双眼望遠鏡の案件ではありませんが、ビクセンFL-102S鏡筒の接眼部換装の依頼があったので紹介させていただきます。
ご存じの方も多いと思いますが、FL-102Sの対物レンズはF9と長いこともあって、切れ味は抜群、製造中止となった今でも眼視ファンには根強い人気があります。ところがこの優秀な対物レンズに不釣り合いなぐらいオリジナルの接眼部がしょぼく、実にもったいない仕様の鏡筒となっています。
今回のご依頼は、この接眼部をバーダー製ダイヤモンドスチールトラック接眼部(屈折用)BDS-RTに換装するという内容でした。簡単に言えば、これを取り付けるためのアダプターリングを製作したのですが、問題はその取り付け方法です。

今どきの接眼部の取り付け方法は、鏡筒チューブ末端に施されたネジによるものがほとんどですが、この鏡筒は3方向からのネジ止めです。この方式、加工コストは低いのですが、接眼部を鏡筒チューブに密着させるのが難しいです。
よくよく調べてみると、オリジナルの接眼部固定に使われているのは通常のメートルねじではなく、いわゆるタッピングビス(先端が細く、根元が太いネジ)で、しかも、おそらくわざとだと思いますが、鏡筒チューブの穴位置と接眼部側のメネジの位置が、0.5mmほどずらしてあります。このズレを利用して接眼部を密着させているようです。
しかし新規で製作するアダプターリングではタッピングビスを使わず、M4サイズのボルトを使うことにしました。ただし普通にボルトを締め上げると、平面であるボルトの座面と、円筒面である鏡筒チューブが密着せず、鏡筒チューブが変形してしまいます。このため、当たり面を円筒面に仕上げた小さいアルミパーツを特注で3個用意し、鏡筒チューブとボルトの間にはさみました。これによって、接眼部を密着させた状態でしっかり締め上げることができました。

下の写真は換装後の全体写真です。Mrak-X赤道儀に載ったFL-102S鏡筒が実に凛々しく見えます。

このようなご依頼も対応しますので、気軽にご相談ください。