肉眼では大迫力の星空が、望遠鏡ではそれほどでもなかった件

西表島のレポートでも書きましたが、肉眼で見るとすごい迫力の離島の星空が、なぜか望遠鏡で見ると本州の暗い空での観望とそれほど変わりませんでした。離島から帰ってきて以来、このことがずっと頭に引っかかっていました。

ところが先日の胎内星まつりで、双望会にもよく来てくれていたベテラン観測者Tさんがビノテクノのブースに立ち寄ってくれたので、この疑問をぶつけてみました。するとたちどころに問題点を見つけてくれました。そのときのやりとりはこんな感じでした。

Tさん「何倍ぐらいで観てました?」
私「えっと、23倍ぐらいです」
Tさん「あ~、それはたぶん倍率が高すぎますね」
私「えっ?」(自分の中ではかなり低倍率)
Tさん「望遠鏡の口径は?」
私「102mmです」
Tさん「ということは、瞳径が5mmもないですね」
私「そうなりますね」(瞳径=口径÷倍率=102÷23=4.4mm)
Tさん「本州では5mmぐらいしか開かない瞳径が、離島のような暗い空では7mmまで開きます。そういう極低倍率でみると、本州との差がわかりますよ」

瞳径の問題とは思ってもいませんでした。目からウロコです。たしかに数十年前は、7X50というスペックの双眼鏡をよく見かけました。この場合の瞳径は約7mmです。しかしその後販売される天文用双眼鏡の瞳径5mmぐらいが主流となりました。その理由は「もう空がそんなに暗くないので人間の瞳は7mmも開かないから」でした。しかし今でも離島は7mm開く環境にあるということです。腹に落ちる解説でした。さすがTさんです。

しかし別の問題が見つかりました。瞳径が7mmになるような光学系の実現が意外と難しいです。詳しい計算は省きますが、瞳径7mmとなるアイピースの焦点距離は、瞳径に対物レンズのF値をかけた数値になります。例えば今回私が使った望遠鏡のF値は7だったので、瞳径7mmとなるアイピースの焦点距離は7X7=49mmとなります。2インチの差し込みでこんなアイピースありません。仮にあったとしても、目幅が合わないか、見かけ視野が極端に狭いかです。つまりF7の鏡筒では事実上無理となります。

F6ぐらいの対物レンズと焦点距離40mmぐらいのアイピースでやっと7mmに近い瞳径が得られるので、このあたりの組み合わせが現実解のような気がします。もちろんF5ならさらにアイピースの選択肢が増えますが、今度は逆に、そういうFのアポクロマート鏡筒がなかなかありません。しかし極低倍率で使うならアクロマートもありかもしれません。

来年もどこかの離島に行こうと思っているので、それまでにいろいろ考えるつもりです。