プレートソルビング自動導入観望

遅ればせながらプレートソルビング自動導入観望を始めました。

ご存じの方も多いと思いますが、プレートソルビングとはCMOSカメラに写った星空から星の座標(赤経赤緯)を解析する技術です。この技術が商品に実装され始めたころはもっぱら写真撮影用の技術として紹介されていました。

「これって観望用にも使えないの?」と思っていたら、協栄産業さんのHPでその使い方がすでに紹介されていることに最近気づきました。完全に出遅れてます(笑)

ハイランダープロミナーとAM3でプレートソルビング自動導入観望を楽しもう!
AM3、AM5赤道儀の経緯台モードで天体観望を楽しもう

ご覧の通り経緯台モードでもできるとあって、さっそく機材を入手しました。買い揃えたのは、
ZWO AM5架台
ZWO ASIAIR mini
ZWO TC40カーボン三脚
ZWO AM5・新型ハーフピラーPE200
です。

それなりの金額になりましたが、こういう技術は実際に使ってみないとお客様に勧めることもできません。

AM3架台ではなくAM5架台(以下、AM5)にしたのは、10センチ双眼望遠鏡を載せたかったからです。ハーフピラーは当初ノースマウントCT-30用のハーフピーラを使おうとしましたが、なぜか取り付け座面あたりがぐらぐらしたので、純正のハーフピラーにしました。こちらにしたらぐらぐらは無くなりました。

この純正ハーフピーラを使う場合、三脚もZWO純正のTC40になりますが、これについては少し不満があります。脚がそれほど伸びないので接地半径が小さく、10キロ以上ある双眼望遠鏡を片持ちで載せると転倒の恐れがあります。そのためAM5にウェイトシャフトを取り付けてウェイトを使うことにしました。もう一段伸びたなら転倒リスクは無くなると思われるので惜しいです。ちなみにウェイトシャフトはCT-30用が流用できました。

AM5自体の剛性はケンコー・トキナーAZ-EQ6GTに劣りますが、この軽さは魅力です。持ち運びは断然AM5が楽です。

AM5に10センチ双眼望遠鏡を載せるとこんな感じになります。

バランスウェイトは外してあります

下の写真は双眼望遠鏡を外した状態です。右側の箱がASIAIR miniです。本格的な写真を撮る場合はASIAIR Plus-32GとかASIAIR Plus-256Gが必要ですが、観望だけならASIAIR miniで十分です。

電源はAM5から供給(逆でも可)

ちなみにこの架台に望遠鏡を載せるときは、アリミゾ金具に描かれた絵のとおりの向きにしなければなりません。対物レンズが逆向きになるように載せると正常に動作しません。そのためBINOKITのアリガタ金具の取り付けをいつもと逆にしました。

ガイドスコープは産業用CCTVレンズ(100mmF3.5)と、以前から所有しているZWO非冷却カメラASI462MCの組み合わせです。Askar製やZWO製のガイドスコープを使うという選択肢もありますが、こちらの方がコンパクトで安価(14,000円程度)でした。像質は劣るかもしれませんがプレートソルビングに支障がなければ大丈夫です(後述しますが実際問題はありませんでした)。

ガイドスコープ

このガイドスコープと双眼望遠鏡本体の光軸を合わせるため、SLIK 微動雲台SMH-250を使いました。この微調整機能は必須です。使ってみて分かったのですが、プレートソルビングを使った自動導入は、目標の天体を、惚れ惚れするぐらい完璧に「ガイドスコープ視野」のど真ん中に持ってきます。したがって目標天体が望遠鏡本体の視野ど真ん中に来るかどうかはこの微調整次第です。

ちなみにSLIK 微動雲台SMH-250をファインダーアリミゾ金具に取り付けるため、底面に特注サブプレートを介してMORE BLUE ビクセン規格ファインダー台座 FG304を取り付けました。

これらの機材を実際に使う場合、スマホにASIAIRのアプリを入れる必要があります。これはGoogle Playから無料でダウンロードできます。ZWOのアプリは他にも電視観望でASI STUDIOを使ったことがありますが、どちらのアプリも直感的に分かりやすいです。きっと優秀な技術者がアプリを作っているに違いありません。

それと買う前は基本的なことが分かってなかったのですが、プレートソルビングを行うのはAM5ではなくASIAIR miniの方です。ASIAIR miniはCMOSカメラの画像を取り込み、プレートソルビングで画像の赤経赤緯を解析し、目標天体までの赤経/赤緯軸修正量を架台に指示します。

ということはASIAIR miniがあれば、AM5でなくてもこの機能は使えるわけで、実際アプリの起動画面の架台選択肢に他社製架台の名前がずらりと出てきます。ただし問題は接続ケーブルで、AM5用のケーブルは使えません。例えばSky Watcher製架台に接続するには、ASIAIR mini側がUSB-A、架台側がRJ45モジュラージャックのケーブルが必要です(販売店に問い合わせるとたぶん見つかると思います)。

さて本題に戻ります。実際に使ってみました。笑いが止まらないぐらいど真ん中に導入できます。これまでも自動導入架台というのはありましたが、当たらずとも遠からずといった感じの微妙なずれ方をすることがよくありました。しかしプレートソルビングではそういうことはありません。視野がずれていたら自己修正するので必ずど真ん中に来ます。期待以上の性能です。

下の画像2つは、天体を導入したときのスクリーンショットです。使用場所は桑名市内の自宅ベランダです。肉眼では2等星ぐらいしか見えませんが、CMOSカメラはプレートソルビングを行うのに十分な星の数を映しています。

M27導入時のアプリ画面
M13導入時のアプリ画面(操作パネルオフ状態)

最後に、使ってみて分かったことを挙げておきます。

アプリ起動時、メインスコープとガイドスコープの焦点距離を入力する必要があります。先述のガイドスコープはここではメインスコープになります。ややこしいかもしれませんが、ガイドスコープの焦点距離をメインスコープ欄に入力します。

また上記焦点距離はできるだけ正しい値を入れなければなりません。いい加減な数値をいれるとプレートソルビングでエラーが発生します。余談ですが上記システムでプレートソルビングをしたところ、メインスコープの焦点距離が入力値の100mmから95mmに自動修正されました。購入した産業用レンズの本当の焦点距離は95mmかもしれません。

それからAM5を赤道儀モードから経緯台モードに変更する場合、左右の「高度固定ネジ」(どのネジかは取扱説明書参照)を必ず締め直さなければなりません。これを忘れると、望遠鏡のポジション次第でバランスが崩れて高度が急に変わり、最悪望遠鏡の落下事故につながります。

またAM5は、望遠鏡を真北水平に向けた状態で電源をいれると、その後の動作で対物レンズが下に向いたり、天頂を超えてのけぞるようなポジションを取ったりすることがありません。

というわけで、やっと究極の自動導入架台に出会えました。このシステムならお客様にも安心して勧めることができそうです。