『趣味』について思うこと

「趣味とは?」と問われればいろいろな定義がありますが、私が聞いた中でもっとも納得したのが、経済的合理性のない行為という定義です。つまりコスパ(コストパフォーマンス)とは無縁の世界です。

「そんなもの買うならこっちの方がいいのに」「自分で作るより買った方が安いよ」、、、すべて要らぬおせっかいです。ご本人はこっちがいいんです。自分で作りたいんです。それが楽しいんです。そう、楽しいかどうかが重要な尺度です。

また、趣味は深くなればなるほど、その方向性もどんどん細分化していきます。しかしその最先端にいる人たちの多くは、別の方向にいる人たちと仲良くやってます。それは、そもそも方向性に正解も不正解もないことをよく理解されているからです。また、そこにたどり着くまでにどれだけの努力が必要だったかを想像することができ、お互いをリスペクトしているからです。

私自身は起業してしまったので、望遠鏡については『趣味』と言えなくなってしまいましたが、約20年スターパーティーの主催をさせていただいたおかげで、趣味というものを深く理解することができました。この理解をこれからは製品に反映していきたいと考えています。

中倍率も面白い双眼望遠鏡

特に星雲星団の観望がお好きな方には、50~80倍の中倍率をお勧めします。

この倍率で二重星団やM42を見ると視野からはみ出してしまいますが、別の見方をすれば、はみ出してしまうほど大きい星雲星団はそれほど多くありません。たとえば110番まであるメシエ天体のうち9割以上が視直径30分(=0.5度)以下です。10分未満も多いです。NGC天体も同様です。

これだけ小さい天体を見るのに、実視野は2度も要りません。1度ぐらいあれば十分です。さらに言うなら、広い見かけ視野+高倍率が見やすいです。例えば、どちらも実視野は1度ですが、見かけ視野50度で倍率50倍より、見かけ視野80度で倍率80倍の方がより詳細な観察ができます。

視直径の小さい星雲星団は、倍率を上げることで表情ががらりと変わります。低倍率ではただの小さい星の集まりに見えた地味な散開星団が、中倍率では星の配列がはっきりわかり、微光星もいっぱいあったりして、まったく違う印象になります。同じにように見えていた星雲星団が、実はそれぞれ個性のあることに気づきます。

低倍率でしか見たことのない天体は、あらためて中倍率でご覧になることをお勧めします。特に双眼望遠鏡では両目が使えるので、さらに認識力がアップします。同じ倍率でも単眼と双眼では別世界です。