GS-200CCビノ完成

まもなく納品する双眼望遠鏡です。数日前に完成しました。オーナー様の了解を得て、こちらで紹介させていただきます。

鏡筒は笠井トレーディングの純カセグレンGS-200CCです。

バックフォーカスを稼ぐため、標準で付属しているフォーカサーは撤去しました。ピント調整はBORGの直進ヘリコイドSです。

計画当初、2インチアイピースが使えないか模索したのですが、バローレンズを使わない限りピントが出ません。ちなみにバローレンズを使う場合、EZMの先端に取り付けるため、合成Fが35~40ぐらいになります。最低倍率が300倍以上となってしまい、現実的ではありません。オーナー様と相談し、苦渋の選択でこのようなアメリカンサイズ専用としました。

架台はケンコー・トキナーAZ-EQ6GT-Jで、いつものように剛性アップ改造を行いました。この改造を行うと、三脚取付部との剛性が上がるだけでなく、不動点が三脚中心の真上に来るのでさらに安定します。

片側には5kgのウェイト2個、もう片方には約5kgのバッテリーが載せてあります。

鏡筒取付部はアリミゾ金具を使いました。これまでは特注で鏡筒バンドを製作していましたが、鏡筒が太くなればなるほどコストが上がるので、今回はこの方式にしました。

右側の目幅調整機構です。高剛性の2列のリニアモーションベアリングに沿って、鏡筒が平行移動します。アリミゾ金具はビノテクノオリジナルです。

左側の鏡筒方向微調整機構です。CRDL-miniの機構を採用しました。この機構で左右の鏡筒平行をしっかり出しておくと、EZMのXYツマミ調整量が最小限に済んで、視野回転が起こりません。

最後にインプレッションです。自宅のベランダで観ました。

まずはパンオプティック24mm(100倍)で火星と木星を。スパイダーが太いので十字の光芒が出ますが、単眼の150倍ぐらいの解像度で模様が見えます。

M37も視野いっぱいに微光星が広がって美しい眺めです。これぐらいの倍率なら、星像は問題なくシャープです。自宅は一応市街地なので肉眼で見える星はせいぜい3等星、10センチ双眼でのベランダ観望で、微光星はここまで見えません。口径の威力です。

オリオンの大星雲も大きな広がりこそ見えませんが、中心部のガスの濃淡は迫力がありました。

デロス10mm(240倍)に交換して木星を再び見ました。この倍率でも木星像は破綻することなく美し い佇まい。特筆すべきは色階調のよさです。明るいオレンジから茶色のような色まで楽しく観察できます。

主鏡の焦点距離が長いので、低倍率広視野の観望は出来ませんが、逆に言うと無理なく高倍率が出せるのがこのビノの特徴と言えます。惑星だけでなく、球状星団や惑星状星雲にも威力を発揮しそうです。

CRDL-mini アルカスイス仕様

ありがたいことに昨年末から立て続けに小型簡易クレードルCRDL-miniのご注文が続いています。

上の写真はドイツからご注文いただいたCRDL-miniです。鏡筒取り付け部分の標準仕様はビクセン規格のアリミゾ金具ですが、今回はアルカスイスのアリミゾ金具が取り付けられた特注仕様です(こういう対応も可能です)。詳しくはお聞きしていませんが、どのような鏡筒を載せるのか興味深いところです。

いずれにしても小型鏡筒で双眼望遠鏡を実現させるなら、CRDL-miniはもっとも安価でお勧めのクレードルです。

謹賀新年

新年あけましておめでとうございます。

今年もみなさんの観望がより楽しくなるような機材を提供していきたいと思います。本年もどうかよろしくお願いします。

新製品「BINOKIT用9cm3枚玉SD対物レンズユニット」

今年7月に販売終了となった10.2cm3枚玉SDアポクロマートに代わるBINOKIT用対物レンズユニットとして、9cm3枚玉SDアポクロマートを販売開始いたします。

口径:90mm
焦点距離:540mm (F6)
レンズ枚数:3枚
FPL53使用
価格:税別 298,000円/2本

※ 円安の影響で10.2cm3枚玉SDアポクロマートより高くなってしまいました。

BINOKIT本体やEZMに合わせて、黒色を基調としたデザインにしました。写真紹介コーナーも併せてご覧ください。

これとBINOKITを組み合わせた税別価格は、

BINOKIT本体(アルミコート仕様) 258,000円
9cm3枚玉SDアポクロマート対物レンズユニット(2本) 298,000円
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合計 556,000円

となります。

見え味は、FPL53使用3枚玉アポの期待通り大変切れ味が良く、星が点像に収束します。コントラストも良く、星の色も楽しめます。10.2cmとの口径差は感じられません。

また写真でお分かりの通り大変コンパクトです。この対物レンズユニットとBINOKITとの組み合わせは、機動性を重視するお客様に特にお勧めです。

9/15「星をもとめて」出店内容

以前このブログに書いたとおり、京都るり渓で行われる星をもとめてにビノテクノは出店します。その内容についてお伝えしておきます。

開店時間は、
9/15(日)12:00-22:00ごろ
の予定です。9/16(月)の出店はありません。

デモで展示するのは、以下の機材の予定です。

また販売もあります。主なアイテムは以下のとおりです。

いずれも特価販売です。価格は当日のお楽しみに。

みなさんのご来店を楽しみにしています。

昨年の出店風景

肉眼では大迫力の星空が、望遠鏡ではそれほどでもなかった件

西表島のレポートでも書きましたが、肉眼で見るとすごい迫力の離島の星空が、なぜか望遠鏡で見ると本州の暗い空での観望とそれほど変わりませんでした。離島から帰ってきて以来、このことがずっと頭に引っかかっていました。

ところが先日の胎内星まつりで、双望会にもよく来てくれていたベテラン観測者Tさんがビノテクノのブースに立ち寄ってくれたので、この疑問をぶつけてみました。するとたちどころに問題点を見つけてくれました。そのときのやりとりはこんな感じでした。

Tさん「何倍ぐらいで観てました?」
私「えっと、23倍ぐらいです」
Tさん「あ~、それはたぶん倍率が高すぎますね」
私「えっ?」(自分の中ではかなり低倍率)
Tさん「望遠鏡の口径は?」
私「102mmです」
Tさん「ということは、瞳径が5mmもないですね」
私「そうなりますね」(瞳径=口径÷倍率=102÷23=4.4mm)
Tさん「本州では5mmぐらいしか開かない瞳径が、離島のような暗い空では7mmまで開きます。そういう極低倍率でみると、本州との差がわかりますよ」

瞳径の問題とは思ってもいませんでした。目からウロコです。たしかに数十年前は、7X50というスペックの双眼鏡をよく見かけました。この場合の瞳径は約7mmです。しかしその後販売される天文用双眼鏡の瞳径5mmぐらいが主流となりました。その理由は「もう空がそんなに暗くないので人間の瞳は7mmも開かないから」でした。しかし今でも離島は7mm開く環境にあるということです。腹に落ちる解説でした。さすがTさんです。

しかし別の問題が見つかりました。瞳径が7mmになるような光学系の実現が意外と難しいです。詳しい計算は省きますが、瞳径7mmとなるアイピースの焦点距離は、瞳径に対物レンズのF値をかけた数値になります。例えば今回私が使った望遠鏡のF値は7だったので、瞳径7mmとなるアイピースの焦点距離は7X7=49mmとなります。2インチの差し込みでこんなアイピースありません。仮にあったとしても、目幅が合わないか、見かけ視野が極端に狭いかです。つまりF7の鏡筒では事実上無理となります。

F6ぐらいの対物レンズと焦点距離40mmぐらいのアイピースでやっと7mmに近い瞳径が得られるので、このあたりの組み合わせが現実解のような気がします。もちろんF5ならさらにアイピースの選択肢が増えますが、今度は逆に、そういうFのアポクロマート鏡筒がなかなかありません。しかし極低倍率で使うならアクロマートもありかもしれません。

来年もどこかの離島に行こうと思っているので、それまでにいろいろ考えるつもりです。

胎内星まつり御礼

予定通り胎内星まつり2024に出店しました。たくさんの方がビノテクノのブースにお立ち寄りいただきました。暑い中本当にありがとうございました。

また、毎年のことながらこれだけのイベントを開いていただいている主催者の方には頭が下がります。あらためて感謝申し上げます。

金曜日午後の風景

当初の予報では曇のち雨でしたが、よい方に裏切られ、昼間はピーカン、夜も多少星が見えました。

ブース裏手に機材を移動させて観望
個人所有の30センチ屈折勇姿

来年も出店したいと考えています。またみなさんにお会いできることを楽しみにしています。

StellaBino-50インプレッション

少し前に発売された笠井トレーディング天体観測専用双眼望遠鏡「StellaBino-50」のインプレッションです。

StellaBino-50(アイピースはPF-25mm)

StellaBino-50は今までありそうでなかった手持ち双眼鏡(以下、双眼鏡)です。通常の双眼鏡は像を正立させるため、対物レンズとアイピースの間に、ポロプリズムやダハプリズムといったプリズムが入ります。しかしこの双眼鏡にはそれがありません。像は倒立のままです。プリズムによる像の劣化がない、極めてシンプルな光学系です。また口径50mmはこの光学系の限界サイズです。これ以上になると目幅が合いません。

ちなみにあえて昼間の景色を見ると、倒立像であると同時に、遠近が逆転して見えます。とても長い時間見る気にはなりません。やはりこれは天体専用です。

外観の印象は「写真で見るより細長く」、持った感じの印象は「やや華奢」です。通常のプリズムが使われている双眼鏡は概ねずんぐりむっくりしているのに比べて筐体が細長いので、他の荷物と混載してラフに扱うと、連結部に無理がかかりそうです。

アイピース(アメリカンサイズ限定)を変えることで倍率を変えることができますが、実用的には8倍以上となります。手持ち双眼鏡としてはやや高めの倍率です。

高めの倍率の双眼鏡を使う場合、双眼鏡を持ってアイピースの縁を目に押し付け、自分の頭を利用してホールドすると見やすいです。そのため、ラバーカップのあるアイピースがおすすめです。当初ラバーカップのない手持ちのアイピースで観望しようとしましたが、目に押し付けるワザが使えないので、PF-25mmを後追いで入手しました。

ピント調整は左右独立の回転ヘリコイドです(直進ヘリコイドではありません)。このため、ラバーカップを目の周りに押し付けすぎるとヘリコイドの操作がしづらくなります。かといって押し付けるのを止めると双眼鏡が安定しません。ピントの追い込みは正直難しいです。どうしても追い込みたい場合は、別途三脚取付アダプターを購入する方法があります。もっとも、この双眼鏡のピントはそれほどシビアではないので、あまり神経質にピントを合わせる必要はありません。

実際に星を見た印象は「さすが50mm」でした。天の川あたりに向けると、微光星の数で口径の威力が分かります。口径40mm未満の双眼鏡とは一味違います。ただし倒立像なので、見る方向の調整はすべて逆になります。「もうちょっと右が見たい」と思ったら双眼鏡を左に振らなければなりません。この操作は慣れが必要です。正立像の双眼鏡とこの双眼鏡をチャンポンで使うと頭が混乱しそうです(笑)。

メインの機材にはなりませんが、ちょっとした観望用にこういう双眼鏡があると、星見が一層楽しくなりそうです。

「立秋」、私なりの解釈

一昨日8/7は立秋でした。

ご存知の通り立秋は二十四節気のひとつです。二十四節気はもともと中国の華北地方(黄河流域)で発明された暦の一種らしいので、微妙に日本の季節と合わないところがあります。

それにしても、秋の気配のかけらもない、この一番暑い時期に立秋と言われて、以前はピンと来ませんでした。でもあるときからこう思うようになりました(ひょっとしたら何かで読んだのかもしれません)。

立秋は「夏(=前の季節)のピーク」を表すという考え方です。立秋を境にして夏が緩んでくるイメージです。

2月上旬の立春も同様です。「一番寒い時期に春と言われましても」と以前は思いましたが、これも冬のピークと思えば腹落ちします。

では5月上旬の立夏や、11月上旬の立冬はどう考えればよいのか。上記の考えに照らせば、それぞれ春のピーク、秋のピークという意味になります。

春のピークとか秋のピークとか言われても、これまたすぐにピンときませんが、春や秋の特徴を「寒暖差の大きい季節」と考えれば説明がつきます。実際立夏や立秋を境にして寒暖差が小さくなっていきます。

例えば立夏を過ぎると、最高気温も緩やかに上昇していきますが、最低気温がそれ以上のスピードで上昇していって寒暖差が小さくなっていきます。

立冬も同様に、これを過ぎると最低気温が緩やかに下降していきますが、最高気温がそれ以上のスピードで下降していって寒暖差が小さくなっていきます。

二十四節気は毎月2回ずつ変わりますが、数年前からこれを意識することで、季節の移ろいに敏感になりました。こんなことに興味を抱くようになったのは歳のせいかもしれません(笑)

9/15 星をもとめて出店します

京都るり渓で行われるをもとめてに、ビノテクノは今年も出店します。

開店時間は、
9/15(日)12:00-22:00ごろ
の予定です。9/16(月)の出店はありません。

デモで展示する機材や特価販売するアイテムは、また日が近づいたら案内させていただきます。

昨年の出店風景