少し前に発売された笠井トレーディング天体観測専用双眼望遠鏡「StellaBino-50」のインプレッションです。
StellaBino-50は今までありそうでなかった手持ち双眼鏡(以下、双眼鏡)です。通常の双眼鏡は像を正立させるため、対物レンズとアイピースの間に、ポロプリズムやダハプリズムといったプリズムが入ります。しかしこの双眼鏡にはそれがありません。像は倒立のままです。プリズムによる像の劣化がない、極めてシンプルな光学系です。また口径50mmはこの光学系の限界サイズです。これ以上になると目幅が合いません。
ちなみにあえて昼間の景色を見ると、倒立像であると同時に、遠近が逆転して見えます。とても長い時間見る気にはなりません。やはりこれは天体専用です。
外観の印象は「写真で見るより細長く」、持った感じの印象は「やや華奢」です。通常のプリズムが使われている双眼鏡は概ねずんぐりむっくりしているのに比べて筐体が細長いので、他の荷物と混載してラフに扱うと、連結部に無理がかかりそうです。
アイピース(アメリカンサイズ限定)を変えることで倍率を変えることができますが、実用的には8倍以上となります。手持ち双眼鏡としてはやや高めの倍率です。
高めの倍率の双眼鏡を使う場合、双眼鏡を持ってアイピースの縁を目に押し付け、自分の頭を利用してホールドすると見やすいです。そのため、ラバーカップのあるアイピースがおすすめです。当初ラバーカップのない手持ちのアイピースで観望しようとしましたが、目に押し付けるワザが使えないので、PF-25mmを後追いで入手しました。
ピント調整は左右独立の回転ヘリコイドです(直進ヘリコイドではありません)。このため、ラバーカップを目の周りに押し付けすぎるとヘリコイドの操作がしづらくなります。かといって押し付けるのを止めると双眼鏡が安定しません。ピントの追い込みは正直難しいです。どうしても追い込みたい場合は、別途三脚取付アダプターを購入する方法があります。もっとも、この双眼鏡のピントはそれほどシビアではないので、あまり神経質にピントを合わせる必要はありません。
実際に星を見た印象は「さすが50mm」でした。天の川あたりに向けると、微光星の数で口径の威力が分かります。口径40mm未満の双眼鏡とは一味違います。ただし倒立像なので、見る方向の調整はすべて逆になります。「もうちょっと右が見たい」と思ったら双眼鏡を左に振らなければなりません。この操作は慣れが必要です。正立像の双眼鏡とこの双眼鏡をチャンポンで使うと頭が混乱しそうです(笑)。
メインの機材にはなりませんが、ちょっとした観望用にこういう双眼鏡があると、星見が一層楽しくなりそうです。