク感があります。なぜだろうと私自身ずっと不思議に思っていました。

ところが最近、「これと同じかな?」と思える理屈を見つけました。それは天体写真です。

デジタル時代の天体写真は、何枚もの画像を重ねてS/N比を上げます。その際同じ画像を重ねることはしません。それではS/N比が上がらないからです。必ず違う時間に撮った写真を重ねます。そうすることでノイズを取り除き、対象の天体を浮かび上がらせます。

双眼装置の場合、同じ画像をコピーして左右の目に見せているので、両目で見ている安定感を除けば、それほどS/N比は上がりません。

一方双眼望遠鏡は、独立した光学系を通ってきた画像を両目で見ているので、左右の微妙な違いを脳が合成してS/N比を向上させます。この無意識のうちに行われる脳の合成がワクワク感の正体ではないかと思っています。

科学的根拠はありませんが、今のところ自分の中で一番腹落ちしている説明です。