BINOKIT+9cm対物ユニット インプレッション

先日紹介したBINOKIT on HF2経緯台のオーナー様から、初観望のレポートをいただいたので紹介させていただきます。

昨日夜からビノで初めて本格的に観望することができました。
春霞みはあったものの、一晩中快晴で楽しめました。
まず見たのは西に沈みかけのぎょしゃ座のあたりです。
冬の天の川の微光星が視野いっぱいに広がり、思わずため息が出る美しさでした。
そのまま流していくとM37からM36、M38が次々と視野に入り、周囲の星の中に島のように浮き上がっている姿が印象的でした。
この日ベストの対象はM44でした。M44は大きすぎ、長焦点の望遠鏡ではあまり美しく見えたことが無く、好きな対象ではありませんでした。
ところが、アスフェリック31mmとの組み合わせでちょうどよく視野におさまり、まるで黒い布に真珠をばらまいたような姿がとても美しく、この日何度も見てしまいました。
M3、M5、M13などの球状星団も手持ちの4cm程度の双眼鏡では「存在確認」程度の見え方だったのが、さすがに9cmもあると特徴的な姿をはっきり確認することができ、双眼視ということもあり低倍率でも意外と大きく感じました。今まで小さい対象という印象のあった球状星団の視直径は意外と大きいことに気づかされました。
2時ごろになると月とともに夏の星座が顔を出し始め、半月によって夜空は一気に明るくなってしまいました。
それでも夏の天の川にビノを向けると、星団や星列が視野いっぱいに広がり、壮観な眺めでした。
アルビレオはちょうどよい倍率に感じました。色の対比が美しく、大量の微光星をバックに夜空に浮かぶ姿に息をのみました。

以下、ビノと架台のレビューです。
ビノの第一印象は、この大きさにしてよかったということです。
対空双眼の難点は大きくかさばるという点かと思いますが、9cmの口径を欲張らないコンパクトなサイズで、とても扱いやすいです。
自宅のベランダが狭く、長い屈折鏡筒は使えないのですが、このサイズなら出すことができました。
ビノを持ってベランダと家の中を往復するにも取り回しがよく、これならちょっとした観望でも出す気になれます。
また、収納スペースをとらないのも便利です。フードを縮めてEZMを外すと長さ41cmほどになり、そのへんにある普通のサイズのラックに無理なく置くことができました。
さらに、運搬にも好都合でした。コンパクトカーの狭い荷室にも縦向きですっぽり収まるサイズで、載せ方をあれこれ悩まなくてすみました。
口径は9cmと限られているのでDSOは苦手な対象ですが、このビノと20cm反射などの大口径の鏡筒と一緒に持っていくのがよいと感じました。
その点、このビノはコンパクトなので、昨日の遠征ではビノと20cm反射を両方持っていくことができました。これが10cmを超えるビノだと私の車ではかなり厳しいと思いました。
ビノは低倍率のアイピースで固定で使い夜空を流し、単眼の大口径でDSOを見るといった組み合わせの相性がよさそうです。
ちなみに私の妻と一緒に観望に行ったのですが、ビノが楽しいようで私と取り合いになりました(笑)。
妻は単眼の望遠鏡はあまり楽しくないようで、今までは椅子に座って手持ちの双眼鏡ばかり使っていたのですが、このビノは「いいね!」と言ってもらえました。
眼幅やXY調整も初めての使用でもあっという間に調整することができ、調整が難しそうだという心配は杞憂でした。

次に架台です。
フォーク式は初めて使いましたが、T字の経緯台などに比べて全体がコンパクトに収まり、想定通り狭いベランダでも使えました。
覗きながら夜空を流すときに顔の位置を大きく動かさなくてよいのも、地味ながら利点に感じました。
当方はビクセンのASG-CB90カーボン三脚と組み合わせてみましたが、椅子に座って見るのにちょうどよい高さになり、ビノを十分支える強度がありながら軽量・コンパクトなので相性がよいと感じました。ビノと架台で20kg以内に余裕で収まり、平日にちょっと出すという使い方も十分できそうです。
試しに5mmのアイピースで木星を見てみましたが、普通のシーイングの日なら十分楽しめる解像感がありました。
ただ、HF2経緯台は低~中倍率の機材を想定しているようで、高倍率では特に高度軸のフリクションが一定以上あるので微動装置が欲しくなりました。やはりアドバイスいただいた通り50倍程度までが快適そうでした。それでも短時間であれば100倍くらいでも手動追尾はさほど大変ではなさそうです。
また、アスフェリック31mmとの組み合わせでは耳軸の位置よりもやや上に重心があるようで、天頂付近ではビノが「おじぎ」することが何度かありました。
しかしこの点は、汎用プレートの下に夜露対策ヒーターのバッテリーでも付けようかと考えていましたので、それでバランスをとれるのでむしろ好都合だったかもしれません。

総合すると、さっと出してさっと運べるセットで、今まで双眼望遠鏡の大きさや重さに抵抗を感じて踏み出せなかったのですが、これなら気軽に使い倒せそうです。
90mm F540という組み合わせは、8cmでは物足りないけど10cmでは大きく重すぎるというときの絶妙な妥協点と感じます。
低倍率を出しやすく、同時に9cmの光集力で星雲星団も美しく見え、夜空をあてもなく流すのにベストなスペックだと思いました。
これから夏の対象が見やすくなってくるので、とても楽しみです!

オーナー様、素敵なレポートありがとうございました。明け方近くまでご夫婦で楽しまれた様子が手に取るように分かります。製作者冥利に尽きます。

おっしゃるとおり、この対物レンズユニット(9cmF6)は、大きすぎず、小さすぎず、絶妙な組み合わせです。どうぞ引き続きこのビノで、楽しい時間をお過ごしください。

EZMの納期と価格について

先月今月と、いまだかつてないペースで注文をいただき、まだ数ヶ月は大丈夫と思っていたEZMのパーツがあっという間に払底してしまいました。次ロットのパーツはすでに発注済みですが、入荷は6月以降になると思われます。ついては明日以降ご注文いただくEZMやそれを含む製品(BINOKIT等)の納品は6月以降になります。お待たせすることになって大変恐縮ですが、どうかご承知おきください。

また円安の影響でパーツの調達コストがかなり上がりそうです。ついてはこれもまた恐縮ですが、6月以降EZMの価格を5~10%値上げします。新価格の確定はパーツ入荷時期の為替レート次第です。

なお、納品は次ロットパーツ入荷後になりますが、5/31までに注文くださった方へは、現状価格で販売いたします。販売店様経由で注文くださった方も同様です。

ご不便をかけますがどうかよろしくお願いします。

BINOKIT on HF2経緯台

先日納品したBINOKITを紹介させていただきます。

お客様のご要望で、ビクセンHF2経緯台に載せました。対物レンズはオプションの9cm3枚玉SDアポ対物レンズユニットです。この対物レンズユニットはコンパクトなので、比較的華奢なHF2経緯台に載せても違和感がありません。BINOKIT本体もコンパクトなので、ビクセン汎用プレートのコの字の中に余裕で収まっています。

HF2経緯台のフォークはオリジナル状態で45度ぐらいの角度になります。それでは転倒の恐れがあるので、写真のような角度で固定できるようHF2経緯台の水平支持軸に追加工がしてあります(割りとよく行う追加工です)。

汎用プレートの深さをいっぱいに伸ばした状態でBINOKITが載せてあります。これにアイピースをつけると、クランプフリーの状態で、天頂姿勢のバランスが取れています。

少しわかりにくいのですが、BINOKITを底から見た写真です。先述の通りBINOKIT本体は余裕で収まっているのですが、接眼部微動ノブが横に張り出しているため、フォークの内側ぎりぎりです。目幅でいうとMAX65mmまでになります。

アリミゾ金具はビノテクノオリジナル製

汎用プレートに取り付けたアリミゾ金具です。BINOKITの場合、「鏡筒バンドに対して鏡筒をずらして前後のバランスを取る」ことが出来ないので、こういう架台に取り付けるときはアリガタ金具とアリミゾ金具を設けて前後バランスが取れるようにします。またアリミゾ金具を汎用プレートからオフセットして取り付けてあるのは、アリミゾ金具のハンドルを操作しやすくするためです。

以前販売していた10cm対物レンズユニット(10cmF7)では、対物レンズが大きく重かったので、HF2経緯台とBINOKITの組み合わせを推奨していなかったのですが、この対物レンズ(9cmF6)に限ってはベストマッチしていると、作ってみて思いました。

目幅が測定できるアプリ

お客様から眼鏡フィッティング用の海外アプリを教えてもらいました。この中の機能で目幅が測れます。アプリの名前はGlassesOnです。少なくともAndroid版があります(iOS版があるかどうかは不明)。

Google Playから上記アプリをダウンロードして起動すると、こんな画面が現れます。

使うのは下半分のPupillary Distanceです。Start PDをタップすると、磁気カード(キャッシュカード等)と明るい照明を準備するようガイダンスが出ます。

続けてSounds good!をタップすると、次のような画面が現れます。

さらにShow me howをタップすると、動画で測定方法の説明があります。その説明によると、磁気カードを額に当てて、スマホのカメラで自撮りします(他人が見たら異様な光景)。磁気カードのサイズは世界共通のようなので、自撮り画像から目幅を比較計測してくれます。

私の場合、57.5mmと出ました。以前メガネを作る時にメガネ屋さんで計測してもらったら58mmだったのでほぼ一致しています(それにしても狭い、、、)。

メガネ屋さんで測定してもらっている方はあえてこのアプリで測る必要はありませんが、分からない方はこのアプリを使うと把握できます。よければお試しください。

GS-200CCビノ完成

まもなく納品する双眼望遠鏡です。数日前に完成しました。オーナー様の了解を得て、こちらで紹介させていただきます。

鏡筒は笠井トレーディングの純カセグレンGS-200CCです。

バックフォーカスを稼ぐため、標準で付属しているフォーカサーは撤去しました。ピント調整はBORGの直進ヘリコイドSです。

計画当初、2インチアイピースが使えないか模索したのですが、バローレンズを使わない限りピントが出ません。ちなみにバローレンズを使う場合、EZMの先端に取り付けるため、合成Fが35~40ぐらいになります。最低倍率が300倍以上となってしまい、現実的ではありません。オーナー様と相談し、苦渋の選択でこのようなアメリカンサイズ専用としました。

架台はケンコー・トキナーAZ-EQ6GT-Jで、いつものように剛性アップ改造を行いました。この改造を行うと、三脚取付部との剛性が上がるだけでなく、不動点が三脚中心の真上に来るのでさらに安定します。

片側には5kgのウェイト2個、もう片方には約5kgのバッテリーが載せてあります。

鏡筒取付部はアリミゾ金具を使いました。これまでは特注で鏡筒バンドを製作していましたが、鏡筒が太くなればなるほどコストが上がるので、今回はこの方式にしました。

右側の目幅調整機構です。高剛性の2列のリニアモーションベアリングに沿って、鏡筒が平行移動します。アリミゾ金具はビノテクノオリジナルです。

左側の鏡筒方向微調整機構です。CRDL-miniの機構を採用しました。この機構で左右の鏡筒平行をしっかり出しておくと、EZMのXYツマミ調整量が最小限に済んで、視野回転が起こりません。

最後にインプレッションです。自宅のベランダで観ました。

まずはパンオプティック24mm(100倍)で火星と木星を。スパイダーが太いので十字の光芒が出ますが、単眼の150倍ぐらいの解像度で模様が見えます。

M37も視野いっぱいに微光星が広がって美しい眺めです。これぐらいの倍率なら、星像は問題なくシャープです。自宅は一応市街地なので肉眼で見える星はせいぜい3等星、10センチ双眼でのベランダ観望で、微光星はここまで見えません。口径の威力です。

オリオンの大星雲も大きな広がりこそ見えませんが、中心部のガスの濃淡は迫力がありました。

デロス10mm(240倍)に交換して木星を再び見ました。この倍率でも木星像は破綻することなく美し い佇まい。特筆すべきは色階調のよさです。明るいオレンジから茶色のような色まで楽しく観察できます。

主鏡の焦点距離が長いので、低倍率広視野の観望は出来ませんが、逆に言うと無理なく高倍率が出せるのがこのビノの特徴と言えます。惑星だけでなく、球状星団や惑星状星雲にも威力を発揮しそうです。

CRDL-mini アルカスイス仕様

ありがたいことに昨年末から立て続けに小型簡易クレードルCRDL-miniのご注文が続いています。

上の写真はドイツからご注文いただいたCRDL-miniです。鏡筒取り付け部分の標準仕様はビクセン規格のアリミゾ金具ですが、今回はアルカスイスのアリミゾ金具が取り付けられた特注仕様です(こういう対応も可能です)。詳しくはお聞きしていませんが、どのような鏡筒を載せるのか興味深いところです。

いずれにしても小型鏡筒で双眼望遠鏡を実現させるなら、CRDL-miniはもっとも安価でお勧めのクレードルです。

謹賀新年

新年あけましておめでとうございます。

今年もみなさんの観望がより楽しくなるような機材を提供していきたいと思います。本年もどうかよろしくお願いします。

新製品「BINOKIT用9cm3枚玉SD対物レンズユニット」

今年7月に販売終了となった10.2cm3枚玉SDアポクロマートに代わるBINOKIT用対物レンズユニットとして、9cm3枚玉SDアポクロマートを販売開始いたします。

口径:90mm
焦点距離:540mm (F6)
レンズ枚数:3枚
FPL53使用
価格:税別 298,000円/2本

※ 円安の影響で10.2cm3枚玉SDアポクロマートより高くなってしまいました。

BINOKIT本体やEZMに合わせて、黒色を基調としたデザインにしました。写真紹介コーナーも併せてご覧ください。

これとBINOKITを組み合わせた税別価格は、

BINOKIT本体(アルミコート仕様) 258,000円
9cm3枚玉SDアポクロマート対物レンズユニット(2本) 298,000円
———————————————————————
合計 556,000円

となります。

見え味は、FPL53使用3枚玉アポの期待通り大変切れ味が良く、星が点像に収束します。コントラストも良く、星の色も楽しめます。10.2cmとの口径差は感じられません。

また写真でお分かりの通り大変コンパクトです。この対物レンズユニットとBINOKITとの組み合わせは、機動性を重視するお客様に特にお勧めです。

9/15「星をもとめて」出店内容

以前このブログに書いたとおり、京都るり渓で行われる星をもとめてにビノテクノは出店します。その内容についてお伝えしておきます。

開店時間は、
9/15(日)12:00-22:00ごろ
の予定です。9/16(月)の出店はありません。

デモで展示するのは、以下の機材の予定です。

また販売もあります。主なアイテムは以下のとおりです。

いずれも特価販売です。価格は当日のお楽しみに。

みなさんのご来店を楽しみにしています。

昨年の出店風景

肉眼では大迫力の星空が、望遠鏡ではそれほどでもなかった件

西表島のレポートでも書きましたが、肉眼で見るとすごい迫力の離島の星空が、なぜか望遠鏡で見ると本州の暗い空での観望とそれほど変わりませんでした。離島から帰ってきて以来、このことがずっと頭に引っかかっていました。

ところが先日の胎内星まつりで、双望会にもよく来てくれていたベテラン観測者Tさんがビノテクノのブースに立ち寄ってくれたので、この疑問をぶつけてみました。するとたちどころに問題点を見つけてくれました。そのときのやりとりはこんな感じでした。

Tさん「何倍ぐらいで観てました?」
私「えっと、23倍ぐらいです」
Tさん「あ~、それはたぶん倍率が高すぎますね」
私「えっ?」(自分の中ではかなり低倍率)
Tさん「望遠鏡の口径は?」
私「102mmです」
Tさん「ということは、瞳径が5mmもないですね」
私「そうなりますね」(瞳径=口径÷倍率=102÷23=4.4mm)
Tさん「本州では5mmぐらいしか開かない瞳径が、離島のような暗い空では7mmまで開きます。そういう極低倍率でみると、本州との差がわかりますよ」

瞳径の問題とは思ってもいませんでした。目からウロコです。たしかに数十年前は、7X50というスペックの双眼鏡をよく見かけました。この場合の瞳径は約7mmです。しかしその後販売される天文用双眼鏡の瞳径5mmぐらいが主流となりました。その理由は「もう空がそんなに暗くないので人間の瞳は7mmも開かないから」でした。しかし今でも離島は7mm開く環境にあるということです。腹に落ちる解説でした。さすがTさんです。

しかし別の問題が見つかりました。瞳径が7mmになるような光学系の実現が意外と難しいです。詳しい計算は省きますが、瞳径7mmとなるアイピースの焦点距離は、瞳径に対物レンズのF値をかけた数値になります。例えば今回私が使った望遠鏡のF値は7だったので、瞳径7mmとなるアイピースの焦点距離は7X7=49mmとなります。2インチの差し込みでこんなアイピースありません。仮にあったとしても、目幅が合わないか、見かけ視野が極端に狭いかです。つまりF7の鏡筒では事実上無理となります。

F6ぐらいの対物レンズと焦点距離40mmぐらいのアイピースでやっと7mmに近い瞳径が得られるので、このあたりの組み合わせが現実解のような気がします。もちろんF5ならさらにアイピースの選択肢が増えますが、今度は逆に、そういうFのアポクロマート鏡筒がなかなかありません。しかし極低倍率で使うならアクロマートもありかもしれません。

来年もどこかの離島に行こうと思っているので、それまでにいろいろ考えるつもりです。

胎内星まつり御礼

予定通り胎内星まつり2024に出店しました。たくさんの方がビノテクノのブースにお立ち寄りいただきました。暑い中本当にありがとうございました。

また、毎年のことながらこれだけのイベントを開いていただいている主催者の方には頭が下がります。あらためて感謝申し上げます。

金曜日午後の風景

当初の予報では曇のち雨でしたが、よい方に裏切られ、昼間はピーカン、夜も多少星が見えました。

ブース裏手に機材を移動させて観望
個人所有の30センチ屈折勇姿

来年も出店したいと考えています。またみなさんにお会いできることを楽しみにしています。