BORG60EDビノ(特注品)

対物レンズはすでに生産終了品となっていますが、BORG60ED鏡筒を使った双眼望遠鏡(特注品)です。

対物レンズ、鏡筒、正立ミラー(メガネのマツモト製)、アルカスイス規格のアリガタレール&アリミゾ金具はオーナー様からのご支給です。これにクレードル、持ち手、ファインダ台座、ビクセン規格のアリガタ金具を追加しました。

写真では少し分かりにくいのですが、アルカスイス規格のアリガタレールとビクセン規格のアリガタ金具は直交していて、以前このブログで紹介したパーフェクトバランスの構造にしてあります。このおかげでどの高度ポジションでもフリーストップでピタリと止まります。アルカスイス規格のアリガタレールはパン棒も代用しています。

コストダウンのため目幅調整機構は簡略化してあります。上の写真の向かって右側の鏡筒下のつまみネジを緩めると、2つの鏡筒を連結しているバーに沿って右側の鏡筒を動かすことが出来ます。いつも製作している目幅調整機構に比べると操作が不便で、しかもつまみネジを緩めている間は左右の光軸が一致しないのですが、このビノは基本的にオーナー様専用とのことなので、この構造を採用させてもらいました。下の図は鏡筒を保持しているブロックと連結しているバーのみをピックアップした図(3D CADからキャプチャした画像)です。

実はオーナー様は、今回支給していただいた部品を使って、以前双眼望遠鏡を自作されました。それが下の写真です。

市販のBORG専用鏡筒バンドとアルカスイス規格の金具をうまく組み合わせて形にされたのですが、持ち運ぶたびに鏡筒の平行が狂う不具合が多発するため、今回弊社にご依頼がありました。調べてみると、BORG専用鏡筒バンドとその下に取り付けたアルカスイス規格のアリガタ金具が正しく直角に固定できない、一旦固定できてもすぐにずれることがわかりました。これらは単眼ならまったく問題ないのですが、2本の鏡筒を平行に並べようとすると、致命的な問題です。そこで今回このBORG専用鏡筒バンドは使わず、先述のブロック構造で平行直角を確保しました。またオーナー様は鏡筒平行の調整途中で正立ミラーのミラー調整ネジも触ってしまったとのことだったので、レーザービームを使った弊社のコリメーターで再調整も行いました(思ったほど狂っていませんでした)。

完成後まずは昼間の景色で出来栄えを確認したところ、正立ミラーのXY調整を行わない状態でほぼ左右の視野が一致していました。これなら大丈夫です。

さらに昨晩弊社ベランダから夜空を観望してみました。22ミリのアイピース(16倍)でオリオン座の三ツ星が楽勝に収まる視野は爽快でした。手持ち双眼鏡より高く、10センチ双眼望遠鏡より低い倍率の楽しさを発見した気分です。

今回製作したビノの重量はアイピースを除いて3.3kg。きっと稼働率の高い機材になると思います。