少し前に笠井トレーディングから発売されたJscope-80Sです。ビノの素材検討用というより、HPの紹介文に惹かれて1本購入しました。笠井氏がかつて惚れ込んだ、国内メーカー製のアクロマート対物レンズを使った鏡筒です。
この鏡筒、バックフォーカスがそれほどなく、弊社製EZMのオリジナル状態では残念ながらピントが出ません。この時点で、ビノ素材としては対象外になります。
ちなみに光路長の短い弊社製正立デバイスEZPを使えばビノにできますが、アクロマートレンズと、プリズムを使ったEZPの組み合わせは、色収差が増大する可能性があるのでお勧めできません。
そういうわけでミラーを使った天頂デバイスで観望したいので、光路長を短くするためにアメリカンサイズ専用のスリーブに交換した仕様のEZM(非売品)を取り付けて観望してみました。
まずは月です。満月に近い月齢でしたが、34倍(16mmアイピース)で見ると、欠け際のカリカリ感がいいです。海の階調も悪くありません。ただしや月の輪郭にはそれなりの色が付きます。
この倍率のままプレアデスにも望遠鏡を向けてみました。この程度の倍率ならこの鏡筒は、アポクロマートかと思えるほど小気味の良い点像を見せてくれます。プレアデスはこの望遠鏡にもっとも適した対象と言えます。
さらにM42に向けると、同じように小さい星像のトラペジウムが楽しめます。
満月期の市街地での観望なので、ごく明るい対象しか見えませんが、月のない暗い空なら、少なくとも散開星団が楽しそうです。
最後に木星を109倍(5mmアイピース)で見てみました。この倍率でもガリレオ衛星は点像を保っています。惜しむらくはシーイングがひどく、木星本体の模様を楽しむことができませんでした。それでも煮立った鍋の底を見る想いで凝視すると、淡いピンクと濃いピンクの濃淡がちらちら垣間見えます。少なくともこの対物レンズの階調表現は期待できそうです。
今どきの廉価版8センチアクロマート鏡筒に比べると高めの価格ですが、期待通り、廉価版とは一線を画した性能が期待できる鏡筒です。近いうちに暗い空であらためて見てみたいです。